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女神と俺

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馬車に乗って40分。神殿に着いた。
大理石でできた床と美しい女神の彫刻がそびえ立つ広間に着く。ステンドグラスが光をうけてキラキラと輝く。光に照らされた大きな女神像はとても神々しい。
「大っきい女神像だな…。」
「あはは。これは5メートルあるんだよ。」
「すごっ!」
自然と祈りを捧げたい気持ちになってくる。

「お父様とお母様はここでお別れだ。いい子にしてるんだよ。」
「え!?なんで?」
「まあ。この子は本当に私の話を聞いていないのね。洗礼は本人たちだけで行うのよ。お母様たちは別のお部屋で説明を受けて待ってますからね。」
「そっかー。分かった!」
「お友達が作れるかもしれないぞ。リラックスして過ごせばいいから。」
「うん!分かった!また後でー。」

広間には20人くらいの子供がいた。
「これみんな貴族の子供なんだよな。」
どの子も緊張しているのか硬くなっている。
どの子に話しかけようか。
「こんにちは!俺、侯爵家長男アースって言います。」
俺はとりあえず近くにいた男の子に話しかける。
男の子は少し驚いたようにこちらを見た。
「こんにちは。」

振り向いた男の子はとても美しい子だった。サラサラとした金髪に水色の瞳。よく見ると左右で目の色が違う。左目は少し緑がかっていた。オッドアイってやつだ。初めて見たが、その美しさに感動する。しかし、笑わない。感情が乏しい。話しかけちゃダメなタイプに声をかけてしまっただろうか。でも声をかけてしまった以上は、今日はこの子と仲良くなりたい。

「緊張するよね。俺神殿なんて来たの初めて。」
「僕は2回目。」
「そうなんだー!前はどうして来たの?」
「父上と母上に連れられて。」
「そっかー!」
会話が続かない。緊張して上手く続かないのか、それとも単に話しかけられたくなかったのか。
「でも洗礼って何するんだろう…。」
「女神様に祈りを捧げた後、大神官様のもとへ行って洗練名をもらうんだ。その時に子供を産めるかどうかも教えられる。その後は参加者でパーティーがある。」
「へぇー!物知りだね!パーティーなんてワクワクしちゃう!」
「僕はちっとも楽しみじゃない…。」
「じゃあ俺と一緒にパーティー抜け出して遊ぼうよ!神殿なんてなかなか来れないし探検したい!」
男の子は目を輝かせる。
「探検…!いいな…。楽しそう。」
おっ!食いついた!
「じゃあ一緒に遊ぼう!」
「うん。」

「皆様、お集まりください。儀式を開始いたします。
名前を呼ばれた方は女神様の前にお座りになって祈りを捧げてください。」
子供達が中央に集まる。
「では最初にソレイル・サンライズ様。」
先ほど喋っていた男の子が女神の前へと出る。

「ソレイル・サンライズ…?」
聞いたことがある。どこでだ?お母様のお話?いや、違う。これはもっと遠くの記憶…。前世の記憶だ。


妹はよくリビングでゲームをしていた。そして、俺もまたリビングで読書をしたり漫画を読んだりしていた。

妹がきゃーっと叫ぶので何事かとテレビに目を向ける。
「どうした?」
「ずっとやりたかったゲームがいよいよ始まるの!今登場したソレイル様がかっこ良すぎて…。」
「なんのゲーム?」
「『君とユニバース』っていう乙女ゲームだよ!略して『君ユニ』!
魔法が使える世界で主人公は魔法が使える特待生としてこのギャラクシー学園に入るの!」
「ネーミングセンス終わってんな。」
「ちょっと!バカにしないで!ストーリーがすっごくいいんだって。」
「ふーん。」
それからちょくちょく隣で遊ぶ妹のゲームを眺めることがあった。
だから大まかなストーリーは知っているし、所要なメンバーの名前くらいは知っている。細かいところまでは知らないが。


「この世界って『君とユニバース』の世界だったのか…。ていうことは俺って…攻略対象じゃん!!」
思わず大きな声をあげてしまう。周りの子達がこちらを一斉に向く。近くにいた神官様がゴホンッと咳払いをした。ごめんなさい。

ひとまず自分のことについて思い出そう。
俺はアース・フレイム。攻略対象5である。茶色の髪に緑の目。
………以上!
…アース・フレイムは人気のないキャラクターだったのだ。だから妹も攻略してなかったし、よく知らないのだ。
どうせならもっと人気メンバーが良かったな。いや、でも曲がりなりにも攻略対象者だ。将来イケメン間違いなしだし、いい役職に就くに違いない!
俺は運がいい。未来が俺のことを待っているではないか!
ふふふと薄ら笑いを浮かべていると名前を呼ばれた。

女神像と前に立つ。膝をついて祈りを捧げる。よくわからないので前世のイメージで手を組んで頭を下げる。ちゃんと前の子の様子みておくんだった。1分くらい祈った後、大神官様の元へ行く。

「お願い致します。」
大神官様に一礼する。
大神官様の前には何も書かれていない本があった。
「アース・フレイム。今日から貴方を神の御子として認めます。更なる発展と幸福のために神の御加護を授けましょう。」
大神官様がそうおっしゃると、本がぼうっ光った。そして金色に輝く文字が浮かんだ。
「…なんと。珍しい…。
貴方さまの洗練名はルナでございます。
そして貴方は……
御子が産めます。」

ザワッと周りがどよめいたのが分かった。俺は驚きで声もだせなかった。
俺が子供を産める…?
「御子が生まれるのは女神に選ばれた方のみ。これは素晴らしいことでございます。神のご加護が在らんことを。」

俺はしばらく放心状態で動けずにいた。

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