王子様から逃げられない!

白兪

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次は魔法薬学だが、実験を行うので移動しなくてはならない。移動のために教科書を持とうとすると、朝までカバンの中にあった教科書がないことに気がつく。

「あれ?ない。どこにもない」

「どうしたの?」

「ダニエル、俺の教科書知らない?魔法薬学の基礎っていうやつ。朝までカバンの中に入ってたんだけど…」

「見てないけど…。1回も取り出してないんだよね?」

「うん。おかしいな、なくなるはずが…」

(いや、なくなるはずはあるな。)

昨日、ルシファーに好意的なことを言われたことで、ステファニーの恨みを買ったのかもしれない。

ステファニーの方を見ると、案の定、取り巻き達がくすくす笑っていた。

「時間もないし、放課後探すよ。見つからなかったらまた考える。もう探すのはやめる」

「え!でも次の授業が困るんじゃない?」

「それじゃあ私のを一緒に見よう」

ルシファーが話しかけてきた。

そしてピコンと音がなりまた選択肢が生まれる。

▷お前のせいでこうなってんの!
 あまり僕に関わらないでほしい。
 ありがとう!助かります!

ふと、選択肢以外の言葉を選ぶとどうなるのか気になった。わざと選択肢にない言葉を言ってみる。

「本当ですか?迷惑じゃありませんか?」

すると警告音のようなものが脳内に流れた。

“選択肢を選んでください。選択肢を選んでください。10秒以内に選ばないとオート処理が施されます”

(オート処理?何なんだ、それ?1度選んでみないでおこうかな)

“10、9、8、7、6…”


「気にしないで。次の授業は私の隣に座ってくれれば大丈夫だから。良かったらわからないところは教えるし」

ルシファーは優しく微笑む。


“3、2、1。オート処理実行。”


 お前のせいでこうなってんの!
▷あまり僕に関わらないでほしい。
 ありがとう!助かります!

カーソルが2番目を指す。

(え、やめてくれよ。1番下が無難だろ!?)

「あまり僕に関わらないでほしい」

思わず口からそんな言葉が出ていた。
俺はハッと手で口を押さえる。

「ちがっ、今のは…!」

「ごめん、お節介だったかな?また困ったことがあったら言ってね」

ルシファーは悲しそうな顔をした。俺は傷つけてしまったとひどく後悔をする。

「どうしたの?そんなことを言うなんて。君らしくないね」

「いや、俺も言うつもりは全くなかったんだ。本当にルシファー様のご好意をありがたく思ってて…」

「ルシファー様にそんな口を聞くのはどうかと思いますけれど、貴方はそうするべきでしてよ」

ステファニー侯爵令嬢が扇子で口元を隠しながら近づいてくる。

「貴方がルシファー様に近寄らなければ、何も困ることはない。教科書もペンも、お気に入りのペンダントもなくなることはない」

その言葉にハッとして、俺は首元を触る。

孤児院の前に捨てられていた時に一緒に置かれていたペンダントを大事に首から下げているのだ。
流石に今回はペンダントは奪われていなかったが、このままいくと奪うという警告だろう。

「そうやって脅しをかけるなんて卑怯だ」

「脅し?何のこと?私はただ、雑草は庭園ではなく、道端にいるべきだと思うだけですわ。庭園に咲くのは薔薇だけでいい。雑草がそばに生えてては見劣りいたしますもの」

ステファニーは高らかに笑った。
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