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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第250話 バーセオーナのお昼ご飯
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翌朝。貸切馬車に乗り、一気に観光都市……いえ、聖都バーセオーナへ。
それなりに距離があったけど、朝一番に移動したので、お昼に到着する事が出来た。
「アニエスさん。ここにトリスタン王子が……急いで探しましょう!」
馬車を降りるとロレッタさんが大急ぎで大通りへ行こうとしたので、私も続こうと思ったのだけど、イナリが念話で待ったをかける。
『待つのだ、アニエス! 今はダメだ!』
「えっ!? ろ、ロレッタさん! 一旦止まってください!」
何だろう。イナリが何か魔の力を感じたのだろうか。
だとしたら、何の準備も無しに突っ込んで行くと、大変な事になってしまう。
花の国ネダーランで、ソフィアさんが大変な事になってしまったのを思い出して青ざめながら、イナリに何があったのかを聞いてみる。
『うむ。既に昼だ。先ずは腹ごしらえをしてから行こうではないか』
えぇー……うーん。まぁそうね。そうしましょうか。
コリンだってお腹が空いているだろうし、聞き込みだって体力を使うからね。
「ロレッタさん。逸る気持ちは分かりますが、まずは食事にしましょう。いざという時に空腹で動けない……なんていうのは避けないとね」
「なるほど。確かにそうですね。では、何処かのお店に入りましょうか」
お昼ご飯の話になり、コリンが顔を輝かせる。
「お姉ちゃん! ロレッタお姉さん! この街は海が近くて、魚介類が美味しいんだよー!」
『ふむ。たまには魚も悪くないな。以前、船に乗った時以来、食べていない気がするしな』
「そうね。せっかくだし、前に来た時とは違う感じのお店にしましょうか」
前に来た時は、自分たちで釣った――イナリは潜って捕まえて来たけど――魚を調理してもらったから、今回は違うのが良いかな。
という訳で、コリンが見つけたエビや貝を鉄板で焼いて提供するというお店へ。
カウンターとテーブルがあって、カウンターではシェフが食材を焼くところを間近で見られるみたい。
だけど、イナリ……テイムしている魔物が一緒だと、カウンターはダメだと言われてしまい、テーブルへ。
プロの人の調理方法をちょっと見てみたかっただけに残念だと思いながら、チラチラとカウンターに目を向けていると、突然鉄板に大きな炎が!
「――っ!?」
何事かと思い、慌てて立ち上がると……
「わぁ! 凄ーい」
「この調理法はフランベって言う、フランセーズ発祥の手法らしいよ」
「香りが良くなるんですってー」
カウンターのお客さんたちが、迫力のある火を前に楽しそうに笑っていた。
……だ、だって、大きな音がしたし、凄い炎だったし、何かあったのかなって思っちゃうでしょ?
フランセーズの調理法って聞こえてきたけど、そんなの知らないし。
自分でも顔が赤くなっているのが分かりながら、静かに席に着くと、イナリが念話で話し掛けてきた。
『アニエスよ……』
うぅ。落ちつけって言うんでしょ?
そう思いながら子狐姿のイナリの目を見ていると……
『そのまま我を見て、振り向くな。後ろに怪しい奴らが居る』
思わぬ言葉が出てきた。
それなりに距離があったけど、朝一番に移動したので、お昼に到着する事が出来た。
「アニエスさん。ここにトリスタン王子が……急いで探しましょう!」
馬車を降りるとロレッタさんが大急ぎで大通りへ行こうとしたので、私も続こうと思ったのだけど、イナリが念話で待ったをかける。
『待つのだ、アニエス! 今はダメだ!』
「えっ!? ろ、ロレッタさん! 一旦止まってください!」
何だろう。イナリが何か魔の力を感じたのだろうか。
だとしたら、何の準備も無しに突っ込んで行くと、大変な事になってしまう。
花の国ネダーランで、ソフィアさんが大変な事になってしまったのを思い出して青ざめながら、イナリに何があったのかを聞いてみる。
『うむ。既に昼だ。先ずは腹ごしらえをしてから行こうではないか』
えぇー……うーん。まぁそうね。そうしましょうか。
コリンだってお腹が空いているだろうし、聞き込みだって体力を使うからね。
「ロレッタさん。逸る気持ちは分かりますが、まずは食事にしましょう。いざという時に空腹で動けない……なんていうのは避けないとね」
「なるほど。確かにそうですね。では、何処かのお店に入りましょうか」
お昼ご飯の話になり、コリンが顔を輝かせる。
「お姉ちゃん! ロレッタお姉さん! この街は海が近くて、魚介類が美味しいんだよー!」
『ふむ。たまには魚も悪くないな。以前、船に乗った時以来、食べていない気がするしな』
「そうね。せっかくだし、前に来た時とは違う感じのお店にしましょうか」
前に来た時は、自分たちで釣った――イナリは潜って捕まえて来たけど――魚を調理してもらったから、今回は違うのが良いかな。
という訳で、コリンが見つけたエビや貝を鉄板で焼いて提供するというお店へ。
カウンターとテーブルがあって、カウンターではシェフが食材を焼くところを間近で見られるみたい。
だけど、イナリ……テイムしている魔物が一緒だと、カウンターはダメだと言われてしまい、テーブルへ。
プロの人の調理方法をちょっと見てみたかっただけに残念だと思いながら、チラチラとカウンターに目を向けていると、突然鉄板に大きな炎が!
「――っ!?」
何事かと思い、慌てて立ち上がると……
「わぁ! 凄ーい」
「この調理法はフランベって言う、フランセーズ発祥の手法らしいよ」
「香りが良くなるんですってー」
カウンターのお客さんたちが、迫力のある火を前に楽しそうに笑っていた。
……だ、だって、大きな音がしたし、凄い炎だったし、何かあったのかなって思っちゃうでしょ?
フランセーズの調理法って聞こえてきたけど、そんなの知らないし。
自分でも顔が赤くなっているのが分かりながら、静かに席に着くと、イナリが念話で話し掛けてきた。
『アニエスよ……』
うぅ。落ちつけって言うんでしょ?
そう思いながら子狐姿のイナリの目を見ていると……
『そのまま我を見て、振り向くな。後ろに怪しい奴らが居る』
思わぬ言葉が出てきた。
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