上 下
67 / 86
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第52話 まだまだ子離れできないバステトさん

しおりを挟む
「おやすみー!」
「おやすみ、セシリア」

 いつものように、ヴォーロスのモフモフに包まれて就寝した。……したんだけど、私の傍に居る猫の姿のバステトさんは良いのだけど、マヘス君がずっとウロウロしている。
 あー、そういえばバステトさんもマヘス君も夜行性か。
 バステトさんは、私たちに気を遣って静かにしてくれているのだろうけど、マヘス君は遊びたい盛りだし、難しいよね。
 だけど、マヘス君も私が寝る時間だと分かって居るのか、男の子の姿ではなく猫の姿なので、足音は気にならない。
 ただ、近くを歩いている気配はするけど。
 遊んであげたいけど、流石にもう夜も更けて来たしね。

「……マヘス君、おいでー」
「にゃー」

 身体を起こして呼び掛けると、マヘス君が嬉しそうに駆け寄って来たので、そのまま抱きかかえ……ヴォーロスの上にごろーん。
 抱っこして一緒に寝るという作戦を決行してみたんだけど……意外に大人しいわね。
 暴れられるかな? とも思ったんだけど、そんな事もなかったので、そのまま眠りに就いた。

 翌朝。
 私とヴォーロスが起きた時には、マヘス君も眠っていて、でも何やら視線を感じ……女性の姿になっているバステトさんだった。

「おはようございます」
「むぅ……おはよう」
「はぅ……おはよう、セシリア」

 さて、マヘス君がまだ眠っているし、どうしようかなと思っていると、唐突にバステトさんが崩れ落ちる。

「マヘスが……マヘスが母よりセシリアを選んだのじゃ。親離れはまだ当分先だと思っておったのに、急すぎて気持ちの整理が追いつかないのじゃ」
「あの、バステトさん。気が早過ぎますよ。マヘス君はどう見ても子供ですから」
「子供の成長は早いのじゃ。すぐに巣立ってしまうのじゃ」

 流石にこの年齢は無理だと思うんだけど。
 異世界っていうのと、猫っていう事を差し引いても、それでも早い気がする。
 あー、でも日本と違って、セシリアが元居た国も十五歳で成人なのよね。
 猫も成長スピードが人間と異なるか。
 ひとまず、猫の姿のマヘス君を抱きかかえ、静かにバステトさんに手渡す。
 マヘス君も、眠ったままでバステトさんに顔をくっつけているし、やっぱりお母さんの方が良いと思うんだよね。

「という訳で、私は朝食の準備をしますね。バステトさんは夜行性だと聞いていますが、朝食は食べられますか?」
「いただいて良いのか? であれば、是非お願いしたいのじゃ。セシリアの作る料理は旨いし、何より勉強になるのじゃ」
「あ、じゃあマヘス君を抱っこしたまま来てください。作る所をお見せしますね」

 バステトさんについて来てもらい、先ずはメインとなる食材――ポテトを収穫して水洗い。
 ササッと皮をむいたら、千切りにして少し塩を混ぜ、オリーブオイルをひいたフライパンへ。
 後はヴォーロスにお願いして、簡易コンロで加熱し、途中でひっくり返すだけ。
 時々焼き加減を確認し、焼き色が付いたらお皿へ移して、出来上がりっ!

「という訳で、ポテトのガレットの出来上がりー!」
「な、何と。一つの食材だけで出来てしまうのか。しかも旨そうな匂いなのじゃ」
「にゃ……にゃーっ!?」

 ガレットの匂いでマヘス君が起き……抱っこされていたからか、ビックリした様子でバステトさんの腕から飛び降りて、男の子の姿へ。

「おかあさん。だっこしないでよー!」
「えぇっ!? な、何故なのじゃっ!? な、泣くぞっ!?」
「だって、ボクもう、あかちゃんじゃないもん」

 あー、マヘス君は子ども扱いというか、赤ちゃんみたいに扱われるのが嫌だったのかな?
 要は、バステトさんがマヘス君に構い過ぎだったって事?
 まぁでも、割と最近卒乳したんだよね? ……だから、バステトさんの気持ちも分かるけどね。

「わー、美味しそー!」
「む、セシリアよ。我の分はあるのか?」
「もちろん。というか、もっと作るから大丈夫よ。次はチーズ入りにするわねー。あと、卵を乗せても美味しいのよー」

 ヴォーロスに続いてセマルグルさんもやって来たので、みんなで朝食を済ませ、眠そうなマヘス君やバステトさんも一緒に、電車で鬼人族の村へ。
 バステトさんたちは今度こそ祠に帰ったので、私はデュークさんにビネガー――お酢の事を聞きに行く事にした。
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します

如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい 全くもって分からない 転生した私にはその美的感覚が分からないよ

義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください

Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象 ・我儘 ・自己中心 ・人のものを盗る ・楽観的 ・・・・だったはず。 気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。 義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。 *大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。 この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。 4/22 完結予定 〜attention〜 *誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい *話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ
ファンタジー
レイツォは幼い頃から神童と呼ばれ、今では若くしてルーチェ国一とも噂される高名な魔術師だ。 彼は才能に己惚れることなく、常に努力を重ね、高みを目指し続けたことで今の実力を手に入れていた。 しかし、そんな彼にも常に上をいく、敵わない男がいた。それは天才剣士と評され、レイツォとは幼い頃からの親友である、ディオのことである。 そしてやってきたここ一番の大勝負にもレイツォは死力を尽くすが、またもディオの前に膝をつくことになる。 これによりディオは名声と地位・・・全てを手に入れた。 対してディオに敗北したことにより、レイツォの負の感情は、本人も知らぬ間に高まりに高まり、やがて自分で制することが出来なくなりそうなほど大きく心の中を渦巻こうとする。 やがて彼は憎しみのあまり、ふとした機会を利用し、親友であるはずのディオを出し抜こうと画策する。 それは人道を踏み外す、裏切りの道であった。だが、レイツォは承知でその道へ足を踏み出した。 だが、その歩みの先にあったのは、レイツォがまるで予想だにしない未来であった。 ------------ 某名作RPGがリメイクされるというので、つい勢いでオマージュ?パロディ?を書いてみました。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...