王子様から逃げられない!

白兪

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「ルシファー様って本当に優しいよな。あんな完璧な人が王子様なんて…」

そうリリスが言うと、ダニエルはぎこちなく笑った。

「殿下は特にリリスに優しいからね」

「そうなの?」

「うん。あんなに優しい殿下は今まで見た事なかった。殿下は為政者としては完璧だけど…」

「どういう意味?」

「人に絶対情けをかけない。いつでも理性的で、全体主義で、欲を出さない。もちろん優しいところもあるけど、俺にはそれも計算のうちにしか見えない。
…って長々と語りすぎちゃったな。悪いとは思ってないよ!俺にも対等に接してくれるし!ただ優しい人とは違うと言うか…」

ルシファーを思い浮かべると思い出すのは優しい笑顔ばかりだ。腹黒いとは到底思えない。

「とにかく!リリスには特段優しいって事だよ!だからステファニー様も嫉妬するんだろうしね」

「それは困るよ」

「受け入れるしかないよ。あっちは由緒正しい貴族様で俺たちは何の力もない平民なんだから」

ダニエルが弱々しく笑った。

「俺は王配になる気なんてさらさらないのに」

「でもプロポーズされたらなるでしょう?」

「いや、断ると思う」

「え!なんで!確かに権力を持つのは大変そうだけど、その分利益も多いんだよ」

「もしも、ここにとどまることしか出来ないならシャオランに行こうと思って」

「シャオラン?初めて聞く国だ」

「遠い東の島国だよ。そこの文化が気に入ったんだ」

「でも王家が簡単に聖魔法使いを手放すとは思えないけど」

「最悪の場合、隠れて出国するよ」

「そこまでしてその国に行きたいの?」

「そこに行ったら何かがわかる気がするんだ」

「そっか…。じゃあなかなか会えなくなるね。寂しくなるよ」

ダニエルは残念そうな顔をした。

「何言ってんだ、俺たちの友情は一生ものだろ?手紙を送るよ」

「楽しみにしてる」


(でも…そうか。俺が聖魔法使いである限り簡単にこの国からは出られないんだな。
どうしたものか…。)


「貴方の方から話があるなんて珍しいわね。一体何を企んでいるのかしら?」

ステファニーはこちらを睨みつける。

「ステファニー様は俺にどっかに行ってほしいって思ってるんでしょう?」

「もちろんよ!今すぐ視界から消えてほしいわ」

「それじゃあ、協力してほしいことがあるんです。
俺はこの学園を卒業したらシャオランという島国に行きたい。」

「でも貴方は聖魔法使いじゃない。簡単に国が手放すかしら?」

「だからこそ、ステファニー様の力を借りたいです。
俺を秘密裏に国から逃してほしいんです。」

ステファニーはしばらく考え込んだ。
王家にこのことが知られたらステファニーまでも罰を受けることになるかもしれない。

「…分かったわ。目障りな貴方が自分から消えると言ってくれるんですもの。協力いたしますわ」

「ありがとうございます」

にこっと微笑むとステファニーはますます険しい顔になった。
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