8 / 19
8
しおりを挟む
勉強していても、友達と話していても、ご飯を食べていても、ルシファーの傷ついた表情が頭から離れない。胸がズキズキと痛み、気付けばため息ばかりついている。
そんな時だった。
またあの電子音が聞こえたのは。
“ミッション:ルシファーと仲直りしよう!
ルシファーは大の甘党。手作りのお菓子をあげて喜んでもらおう!”
「ミッション?そんなもんもあるのか。しかし何を作ろうか…」
恭弥はお菓子作りなんてほとんどしたことがない。しかし、何故だか、クッキーやガトーショコラのレシピが頭に浮かんできた。
(これはリリスの記憶…?)
リリスは孤児院の子供達のためによくお菓子を作っていた。ちびっ子たちの喜ぶ顔はリリスにとっての生きがいだった。
(元気にやってるかな…)
ちびっ子たちの笑顔を思い浮かべると心がポカポカしてきた。
「よし、頑張るぞ!」
恭弥は小さくえいえいおーと拳を掲げた。
素人にしては上出来と言えるだろう、ガトーショコラを手にリリスはルシファーに声をかけようとする。
しかし、急にこんなものいらないんじゃないか、という気持ちが湧き上がってきた。
ルシファーは王太子だ。プロのパティシエの本格スイーツを毎日食べているに違いない。
こんな素人のものなんて…
「それどうしたの?誰にもらった?エディス?ダニエル?それとも…」
こちらに気づいたルシファーが少し機嫌が悪そうに尋ねてくる。
「いや…これは、僕がルシファー様のために作ったものです。昨日酷いこと言っちゃったから…。でもいらないですよね」
はは、と渇いた笑みを漏らすと、ルシファーは驚きに目を見開いた。
「これ、リリスが作ったの?すごい。プロと変わらない見た目だね。是非とももらいたいな」
おずおずと手渡すとルシファーは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう!大切に食べるよ」
“ミッションクリア!
おめでとう。ミッションに成功したよ。この調子で好感度を上げていこう!”
俺は嬉しくて今すぐにでもスキップしたい気持ちだった。
「リリス、良かったらもらってくれないかな」
次の日、ルシファーから小包を貰った。
「これって…?
開けてみてもいいですか?」
「どうぞ」
小包を開けるとレザーのベルトの腕時計が入っていた。
「わぁ…!素敵…!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。是非使って」
「こんなに高そうなものいいんですか?僕なんて手作りのお菓子だけなのに…」
「真心がこもってるから何よりも嬉しかったよ。手作りのものなんて貰った事なかったから」
「じゃあまた渡しますね!」
もらった腕時計をじっと見つめる。
金色の針が正確に時を打つ。
時計の刻む音に合わせて鼓動もドクドクと波打った。
そんな時だった。
またあの電子音が聞こえたのは。
“ミッション:ルシファーと仲直りしよう!
ルシファーは大の甘党。手作りのお菓子をあげて喜んでもらおう!”
「ミッション?そんなもんもあるのか。しかし何を作ろうか…」
恭弥はお菓子作りなんてほとんどしたことがない。しかし、何故だか、クッキーやガトーショコラのレシピが頭に浮かんできた。
(これはリリスの記憶…?)
リリスは孤児院の子供達のためによくお菓子を作っていた。ちびっ子たちの喜ぶ顔はリリスにとっての生きがいだった。
(元気にやってるかな…)
ちびっ子たちの笑顔を思い浮かべると心がポカポカしてきた。
「よし、頑張るぞ!」
恭弥は小さくえいえいおーと拳を掲げた。
素人にしては上出来と言えるだろう、ガトーショコラを手にリリスはルシファーに声をかけようとする。
しかし、急にこんなものいらないんじゃないか、という気持ちが湧き上がってきた。
ルシファーは王太子だ。プロのパティシエの本格スイーツを毎日食べているに違いない。
こんな素人のものなんて…
「それどうしたの?誰にもらった?エディス?ダニエル?それとも…」
こちらに気づいたルシファーが少し機嫌が悪そうに尋ねてくる。
「いや…これは、僕がルシファー様のために作ったものです。昨日酷いこと言っちゃったから…。でもいらないですよね」
はは、と渇いた笑みを漏らすと、ルシファーは驚きに目を見開いた。
「これ、リリスが作ったの?すごい。プロと変わらない見た目だね。是非とももらいたいな」
おずおずと手渡すとルシファーは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう!大切に食べるよ」
“ミッションクリア!
おめでとう。ミッションに成功したよ。この調子で好感度を上げていこう!”
俺は嬉しくて今すぐにでもスキップしたい気持ちだった。
「リリス、良かったらもらってくれないかな」
次の日、ルシファーから小包を貰った。
「これって…?
開けてみてもいいですか?」
「どうぞ」
小包を開けるとレザーのベルトの腕時計が入っていた。
「わぁ…!素敵…!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。是非使って」
「こんなに高そうなものいいんですか?僕なんて手作りのお菓子だけなのに…」
「真心がこもってるから何よりも嬉しかったよ。手作りのものなんて貰った事なかったから」
「じゃあまた渡しますね!」
もらった腕時計をじっと見つめる。
金色の針が正確に時を打つ。
時計の刻む音に合わせて鼓動もドクドクと波打った。
360
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました
かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。
↓↓↓
無愛想な彼。
でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。
それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。
「私から離れるなんて許さないよ」
見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。
需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。
悪役令息に誘拐されるなんて聞いてない!
晴森 詩悠
BL
ハヴィことハヴィエスは若くして第二騎士団の副団長をしていた。
今日はこの国王太子と幼馴染である親友の婚約式。
従兄弟のオルトと共に警備をしていたが、どうやら婚約式での会場の様子がおかしい。
不穏な空気を感じつつ会場に入ると、そこにはアンセルが無理やり床に押し付けられていたーー。
物語は完結済みで、毎日10時更新で最後まで読めます。(全29話+閉話)
(1話が大体3000字↑あります。なるべく2000文字で抑えたい所ではありますが、あんこたっぷりのあんぱんみたいな感じなので、短い章が好きな人には先に謝っておきます、ゴメンネ。)
ここでは初投稿になりますので、気になったり苦手な部分がありましたら速やかにソッ閉じの方向で!(土下座
性的描写はありませんが、嗜好描写があります。その時は▷がついてそうな感じです。
好き勝手描きたいので、作品の内容の苦情や批判は受け付けておりませんので、ご了承下されば幸いです。
婚約破棄は計画的にご利用ください
Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった
第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい
……どうしよう
:注意:
素人です
人外、獣人です、耳と尻尾のみ
エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります
勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください
ざまぁできませんでした(´Д` ;)
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
実の弟が、運命の番だった。
いちの瀬
BL
「おれ、おっきくなったら、兄様と結婚する!」
ウィルとあの約束をしてから、
もう10年も経ってしまった。
約束は、もう3年も前に時効がきれている。
ウィルは、あの約束を覚えているだろうか?
覚えてるわけないか。
約束に縛られているのは、
僕だけだ。
ひたすら片思いの話です。
ハッピーエンドですが、エロ少なめなのでご注意ください
無理やり、暴力がちょこっとあります。苦手な方はご遠慮下さい
取り敢えず完結しましたが、気が向いたら番外編書きます。
尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話
天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。
レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。
ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。
リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが
咲
BL
俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。
ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。
「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」
モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?
重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。
※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。
※第三者×兄(弟)描写があります。
※ヤンデレの闇属性でビッチです。
※兄の方が優位です。
※男性向けの表現を含みます。
※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。
お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる