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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第234話 受験前日

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「お客さん。フランセーズの王都バーサイレスに着きました」
「ありがとうございます」

 ドートレックの街ではいろいろあったけど、何とか無事にフランセーズの王都へ到着した。
 今日はゆっくり休んで、明日はいよいよ薬師ギルドの試験ね。
 ソフィアさんの家を使って良いと言ってもらっているので、まずは食料を買って行こうと思ったところで、子狐姿のイナリが念話で話し掛けてきた。

『アニエス。あのバカ王子と一緒に居た者が近くに居るぞ』
「えっ!? ロレッタさんが!?」

 驚きのあまり、思わず大声を上げてしまって、周囲の視線を集めてしまった。
 一旦、コリンとイナリを連れて人気のない場所へ移動し、話を聞く事に。

「イナリ。ロレッタさんが近くに居るの?」
「うむ。ただ、同じ場所から動かぬな」
「それって、この辺の宿に居るって事なのかなー?」

 コリンはモニカちゃんと共に誘拐されそうになったので大丈夫かなと思ったけど、あくまで主犯はトリスタン王子であり、ロレッタさんに恐怖を感じたりする訳ではないみたい。

「えっと、もしかしてトリスタン王子も一緒なの?」
「それはわからぬ。そのロレッタという者は魔力が強いので、その魔力の感覚を覚えているが、あのバカ王子は魔力が皆無だからな。記憶のしようがない」

 イナリ曰く、探知魔法は対象が持つ魔力でそれが何かを判断しているらしい。
 人間が持つ魔力と、魔物が持つ魔力は波形? が大きく違うので分かるのだとか。
 残念ながら、私には何の事かさっぱりだけどね。

「ただ、現時点では一人だな。誰かと一緒に居るわけではなさそうだ」
「そうなんだ。まぁでも、会わなければ何もなさそうだし、ひとまず食料を買って、ソフィアさんの家でご飯にしましょう」
「そうだねー! お姉ちゃん、僕も何か手伝うからねー!」

 イナリには、ロレッタさんが近付いてきたら教えて欲しいと伝え、買い物を続ける事に。
 今までいろんな国へ行っていたけど、やっぱり生まれ育ったフランセーズの食材に一番馴染みがあるので、ちょっと多めに買っておいた。
 イナリの異空間収納もあるしね。
 買い物を終えてソフィアさんの家に向かっていると、再びイナリが話し掛けてくる。

『アニエス。居たぞ。先程話したロレッタという者だ』
「ど、どこにっ!? とりあえず、ロレッタさんが居る道は避けましょう」
『いや、それは叶わぬだろう。ソフィアの家の前から動かぬ。どうやら、ずっとそこに居るようだな』
「どうしてロレッタさんがソフィアさんの家に居るの!?」
『それは本人に聞いてみるしかあるまい。どうする? ソフィアの家に行かず、街の宿に泊まるという手もあるが』

 イナリがドラゴンよりも強い魔力を持つと言うロレッタさん。
 トリスタン王子のせいでいろいろあったものの、直接ロレッタさんと戦ったりしたような事は無い。
 そのロレッタさんが、トリスタン王子みたいにこちらへ敵意を向けて来たら……。

「お姉ちゃん。ロレッタさんは、もしかしたらお姉ちゃんに用事があるのかもしれないよ?」
「私に?」
「うん。前にあった時、バカ王子を救う為にポーションをあげたでしょ? 同じ様に誰かが苦しんでいるのかも」
「あ……その可能性も確かにあるわね。……わかったわ。まずは話を聞きましょうか」

 コリンの意見もあり、ソフィアさんの家に行ってロレッタさんから話を聞いてみる事にした。
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