16 / 19
王妃の日記
しおりを挟む
《1日目》
目が覚めると、知らない場所にいた。
皆が私のことを「リーシャ」と呼ぶ。
何が何だかわからない。私は「藤浪ミチ子」なのに。
皆、アメリカ人のような見た目をしていたから、捕虜になったのだと思ったが違うようだ。
そもそも、私はあの時死んだのだと思っていた。アメリカ軍の飛行機が爆弾を落としたあの時に、死んだはずだ。
では、ここは天国なのだろうか?
弟はどうしているだろうか?元気にしているだろうか。疎開先で虐められていないだろうか?
もし神がいるのだとしたら、弟をお救いください。
《2日目》
私の父だという人に会った。この周辺の長をしているらしい。
そして、私には婚約者がいるようだ。近くの街を収めている民族の跡取りだそうだ。
私たちの結婚で領土はさらに大きくなり、頑丈になるらしい。
戦争は嫌だ。結婚で平和が訪れるなら、喜んで結婚する。
《?日目》
いつのまにか私たちの領土は大きくなり、国になっていった。夫は政治がうまく、だんだんと国も安定してきた。
ここが故郷だと思うようになっていた。
それでも、春が来ると桜を思い出す。
幼い子供を見ると弟を思い出す。
私はきっと死んでしまったから、2度と日本に帰ることはないのだろう。
私は夫と息子とこの国と一生を添い遂げる覚悟ができた。
私はこの世界で生きていく。
《レオポルト2世の追記》
やはり、俺は死んだのだと確信した。
もとからそんな予感はしていた。
建設中のビルの横を歩いていて、誰かの叫び声が聞こえて、そこからの記憶がなかったから。
しかし、簡単には認められなかった。この日記になら帰るヒントが残されているかもしれないと思ったが、わかったことと言えば、帰れないということだけだ。
死んだ肉体に帰ることはできない。
この世界で生きていくしかないのだ。
一つ、この日記を読んでいて気になることがあった。
「藤浪ミチ子」という名前のことだ。確か、俺の大伯母がそんな名前だった気がする。祖父の姉で、戦時中に亡くなった人。
もしかしたら、またこの日記を読む人が現れるかもしれない。その人はもしかしたら俺の子孫なのかもしれない。
その人のために俺の名前とこの世界に来た日付を残す。
昭和56年 藤浪秀吾
目が覚めると、知らない場所にいた。
皆が私のことを「リーシャ」と呼ぶ。
何が何だかわからない。私は「藤浪ミチ子」なのに。
皆、アメリカ人のような見た目をしていたから、捕虜になったのだと思ったが違うようだ。
そもそも、私はあの時死んだのだと思っていた。アメリカ軍の飛行機が爆弾を落としたあの時に、死んだはずだ。
では、ここは天国なのだろうか?
弟はどうしているだろうか?元気にしているだろうか。疎開先で虐められていないだろうか?
もし神がいるのだとしたら、弟をお救いください。
《2日目》
私の父だという人に会った。この周辺の長をしているらしい。
そして、私には婚約者がいるようだ。近くの街を収めている民族の跡取りだそうだ。
私たちの結婚で領土はさらに大きくなり、頑丈になるらしい。
戦争は嫌だ。結婚で平和が訪れるなら、喜んで結婚する。
《?日目》
いつのまにか私たちの領土は大きくなり、国になっていった。夫は政治がうまく、だんだんと国も安定してきた。
ここが故郷だと思うようになっていた。
それでも、春が来ると桜を思い出す。
幼い子供を見ると弟を思い出す。
私はきっと死んでしまったから、2度と日本に帰ることはないのだろう。
私は夫と息子とこの国と一生を添い遂げる覚悟ができた。
私はこの世界で生きていく。
《レオポルト2世の追記》
やはり、俺は死んだのだと確信した。
もとからそんな予感はしていた。
建設中のビルの横を歩いていて、誰かの叫び声が聞こえて、そこからの記憶がなかったから。
しかし、簡単には認められなかった。この日記になら帰るヒントが残されているかもしれないと思ったが、わかったことと言えば、帰れないということだけだ。
死んだ肉体に帰ることはできない。
この世界で生きていくしかないのだ。
一つ、この日記を読んでいて気になることがあった。
「藤浪ミチ子」という名前のことだ。確か、俺の大伯母がそんな名前だった気がする。祖父の姉で、戦時中に亡くなった人。
もしかしたら、またこの日記を読む人が現れるかもしれない。その人はもしかしたら俺の子孫なのかもしれない。
その人のために俺の名前とこの世界に来た日付を残す。
昭和56年 藤浪秀吾
283
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
婚約破棄と言われても・・・
相沢京
BL
「ルークお前とは婚約破棄する!」
と、学園の卒業パーティーで男爵に絡まれた。
しかも、シャルルという奴を嫉んで虐めたとか、記憶にないんだけど・・
よくある婚約破棄の話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
***********************************************
誹謗中傷のコメントは却下させていただきます。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
初恋の公爵様は僕を愛していない
上総啓
BL
伯爵令息であるセドリックはある日、帝国の英雄と呼ばれるヘルツ公爵が自身の初恋の相手であることに気が付いた。
しかし公爵は皇女との恋仲が噂されており、セドリックは初恋相手が発覚して早々失恋したと思い込んでしまう。
幼い頃に辺境の地で公爵と共に過ごした思い出を胸に、叶わぬ恋をひっそりと終わらせようとするが…そんなセドリックの元にヘルツ公爵から求婚状が届く。
もしや辺境でのことを覚えているのかと高揚するセドリックだったが、公爵は酷く冷たい態度でセドリックを覚えている様子は微塵も無い。
単なる政略結婚であることを自覚したセドリックは、恋心を伝えることなく封じることを決意した。
一方ヘルツ公爵は、初恋のセドリックをようやく手に入れたことに並々ならぬ喜びを抱いていて――?
愛の重い口下手攻め×病弱美人受け
※二人がただただすれ違っているだけの話
前中後編+攻め視点の四話完結です
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
婚約破棄は計画的にご利用ください
Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった
第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい
……どうしよう
:注意:
素人です
人外、獣人です、耳と尻尾のみ
エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります
勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください
ざまぁできませんでした(´Д` ;)
マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる