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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第246話 国境の街トローセ
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オリアンヌさんから話を聞いて貸切馬車に乗り込むと、南西にあるイスパナとの国境の街、トローセへやって来た。
この街は、建物がどれも赤茶色のレンガで統一されていて、とても綺麗だ。
時間があれば、この街でもゆっくり観光したいんだけど……仕方ないわね。
「じゃあ、まずは目撃情報があった、冒険者ギルドへ行ってみましょう」
「はーい!」
「私もそれで良いと思います」
コリンとロレッタさんが同意し、イナリも念話で構わないと言ってくれたので、道を尋ねながら辿り着く。
いつもは、青色の屋根とか、緑色の壁の建物……って分かりやすいんだけど、建物の壁や屋根の色が統一されていると、綺麗な反面、道を尋ねるのは不向きかもね。
少しだけ道に迷ったけど、無事に到着し、早速受付に居た女性に聞いてみる。
「あの、この街で昨日トリスタン王子を見かけたって話を聞いたのですが」
「え? 失礼ですが、貴女は?」
「あ、すみません。私はアニエスと言いまして、とある事情でトリスタン王子の行方を探しているんです」
慌てて冒険者カードを提示すると、女性がまじまじと見つめ、何かを思い出したように手を叩く。
「あぁ! あの、トリスタン王子の被害者の方ですね! そういう事でしたら、こちらの部屋でお待ちください」
女性に案内されて奥の小部屋に入ると、少しして男性職員が入って来た。
「お待たせしました。トリスタン王子の事を探されているとか」
「はい。オリアンヌさん……王都の冒険者ギルドで、こちらに目撃情報があると伺いまして」
「そうですね。昨日の夕方くらいに、街の南の方で見かけました。ただ、街の南側はイスパナの国境があり、人が多くて見失ってしまったんです」
「なるほど。トリスタン王子のはイスパナへ向かったのでしょうか?」
「うーん、それは無いと思いますよ。冒険者カードや王族である事を示す紋章などでは、国境で止められるはずですので」
職員さんによると、トリスタン王子は冒険者ギルドから敵対していると見做されて、冒険者カードが無効にされているらしい。
ギルドから王家に対して、正式に抗議も行っているので、国外へ逃げようとしたら、間違いなく捕まるという話だ。
「ですので、まだこの街の何処かに居るのかもしれませんが……今のところ、他の者から見たという話は聞いていませんね」
「そうですか。ありがとうございます」
「一応、補足しておきますと、この街を通らずに……例えば山の中から国境を越える事も可能ですが、国の移動は全て記録されているので、記録に無い者が別の国で冒険者カードなどを使用すると即拘束されます。それくらい王子も知っていると思うので、流石にしないと思います」
すみません。ここにそれをした事がある私たちが居るんです。
いやまぁ、あの時は本当に緊急事態というか、時間が無かったからなんだけど。
とりあえず、あの時に冒険者カードを使う事がなくて良かった。
ひとまず、これ以上聞ける話が無さそうなので、冒険者ギルドを後にした所で、ロレッタさんが首を傾げる。
「ロレッタさん? どうかしたんですか?」
「あ……今の職員さんの話なんですが、私とトリスタン王子は少しだけ一緒に行動していたんですよ」
「そうですね。何度か、会いましたよね」
「えぇ。このフランセーズだけでなく、ゲーマ、タリアナと、幾つかの国を跨いで移動しているのですが……いずれも普通に国境を通っていたんです」
「えっ!? どういう事……?」
「わかりません。ただ、時々トリスタンとは違う名前を言っていたような気もして……まさか、身分証を偽造していたのかも」
身分証を偽造って、かなり罪が重そうだけど、いくらトリスタン王子でも、そこまでは……しないと言えないところが悲しいわね。
この街は、建物がどれも赤茶色のレンガで統一されていて、とても綺麗だ。
時間があれば、この街でもゆっくり観光したいんだけど……仕方ないわね。
「じゃあ、まずは目撃情報があった、冒険者ギルドへ行ってみましょう」
「はーい!」
「私もそれで良いと思います」
コリンとロレッタさんが同意し、イナリも念話で構わないと言ってくれたので、道を尋ねながら辿り着く。
いつもは、青色の屋根とか、緑色の壁の建物……って分かりやすいんだけど、建物の壁や屋根の色が統一されていると、綺麗な反面、道を尋ねるのは不向きかもね。
少しだけ道に迷ったけど、無事に到着し、早速受付に居た女性に聞いてみる。
「あの、この街で昨日トリスタン王子を見かけたって話を聞いたのですが」
「え? 失礼ですが、貴女は?」
「あ、すみません。私はアニエスと言いまして、とある事情でトリスタン王子の行方を探しているんです」
慌てて冒険者カードを提示すると、女性がまじまじと見つめ、何かを思い出したように手を叩く。
「あぁ! あの、トリスタン王子の被害者の方ですね! そういう事でしたら、こちらの部屋でお待ちください」
女性に案内されて奥の小部屋に入ると、少しして男性職員が入って来た。
「お待たせしました。トリスタン王子の事を探されているとか」
「はい。オリアンヌさん……王都の冒険者ギルドで、こちらに目撃情報があると伺いまして」
「そうですね。昨日の夕方くらいに、街の南の方で見かけました。ただ、街の南側はイスパナの国境があり、人が多くて見失ってしまったんです」
「なるほど。トリスタン王子のはイスパナへ向かったのでしょうか?」
「うーん、それは無いと思いますよ。冒険者カードや王族である事を示す紋章などでは、国境で止められるはずですので」
職員さんによると、トリスタン王子は冒険者ギルドから敵対していると見做されて、冒険者カードが無効にされているらしい。
ギルドから王家に対して、正式に抗議も行っているので、国外へ逃げようとしたら、間違いなく捕まるという話だ。
「ですので、まだこの街の何処かに居るのかもしれませんが……今のところ、他の者から見たという話は聞いていませんね」
「そうですか。ありがとうございます」
「一応、補足しておきますと、この街を通らずに……例えば山の中から国境を越える事も可能ですが、国の移動は全て記録されているので、記録に無い者が別の国で冒険者カードなどを使用すると即拘束されます。それくらい王子も知っていると思うので、流石にしないと思います」
すみません。ここにそれをした事がある私たちが居るんです。
いやまぁ、あの時は本当に緊急事態というか、時間が無かったからなんだけど。
とりあえず、あの時に冒険者カードを使う事がなくて良かった。
ひとまず、これ以上聞ける話が無さそうなので、冒険者ギルドを後にした所で、ロレッタさんが首を傾げる。
「ロレッタさん? どうかしたんですか?」
「あ……今の職員さんの話なんですが、私とトリスタン王子は少しだけ一緒に行動していたんですよ」
「そうですね。何度か、会いましたよね」
「えぇ。このフランセーズだけでなく、ゲーマ、タリアナと、幾つかの国を跨いで移動しているのですが……いずれも普通に国境を通っていたんです」
「えっ!? どういう事……?」
「わかりません。ただ、時々トリスタンとは違う名前を言っていたような気もして……まさか、身分証を偽造していたのかも」
身分証を偽造って、かなり罪が重そうだけど、いくらトリスタン王子でも、そこまでは……しないと言えないところが悲しいわね。
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