王子様から逃げられない!

白兪

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王妃の日記

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《1日目》

目が覚めると、知らない場所にいた。
皆が私のことを「リーシャ」と呼ぶ。
何が何だかわからない。私は「藤浪ミチ子」なのに。
皆、アメリカ人のような見た目をしていたから、捕虜になったのだと思ったが違うようだ。
そもそも、私はあの時死んだのだと思っていた。アメリカ軍の飛行機が爆弾を落としたあの時に、死んだはずだ。
では、ここは天国なのだろうか?
弟はどうしているだろうか?元気にしているだろうか。疎開先で虐められていないだろうか?
もし神がいるのだとしたら、弟をお救いください。


《2日目》

私の父だという人に会った。この周辺の長をしているらしい。
そして、私には婚約者がいるようだ。近くの街を収めている民族の跡取りだそうだ。
私たちの結婚で領土はさらに大きくなり、頑丈になるらしい。
戦争は嫌だ。結婚で平和が訪れるなら、喜んで結婚する。


《?日目》
いつのまにか私たちの領土は大きくなり、国になっていった。夫は政治がうまく、だんだんと国も安定してきた。
ここが故郷だと思うようになっていた。
それでも、春が来ると桜を思い出す。
幼い子供を見ると弟を思い出す。
私はきっと死んでしまったから、2度と日本に帰ることはないのだろう。
私は夫と息子とこの国と一生を添い遂げる覚悟ができた。
私はこの世界で生きていく。


《レオポルト2世の追記》
やはり、俺は死んだのだと確信した。
もとからそんな予感はしていた。
建設中のビルの横を歩いていて、誰かの叫び声が聞こえて、そこからの記憶がなかったから。
しかし、簡単には認められなかった。この日記になら帰るヒントが残されているかもしれないと思ったが、わかったことと言えば、帰れないということだけだ。
死んだ肉体に帰ることはできない。
この世界で生きていくしかないのだ。
一つ、この日記を読んでいて気になることがあった。
「藤浪ミチ子」という名前のことだ。確か、俺の大伯母がそんな名前だった気がする。祖父の姉で、戦時中に亡くなった人。
もしかしたら、またこの日記を読む人が現れるかもしれない。その人はもしかしたら俺の子孫なのかもしれない。
その人のために俺の名前とこの世界に来た日付を残す。

昭和56年 藤浪秀吾


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