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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第253話 久々の再会
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「いやー、ビアンカさんが来てくださって本当に良かったです」
ビアンカさんが来てくれたおかげで兵士さんたちから謝罪され、今は止められた通路の先……ビアンカさんの部屋へと向かっている。
もし、あのタイミングでビアンカさんが来てくれなければ、投獄されていたか、イナリが怒って暴れていたかもしれない。
「けど、どうしてあのタイミングで、あの場所へ来られたんですか?」
「あら? アニエスさんと一緒に居た銀髪の男性から、念話で来るようにと言われたのですが……そう言えば、あのお方が居られませんね」
あっ! そういう事っ!? イナリが念話でビアンカさんを呼んだから、来てくれたんだ!
ビアンカさんにはイナリが妖狐だという事は伝えていないし、誤魔化さないと。
「ど、どうしてですかねー。おかしいなー。今は一緒に行動していないんですけど……あ! もしかして、これが虫の知らせですかね? 私たちのピンチを察して、あの方がビアンカさんに呼び掛けてくれたのかも」
「なるほど。遠く離れていても、アニエスさんとあのお方は強い絆で結ばれているのかもしれませんね」
「そ、そうですねー」
私とビアンカさんのやり取りを聞いていたコリンが笑いを堪えていて、ロレッタさんがキョトンとしている。
でも、私だって虫の知らせでそんな連絡がある訳ないと思うけど、他に言い訳が思いつかないのよっ!
それから、大きな部屋に入り……ここがビアンカさんの部屋みたいね。
「凄いお部屋ですね」
「そうなんですよ……私はこんなに大きな部屋は必要ないのですが、教会の方々がいろいろと調整されて、気付いた時には今更変える方が大変だと言われてしまいまして」
部屋にあるソファに薦められて座ると、奥からティーセットが載せられたカートを女性が押してきた。
この女性は、何処かで見た事があるような気が……あっ!
「もしかして、ディアナさんっ!?」
「はいっ! アニエス様、ご無沙汰しております。あの時は、本当にありがとうございました。弟も無事に解放され、今はビアンカ様にお仕えしながら、罪滅ぼしをさせていただいております」
以前に、イスパナの元聖都の地下に封じられていた魔物が解放されてしまい、私とイナリでその元凶を封じた。
その魔物を解放してしまったのがディアナさんなんだけど……弟を人質に取られて命令されていたという事で、ビアンカさんの監視下に居る事を条件に、許されたのだとか。
「それで、ですね。私は今、旧聖都にあった太陽の神殿の復元を担当しているのですが、アニエス様が残してくださった、氷の神殿のおかげでとても助かっています」
「あ、あの光の神殿を模したあれね」
「はい。ビアンカ様のお力を最大限発揮いただくには、時間による陽の指す角度などを計算しなければならないのですが、お手本とする神殿があるので、もうすぐ復元出来そうなんです」
ディアナさんによると、この現聖都であるバーセオーナは旧聖都の北東に位置し、距離もかなりあるので、元の神殿をそのまま作ってもダメなのだとか。
とはいえ、何も無しにゼロから作るとなると、計算が物凄く大変で、設計だけで数年経ってしまうところだったらしい。
「あ、それでこの教会は工事をしているんですね」
「その通りです。元々、このバーセオーナにも大きな教会があったのですが、それをビアンカ様の――太陽の聖女様の御祈祷をする為に、一部を作り変えているのです」
なるほど。でも、以前にビアンカさんから聞いた話では、太陽の聖女は毎日祈らないといけないそうなので、作りかけであっても、ここを使っているという事か。
ディアナさんの話でいろいろと疑問が氷解した……と思っていると、話が一区切りになったとみて、ビアンカさんが口を開く。
「ところで、アニエス様。こちらには、どのようなご用事だったのでしょうか?」
久しぶりの再会ではあるけれど、本題を切り出す事にした。
ビアンカさんが来てくれたおかげで兵士さんたちから謝罪され、今は止められた通路の先……ビアンカさんの部屋へと向かっている。
もし、あのタイミングでビアンカさんが来てくれなければ、投獄されていたか、イナリが怒って暴れていたかもしれない。
「けど、どうしてあのタイミングで、あの場所へ来られたんですか?」
「あら? アニエスさんと一緒に居た銀髪の男性から、念話で来るようにと言われたのですが……そう言えば、あのお方が居られませんね」
あっ! そういう事っ!? イナリが念話でビアンカさんを呼んだから、来てくれたんだ!
ビアンカさんにはイナリが妖狐だという事は伝えていないし、誤魔化さないと。
「ど、どうしてですかねー。おかしいなー。今は一緒に行動していないんですけど……あ! もしかして、これが虫の知らせですかね? 私たちのピンチを察して、あの方がビアンカさんに呼び掛けてくれたのかも」
「なるほど。遠く離れていても、アニエスさんとあのお方は強い絆で結ばれているのかもしれませんね」
「そ、そうですねー」
私とビアンカさんのやり取りを聞いていたコリンが笑いを堪えていて、ロレッタさんがキョトンとしている。
でも、私だって虫の知らせでそんな連絡がある訳ないと思うけど、他に言い訳が思いつかないのよっ!
それから、大きな部屋に入り……ここがビアンカさんの部屋みたいね。
「凄いお部屋ですね」
「そうなんですよ……私はこんなに大きな部屋は必要ないのですが、教会の方々がいろいろと調整されて、気付いた時には今更変える方が大変だと言われてしまいまして」
部屋にあるソファに薦められて座ると、奥からティーセットが載せられたカートを女性が押してきた。
この女性は、何処かで見た事があるような気が……あっ!
「もしかして、ディアナさんっ!?」
「はいっ! アニエス様、ご無沙汰しております。あの時は、本当にありがとうございました。弟も無事に解放され、今はビアンカ様にお仕えしながら、罪滅ぼしをさせていただいております」
以前に、イスパナの元聖都の地下に封じられていた魔物が解放されてしまい、私とイナリでその元凶を封じた。
その魔物を解放してしまったのがディアナさんなんだけど……弟を人質に取られて命令されていたという事で、ビアンカさんの監視下に居る事を条件に、許されたのだとか。
「それで、ですね。私は今、旧聖都にあった太陽の神殿の復元を担当しているのですが、アニエス様が残してくださった、氷の神殿のおかげでとても助かっています」
「あ、あの光の神殿を模したあれね」
「はい。ビアンカ様のお力を最大限発揮いただくには、時間による陽の指す角度などを計算しなければならないのですが、お手本とする神殿があるので、もうすぐ復元出来そうなんです」
ディアナさんによると、この現聖都であるバーセオーナは旧聖都の北東に位置し、距離もかなりあるので、元の神殿をそのまま作ってもダメなのだとか。
とはいえ、何も無しにゼロから作るとなると、計算が物凄く大変で、設計だけで数年経ってしまうところだったらしい。
「あ、それでこの教会は工事をしているんですね」
「その通りです。元々、このバーセオーナにも大きな教会があったのですが、それをビアンカ様の――太陽の聖女様の御祈祷をする為に、一部を作り変えているのです」
なるほど。でも、以前にビアンカさんから聞いた話では、太陽の聖女は毎日祈らないといけないそうなので、作りかけであっても、ここを使っているという事か。
ディアナさんの話でいろいろと疑問が氷解した……と思っていると、話が一区切りになったとみて、ビアンカさんが口を開く。
「ところで、アニエス様。こちらには、どのようなご用事だったのでしょうか?」
久しぶりの再会ではあるけれど、本題を切り出す事にした。
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