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第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第41話 昔からの言い伝え

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 デュークさんと共に、鬼人族の村へやって来ると、

「聖女様! 聖女セシリア様っ!」

 道を歩いているだけで、いろんな人が声を掛けてくる。
 えーっと、獣人族の村に続いて鬼人族の村でも、顔と名前が知られてしまった。
 こんなに大々的な感じではなくて、もっと静かにこそっと来たかったのに。

「セシリア様。では、こちらへ」

 前回同様に、デュークさんの家へ入れていただき……とりあえず一安心かな。
 デュークさんの家の庭側から外を見てみると、収穫の終わった畑が広がっている。
 改めて、かなりの広さなんだけど、これでも足りないのだろうか。

「デュークさん。来る途中に聞いた話ですと、この辺りの畑の小麦やコーンなどでも足りなかったという事ですね?」
「はい。守り神様より、もっと納めよという合図が来ております」
「合図って?」
「この村の南東に、守り神様へ作物を奉納する祠があるのですが、そこに巨大な石があるのです。その石が、向かって左側にあれば守り神様は満足されており、右側にあれば足りていないのでお供え物を増やすようにと、古来より言い伝えられているのです」
「えーっと、つまり守り神様と、直接お話ししたりしている訳ではないのね」
「そうですね。相手は神様ですし、直接話した事がある者は居ないのではないでしょうか」

 うーん。その守り神様って何者なんだろう。
 この感じからすると、おそらく誰も守り神様っていうのに会った事が無いんだよね?

「えっと、その石が右側にあって、動いていないっていうだけでは?」
「ですが、以前にセシリア様に育てていただいた作物をお供えした時は、石が左側に移っていたのです。今は右側ですが」
「誰かが石を動かしたとか」
「いえ、あの石は神様のお力でないと動かす事は出来ないかと」

 そうなんだ。
 一瞬、神様を語って、誰かがお供え物を盗んだりしているのかも! と思ったんだけど、そういう事でもないのね。
 となると、本当に守り神様がもっとお供え物が欲しいって言っている……の?

「あの、守り神様へのお供え物って、どうやって納めているのですか?」
「この村の代表――村長の娘さんが、お供え物を持って祠へ行き、所定の場所へ置いて来るだけですね」
「そのお供え物は、翌日になるとなくなっているんですか?」
「その通りです。流石に夜は魔物が現れますので、いつ頃守り神様がお供え物を受け取られているかまでは分かりませんが、夜である事は間違いないのではないかと」

 なるほど。その祠にお供えした作物を、実は魔物が食べてしまっているとかっていう可能性があるかも!
 何にせよ、一度その祠を見てみた方が良いかもしれないわね。

「デュークさん。その祠って、私が見に行っても大丈夫ですか?」
「はい。聖女様でしたら問題ないかと思います。……そうだ。宜しければ、本日のお供え物の奉納を見られますか? いつもお昼前に奉納致しますので、本日の奉納が未だですのね」
「そうですね。では、せっかくですのでお願い出来ますか?」
「畏まりました。村長に伝えて参りますので、少しお待ちくださいませ」

 そう言って、デュークさんが慌てて家を出ていき、デュークさんの奥さんが淹れてくださったお茶を飲んで待つ事に。
 待っている間に幼い男の子がやってきて、

「おねーちゃん、あそぼー!」

 前回同様に遊んで欲しいと言ってきた。
 前は魔王ごっこをしたいと言われ、デュークさんが止めたけど、今日も魔王ごっこなのかな?

「いいわよー。何をして遊ぶのかな?」
「えっとねー、せーじょさまごっこー!」

 えーっと、聖女様ごっこって何をするんだろう。
 逆に物凄く気になり、どういう事をする遊びなのか教えてもらおうと思っていたのに……デュークさんが戻って来て、村長さんの家に行く事になってしまった。
 うぅ、気になる……気になるよー!
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