68 / 116
第6章 太陽の聖女と星の聖女
第240話 実技試験
しおりを挟む
「では、続いて実技試験に移ります」
筆記試験に無事合格したので、いよいよ実技試験を受ける事になった。
ギルドマスターさんに案内されてやってきた部屋には、机の上に薬を作る器具と、数多くの植物に、大きな水瓶が置かれている。
「アニエスさん。ここにある器具や植物は全て使っていただいて構いませんので、次の六つの薬の内、得意な四つを作ってください」
そう言って、ギルドマスターさんから十種類の薬が提示されたけど、その内の一つは聞いた事がないものだった。
とりあえずその一つは除外して、残りの五つの内から四つ作れば良いのよね。
「わかりました」
「制限時間は六十分です。それでは、始めっ!」
「え……六十分ですかっ!?」
「はい。時間の変更は出来ません。A級薬師たるもの、迅速かつ正確に薬を作れないといけません。そして、この質問をしている今も、試験時間は減っていきますよ」
「いえ、そういう話ではないんですが……」
ギルドマスターさんに何か勘違いされている気がするけれど、まぁいっか。
けど、もう一つ確認しておかないと。
「あと、作る薬の品質なんですけど……」
「Bランク以上の薬しかダメです。それより劣るものを提出された場合、不合格とします」
なるほど。ランクが高い分には問題ないのね。
じゃあ、早速取り掛かりますか。
まずは一番作り慣れている、上級ポーションから。
ただ、いつもとは違って、神水は使わないようにしないとね。
パパッと作っていると、ギルドマスターとギュスターヴさんの二人がヒソヒソと話し始めた。
「は、速い……けど、それでいて、きちんと分量を量っていますね」
「くっ……さ、流石はソフィアの弟子といった所ですな」
「ですが……ふむ。基本が出来ていませんね」
二人が私を見て何を話しているかは分からないけど、まずは一つ目の上級ポーションが完成した。
……したんだけど、何かおかしい。
「何か色が……変? 普段はこんな色にならないのに」
本来、上級ポーションは白っぽい色の薬になる。
でも、いつも通りに作ったはずのポーションは、何故か灰色っぽくくすんでいた。
選んだ薬草は、いつも使っている薬草と同じ……だと思う。
似ている植物という可能性もあるけれど、流石に一番多く作ってきた上級ポーションの材料は間違えないと思う。
いつも使っている器具とは違うから? けど、多少の違いはあっても、基本的には同じだ。
「残る差異は……お水!?」
上級ポーションを作った時に使った水瓶の水を汲み、透明なガラス瓶に注いでみると……若干濁っている!?
「あの、このお水って変じゃないですか?」
「……そちらは、街の中を流れる川から汲んできたものです。そのまま飲むのはオススメしませんね」
「あ……そういう事。でも……すみません。私は水魔法が使えるので、普段は魔法で出した水を使っているんです。なので、水を綺麗にする方法とかは知らないのですが」
「そういう事なら、アニエスさんが魔法で出した水を使っても問題ないですよ? この試験は、あくまで普段の薬の作り方を見ているので。ですから、器具や材料だって持ち込みでも構わないのです」
なるほど。水を綺麗にして使うっていう試験をしている訳ではなくて、あくまでA級薬師になってから、どんな薬を作るのか……って事なんだ。
それなら何とかなるわね。
という訳で、水魔法を使っていつも通りに作る事にしたので、躊躇なく四つのポーションを作り終え……ふと気付く。
神水を使って上級ポーションを作ったら、超級ポーションになっちゃうじゃないっ!
超級ポーションを私が作っている事がバレたら、面倒な事になるっ!
残り時間は……ギルドマスターさんと話したり、上級ポーションを作り直したりしていたから、残り五分!?
時間はないけど……別の五種類目の薬を作るしかないわっ!
筆記試験に無事合格したので、いよいよ実技試験を受ける事になった。
ギルドマスターさんに案内されてやってきた部屋には、机の上に薬を作る器具と、数多くの植物に、大きな水瓶が置かれている。
「アニエスさん。ここにある器具や植物は全て使っていただいて構いませんので、次の六つの薬の内、得意な四つを作ってください」
そう言って、ギルドマスターさんから十種類の薬が提示されたけど、その内の一つは聞いた事がないものだった。
とりあえずその一つは除外して、残りの五つの内から四つ作れば良いのよね。
「わかりました」
「制限時間は六十分です。それでは、始めっ!」
「え……六十分ですかっ!?」
「はい。時間の変更は出来ません。A級薬師たるもの、迅速かつ正確に薬を作れないといけません。そして、この質問をしている今も、試験時間は減っていきますよ」
「いえ、そういう話ではないんですが……」
ギルドマスターさんに何か勘違いされている気がするけれど、まぁいっか。
けど、もう一つ確認しておかないと。
「あと、作る薬の品質なんですけど……」
「Bランク以上の薬しかダメです。それより劣るものを提出された場合、不合格とします」
なるほど。ランクが高い分には問題ないのね。
じゃあ、早速取り掛かりますか。
まずは一番作り慣れている、上級ポーションから。
ただ、いつもとは違って、神水は使わないようにしないとね。
パパッと作っていると、ギルドマスターとギュスターヴさんの二人がヒソヒソと話し始めた。
「は、速い……けど、それでいて、きちんと分量を量っていますね」
「くっ……さ、流石はソフィアの弟子といった所ですな」
「ですが……ふむ。基本が出来ていませんね」
二人が私を見て何を話しているかは分からないけど、まずは一つ目の上級ポーションが完成した。
……したんだけど、何かおかしい。
「何か色が……変? 普段はこんな色にならないのに」
本来、上級ポーションは白っぽい色の薬になる。
でも、いつも通りに作ったはずのポーションは、何故か灰色っぽくくすんでいた。
選んだ薬草は、いつも使っている薬草と同じ……だと思う。
似ている植物という可能性もあるけれど、流石に一番多く作ってきた上級ポーションの材料は間違えないと思う。
いつも使っている器具とは違うから? けど、多少の違いはあっても、基本的には同じだ。
「残る差異は……お水!?」
上級ポーションを作った時に使った水瓶の水を汲み、透明なガラス瓶に注いでみると……若干濁っている!?
「あの、このお水って変じゃないですか?」
「……そちらは、街の中を流れる川から汲んできたものです。そのまま飲むのはオススメしませんね」
「あ……そういう事。でも……すみません。私は水魔法が使えるので、普段は魔法で出した水を使っているんです。なので、水を綺麗にする方法とかは知らないのですが」
「そういう事なら、アニエスさんが魔法で出した水を使っても問題ないですよ? この試験は、あくまで普段の薬の作り方を見ているので。ですから、器具や材料だって持ち込みでも構わないのです」
なるほど。水を綺麗にして使うっていう試験をしている訳ではなくて、あくまでA級薬師になってから、どんな薬を作るのか……って事なんだ。
それなら何とかなるわね。
という訳で、水魔法を使っていつも通りに作る事にしたので、躊躇なく四つのポーションを作り終え……ふと気付く。
神水を使って上級ポーションを作ったら、超級ポーションになっちゃうじゃないっ!
超級ポーションを私が作っている事がバレたら、面倒な事になるっ!
残り時間は……ギルドマスターさんと話したり、上級ポーションを作り直したりしていたから、残り五分!?
時間はないけど……別の五種類目の薬を作るしかないわっ!
64
お気に入りに追加
7,753
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ご自分の病気が治ったら私は用無しですか…邪魔者となった私は、姿を消す事にします。
coco
恋愛
病気の婚約者の看病を、必死にしていた私。
ところが…病気が治った途端、彼は私を捨てた。
そして彼は、美しい愛人と結ばれるつもりだったが…?
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??
新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。