8 / 24
交流
しおりを挟む
ヒラヒラのレースがふんだんにあしらわれたシャツを着る。
おめかしをしているのは1ヶ月ぶりに婚約者に会うからだ。
極力会わないようにしようとはいったものの、1ヶ月に1度は会わなくてはならなかった。
「お待たせいたしました。」
「あ、ああ!久しぶりですね。お元気でしたか?」
ジュスティスは慌てて椅子から立ち上がる。
「おかげさまで。」
ヴェリテは静かにお茶を飲む。
「あの、最近レベス語を学んでいるとお聞きしました。」
「はい。」
「実は僕もレベス語を学んでいるのですよ。僕の家がレベス王国と交易をしておりまして、それで…。」
「では、レベス王国についてお詳しいのですか?」
「他の人よりは詳しいと思いますよ。何度か訪れたこともありますし。」
レベス王国は逃亡先に考えている国の一つだ。この国よりも北に位置するレベス王国は技術が発達しており豊かな国だ。犯罪発生率も低く、子供が逃げ込んでも大丈夫だと踏んでいる。シュペルブ帝国も大きな国だが、レベス王国も引けを取らない。
「レベス王国についてもっと知りたいです。」
ヴェリテがそう言うと、ジュスティスはたくさんのことを教えてくれた。
「レベスは…。」
「もうこんな時間ですね。帰らなくては。」
ジュスティスがハッとした表情を見せる。
日は沈みかけ、空は赤く染まっていた。
「たくさんお話が聞けて面白かったです。また、ぜひ教えてください。」
ヴェリテは微笑む。
「ヴェリテ様がよろしければ明日でも明後日でもお伺いしますよ!」
ジュスティスは顔を赤くした。
ジュスティスはいい人だ。前世でも、心内はともかく、ファクティスが現れるまで優しく接してくれていた。ファクティスに嫉妬してヴェリテが虐めた結果、嫌われるようになってしまっただけで、ジュスティスはその名の通り、正義感の強い男だった。
どんなに優しくしてくれたとしても、ジュスティスは僕に愛情など少しも持っていなかったけどな。
ジュスティスは酷い人だ。優しくして期待させるだけ期待させて、最後には見捨てるのだから。
「お前の顔など2度と見たくない!優しいファクティスを傷つけて!この偽物が!!」
ジュスティスの憎悪の籠った瞳を思い出す。
あまり関わりたくないと思っていたが、また明後日会う約束をしてしまった。
ジュスティスが大切な人になる前に彼から離れなくては。
「ヴェリテ様、またお会いできるのを楽しみにしています。」
ジュスティスがそう微笑みかけるたび、ヴェリテの心臓はきゅっと締め付けられた。
ヴェリテは1人涙を流した。
ジュスティスに会うたびドキドキと高鳴る心臓を必死に抑えつけるように。
おめかしをしているのは1ヶ月ぶりに婚約者に会うからだ。
極力会わないようにしようとはいったものの、1ヶ月に1度は会わなくてはならなかった。
「お待たせいたしました。」
「あ、ああ!久しぶりですね。お元気でしたか?」
ジュスティスは慌てて椅子から立ち上がる。
「おかげさまで。」
ヴェリテは静かにお茶を飲む。
「あの、最近レベス語を学んでいるとお聞きしました。」
「はい。」
「実は僕もレベス語を学んでいるのですよ。僕の家がレベス王国と交易をしておりまして、それで…。」
「では、レベス王国についてお詳しいのですか?」
「他の人よりは詳しいと思いますよ。何度か訪れたこともありますし。」
レベス王国は逃亡先に考えている国の一つだ。この国よりも北に位置するレベス王国は技術が発達しており豊かな国だ。犯罪発生率も低く、子供が逃げ込んでも大丈夫だと踏んでいる。シュペルブ帝国も大きな国だが、レベス王国も引けを取らない。
「レベス王国についてもっと知りたいです。」
ヴェリテがそう言うと、ジュスティスはたくさんのことを教えてくれた。
「レベスは…。」
「もうこんな時間ですね。帰らなくては。」
ジュスティスがハッとした表情を見せる。
日は沈みかけ、空は赤く染まっていた。
「たくさんお話が聞けて面白かったです。また、ぜひ教えてください。」
ヴェリテは微笑む。
「ヴェリテ様がよろしければ明日でも明後日でもお伺いしますよ!」
ジュスティスは顔を赤くした。
ジュスティスはいい人だ。前世でも、心内はともかく、ファクティスが現れるまで優しく接してくれていた。ファクティスに嫉妬してヴェリテが虐めた結果、嫌われるようになってしまっただけで、ジュスティスはその名の通り、正義感の強い男だった。
どんなに優しくしてくれたとしても、ジュスティスは僕に愛情など少しも持っていなかったけどな。
ジュスティスは酷い人だ。優しくして期待させるだけ期待させて、最後には見捨てるのだから。
「お前の顔など2度と見たくない!優しいファクティスを傷つけて!この偽物が!!」
ジュスティスの憎悪の籠った瞳を思い出す。
あまり関わりたくないと思っていたが、また明後日会う約束をしてしまった。
ジュスティスが大切な人になる前に彼から離れなくては。
「ヴェリテ様、またお会いできるのを楽しみにしています。」
ジュスティスがそう微笑みかけるたび、ヴェリテの心臓はきゅっと締め付けられた。
ヴェリテは1人涙を流した。
ジュスティスに会うたびドキドキと高鳴る心臓を必死に抑えつけるように。
283
お気に入りに追加
2,936
あなたにおすすめの小説
裏切られた腹いせで自殺しようとしたのに隣国の王子に溺愛されてるの、なぁぜなぁぜ?
柴傘
BL
「俺の新しい婚約者は、フランシスだ」
輝かしい美貌を振りまきながら堂々と宣言する彼は、僕の恋人。その隣には、彼とはまた違う美しさを持つ青年が立っていた。
あぁやっぱり、僕は捨てられたんだ。分かってはいたけど、やっぱり心はずきりと痛む。
今でもやっぱり君が好き。だから、僕の所為で一生苦しんでね。
挨拶周りのとき、僕は彼の目の前で毒を飲み血を吐いた。薄れ行く意識の中で、彼の怯えた顔がはっきりと見える。
ざまぁみろ、君が僕を殺したんだ。ふふ、だぁいすきだよ。
「アレックス…!」
最後に聞こえてきた声は、見知らぬ誰かのものだった。
スパダリ溺愛攻め×死にたがり不憫受け
最初だけ暗めだけど中盤からただのラブコメ、シリアス要素ほぼ皆無。
誰でも妊娠できる世界、頭よわよわハピエン万歳。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
もう悪役には生まれたくなかった
絵斗
BL
普通から嫌われ者になってしまった令息君の悪役転生ものです。
R-18はまだ入れる予定ないです。
ATTENTION
・男しかいない世界の前提です。一応。
・平仮名セリフが多くなると思います。
・小説初心者です!!
・誤字脱字がある可能性がございます。教えて貰えると、すぐ修正できますので、よろしくお願いします!
・n番煎じでしょうこういう物語…
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜
にゃーつ
BL
大きなお屋敷の蔵の中。
そこが俺の全て。
聞こえてくる子供の声、楽しそうな家族の音。
そんな音を聞きながら、今日も一日中をこのベッドの上で過ごすんだろう。
11年前、進路の決まっていなかった俺はこの柊家本家の長男である柊結弦さんから縁談の話が来た。由緒正しい家からの縁談に驚いたが、俺が18年を過ごした児童養護施設ひまわり園への寄付の話もあったので高校卒業してすぐに柊さんの家へと足を踏み入れた。
だが実際は縁談なんて話は嘘で、不妊の奥さんの代わりに子どもを産むためにΩである俺が連れてこられたのだった。
逃げないように番契約をされ、3人の子供を産んだ俺は番欠乏で1人で起き上がることもできなくなっていた。そんなある日、見たこともない人が蔵を訪ねてきた。
彼は、柊さんの弟だという。俺をここから救い出したいとそう言ってくれたが俺は・・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる