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聖剣ちゃんは空気を読まない①
しおりを挟む『あのエロ豚司教はその立場が良いことに敬虔な修道女の純潔を食い漁っているんですよ。ま、要するに目の前のアレは聖職者ならぬ性職者ってことですねっ☆』
「おい馬鹿やめろ」
聖剣ちゃんは一切の慈悲もなく淡々と事実を突きつけた。その発言危ないぞ。
まぁ、エロ豚もとい大司教様には同情するわ。だってアレでしょう? この世界において絶対的な存在である聖剣だが所詮は単なる無機物。そう思っていたら、まさかの自意識を持っており自分の痴態をこと細やかに把握されていたのだ。
これなんて羞恥プレイ? ていうかエロ豚司教の羞恥プレイなんてどこに需要があるんだよ。ゲロ吐きそう。
まぁエロ豚司教はさておき、聖剣ちゃんの発言の中に気になるものがある。
「ていうか改めて女神正教ってなに?」
『あーこの世界における主教ですね。あんまりにも権力差エグ過ぎて他の宗教とかは邪教扱いですよ。ちなみに聖剣《私》を地上に遣わしたのもこの女神ということになっています』
「大司教めっちゃ関係してるじゃん」
つまり大司教にとっても聖剣とは決して無視できないほど重要なファクターだ。なにせその女神正教とやらの中核に位置しているといっても過言ではないのだ。そんな存在にその生臭坊主具合を克明に把握されてしまっていたわけだ。
哀れ大司教。母親にエグ目のエロ本を見つけられて綺麗に机の上に並べられていた男子高校生ぐらいにドンマイ。
しかし女神か。
日本にいた時はその存在をまともに信じたことなどなかったが、ここはなんでもありの異世界だ。やっぱり実在するんだろうなぁ。……関わらないようにしとこう。神とは古今東西を問わず碌でもない存在と相場で決まっているのだ。
女神について思考していると醜い奇声が耳を貫いた。どうやら大司教はこの期に及んで往生際が悪いらしい。
「な、ななななな聖剣とはいえなんたる不敬!! そ、それにあれは女神の名の元に行われる洗礼なのですっ。彼女達もさぞや光栄と思っていることでしょう!!」
『うわぁ』
更にドン引きだ。大司教は恥じる素振りすら見せず高らかにそう断言した。フシューフシューとオークを連想させるほど荒い鼻息が無駄に煩い。こんな言い訳に使われる女神には同情しちゃうね。
まぁあれだ。元の世界でも生臭坊主とかジル・ド・レェみたいな存在はいたわけだし、どこの世界もそこは似たようなもんか。所詮は人間なんてそんなもんよ。
「コ、コホン。取り乱しましたが改めて、貴方が噂の勇者ですか」
大司教は場の空気を戻すためなのか、露骨に大きな咳払いをした。今更だし火葬後の心臓マッサージ並みに手遅れだろうけど。
「ブヒヒッ初めて目にしたわけですがなるほど。確かに貴方は勇者として相応しくないですなぁ」
そして二チャァとした笑みを浮かべた。
厚顔無恥とはまさしくこのことだろう。お前はさっき暴露された自らの痴態を省みろよ。
だいたいそんなこといわれましてもって感じだ。そんなこと俺が一番そう思っているわ阿呆が。
「ブヒヒッとにかく我ら女神正教はこの天上院様を真なる勇者と認定したのですぞ」
「まぁそういうわけだ。そこの聖剣も意志があるなら尚更だろう。そんな陰キャよりこの僕の方が君に相応しいと思わないかい?」
彼らはそんなことを聞いてもないのに自信満々に恥じることなく言い放った。何度も言うがそんなこと言われましてもって感じだ。人の話を聞かないタイプの言葉は常に七面倒臭い。
チラリ。
言葉を発する気力すら失せた俺は聖剣に視線を投げかけることにした。秘技他人任せ。
必然というべきか俺にならいこの場に存在する全員の視線が我らの聖剣に集まる。
一拍。
『え、これ私に回答求められている感じですか? 普通に嫌ですけど』
まさかのまさか。聖剣ちゃんはあっけらかんとそんなことをおほざきになられた。
当然場の空気はお察しものだ。聖剣ちゃんってというとこあるよねー。
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