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第1章 追放された土の聖女
挿話5 鬼人族の小悪党な少年
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「お、おい! 見たか、今の!」
「う、うん! こんな季節外れに小麦が一気に成長した!」
「それに、コーンもだ! あんなに大きく育ったコーンを見た事があるか!? ……ちょっと食べてみようぜ!」
弟分を誘い、目の前で急激に育ったコーンの一つをナタで切ると、皮をはがしてかぶりつく。
……旨いな。
「旨っ! 兄貴! これ、ちゃんとしたコーンだよ!」
「そうだな。味は普通のコーンより……少し甘いか? 何にせよ、大きいコーンが、一瞬で大量に収穫出来るなんて凄すぎるだろ!」
「ここって、デュークさんの畑だよね? 一体どうやったんだろ?」
「待て……そのデュークの声が聞こえたぞ」
コーン畑の中でしゃがみ込み、耳を澄ましていると、
「何かお礼を……聖女様……では、どうぞ我が家へ」
聞き慣れない言葉が聞こえた。
「どうやら聖女っていう奴が、このコーンや小麦を急成長させたみたいだぞ」
「兄貴。あそこ……デュークが人間族の女を連れて歩いてる!」
「こんな所にどうして人間族が? いや、まぁいい。弱そうな女だったな。……待てよ。アイツを脅して、コーンを作らせまくったら……」
「お腹いっぱい食べられる!」
「あぁ、それもあるし、何より金になるな」
コーンを他の街へ運ぶのは骨が折れるが、あの女さえ手下にすれば、無限にコーンが手に入るからな。
「よし! あの女を捕まえるぞ!」
「でも、デュークさんの家に行っちゃったよ? デュークさんって、他の街を行き来する商人だから、護衛を雇っているはずだよ?」
「待て待て。今日は例の集会だろ? この集会には、いつもデュークが参加している。つまり、この後デュークは外出できないはずだ。つまり、あの女を何処から連れて来たかは知らないが、送り届ける事が出来ないという事だ」
「なるほど。あの弱そうな人間族の女なら、簡単に倒せるね!」
「あぁ。人間族は俺たち鬼人族に力が遥かに弱い。いいか。この村の中で襲ったら、デュークの護衛が来るかもしれない。だから、村を出るまで待つぞ」
「うんっ!」
そう言って、弟分とデュークの家を見張っているんだけど……遅いな。
家から誰も出てこない。
「あっ! もしかして、裏口から出たのか!?」
「あー、デュークさんの家って、この村じゃ二番目に大きいもんね。裏口くらいあるかも」
「くっ……おい、ちょっと裏側を見て来い。見つからないように、大回りで行くんだぞ」
「わかったー!」
弟分に裏口を見に行かせたところで……くそっ! こんなタイミングで人間族の女が出て来やがった!
「本当にご馳走様でした。こんなにお土産までいただいてしまって」
「いえ。本当にありがとうございます。聖女様にしていただいた事に比べたら、これくらいのお礼しか出来ず、申し訳ありません。では、馬車で家までお送り致しますね」
な、何ぃっ!? 予想に反してデュークが送るだとっ!?
おい、いつもの集会は良いのか!? 毎回、村長とかと激しく言い合っているのに。
「あ、あれくらいの距離でしたら歩くので大丈夫ですよ。それに、奥様のお料理が美味し過ぎてつい食べ過ぎてしまったので、散歩して帰りたいんです」
「そう……ですか? では、せめて村の外までお送り致します」
よし! 何か知らないけど、人間の女……ナイスだ!
そのままデュークに見送られ、一人で西の道を歩いて行った。
あとは、俺一人でも余裕だが、逃げられたら面倒なので弟分が来るのを待つか。流石に俺が居なければ、人間を追って村を出た事に気付くだろう。
しかし……あの人間は何をしているんだ?
道に向かって手をかざして……なっ、なんだってー!? あのデコボコした土の道が、一瞬で綺麗な平らな道になった!
どうなっているんだ!? しかも……
「うわっ! 今度は道が石畳に!?」
しまった! 木に隠れながら後をつけているのに、人間がした事が凄すぎて、思わず叫んでしまった。
幸い気付いていないみたいだけど……あっ! そういえば、人間は力が弱い代わりに、魔法が使えるって聞いた事がある。
まさか、道を一瞬で綺麗な石畳にしたり、コーンを大量に実らせたのも、人間の魔法なのか!?
あれ? もしかして俺……とんでも無い相手に喧嘩を売ろうとしてる!?
だ、だけど、金があれば働かなくて済むし、大きな家に住めて、グータラし放題だ!
悪いが俺の自由の為に……って、この影は何だ? 何かが俺の上に?
「――っ!? どっ!? どうしてグリフォン様がっ!?」
「……そこの悪ガキよ。セシリアに何の用だ?」
「せ、セシリアとは? あ……もしかして、あの人間の女の事でしょうか?」
「その通りだ。あの者は、我の大切な友人だ。万が一、何かしてみろ。鬼人族の村ごと潰すぞ」
「め、滅相もありません! た、ただ、人間族が居るなんて珍しいなと思っただけでして……」
「言っておくが、我は常にセシリアを見守っておる。くれぐれも、おかしな事を考えぬようにな」
ははぁぁぁっ! ……よ、良かった。空を飛んで何処かへ行ってくれた。
というか、グリフォン様って喋れたんだ。
……いや、とりあえず生きていて良かった。とにかく逃げよう。
そう思った所で、
「兄貴ー! ……あ! なんだ、あそこに居るじゃないっすか! 早くあの人間の女をやっちまいましょー!」
弟分が大声で余計な事を言い……違うっ! 違うんですっ! お許しをぉぉぉっ!
グリフォン様が急降下してきて、俺と弟分に体当たりし、思いっきり吹き飛ばされた。
や、やっぱり……悪い事は考えちゃダメだな。
「う、うん! こんな季節外れに小麦が一気に成長した!」
「それに、コーンもだ! あんなに大きく育ったコーンを見た事があるか!? ……ちょっと食べてみようぜ!」
弟分を誘い、目の前で急激に育ったコーンの一つをナタで切ると、皮をはがしてかぶりつく。
……旨いな。
「旨っ! 兄貴! これ、ちゃんとしたコーンだよ!」
「そうだな。味は普通のコーンより……少し甘いか? 何にせよ、大きいコーンが、一瞬で大量に収穫出来るなんて凄すぎるだろ!」
「ここって、デュークさんの畑だよね? 一体どうやったんだろ?」
「待て……そのデュークの声が聞こえたぞ」
コーン畑の中でしゃがみ込み、耳を澄ましていると、
「何かお礼を……聖女様……では、どうぞ我が家へ」
聞き慣れない言葉が聞こえた。
「どうやら聖女っていう奴が、このコーンや小麦を急成長させたみたいだぞ」
「兄貴。あそこ……デュークが人間族の女を連れて歩いてる!」
「こんな所にどうして人間族が? いや、まぁいい。弱そうな女だったな。……待てよ。アイツを脅して、コーンを作らせまくったら……」
「お腹いっぱい食べられる!」
「あぁ、それもあるし、何より金になるな」
コーンを他の街へ運ぶのは骨が折れるが、あの女さえ手下にすれば、無限にコーンが手に入るからな。
「よし! あの女を捕まえるぞ!」
「でも、デュークさんの家に行っちゃったよ? デュークさんって、他の街を行き来する商人だから、護衛を雇っているはずだよ?」
「待て待て。今日は例の集会だろ? この集会には、いつもデュークが参加している。つまり、この後デュークは外出できないはずだ。つまり、あの女を何処から連れて来たかは知らないが、送り届ける事が出来ないという事だ」
「なるほど。あの弱そうな人間族の女なら、簡単に倒せるね!」
「あぁ。人間族は俺たち鬼人族に力が遥かに弱い。いいか。この村の中で襲ったら、デュークの護衛が来るかもしれない。だから、村を出るまで待つぞ」
「うんっ!」
そう言って、弟分とデュークの家を見張っているんだけど……遅いな。
家から誰も出てこない。
「あっ! もしかして、裏口から出たのか!?」
「あー、デュークさんの家って、この村じゃ二番目に大きいもんね。裏口くらいあるかも」
「くっ……おい、ちょっと裏側を見て来い。見つからないように、大回りで行くんだぞ」
「わかったー!」
弟分に裏口を見に行かせたところで……くそっ! こんなタイミングで人間族の女が出て来やがった!
「本当にご馳走様でした。こんなにお土産までいただいてしまって」
「いえ。本当にありがとうございます。聖女様にしていただいた事に比べたら、これくらいのお礼しか出来ず、申し訳ありません。では、馬車で家までお送り致しますね」
な、何ぃっ!? 予想に反してデュークが送るだとっ!?
おい、いつもの集会は良いのか!? 毎回、村長とかと激しく言い合っているのに。
「あ、あれくらいの距離でしたら歩くので大丈夫ですよ。それに、奥様のお料理が美味し過ぎてつい食べ過ぎてしまったので、散歩して帰りたいんです」
「そう……ですか? では、せめて村の外までお送り致します」
よし! 何か知らないけど、人間の女……ナイスだ!
そのままデュークに見送られ、一人で西の道を歩いて行った。
あとは、俺一人でも余裕だが、逃げられたら面倒なので弟分が来るのを待つか。流石に俺が居なければ、人間を追って村を出た事に気付くだろう。
しかし……あの人間は何をしているんだ?
道に向かって手をかざして……なっ、なんだってー!? あのデコボコした土の道が、一瞬で綺麗な平らな道になった!
どうなっているんだ!? しかも……
「うわっ! 今度は道が石畳に!?」
しまった! 木に隠れながら後をつけているのに、人間がした事が凄すぎて、思わず叫んでしまった。
幸い気付いていないみたいだけど……あっ! そういえば、人間は力が弱い代わりに、魔法が使えるって聞いた事がある。
まさか、道を一瞬で綺麗な石畳にしたり、コーンを大量に実らせたのも、人間の魔法なのか!?
あれ? もしかして俺……とんでも無い相手に喧嘩を売ろうとしてる!?
だ、だけど、金があれば働かなくて済むし、大きな家に住めて、グータラし放題だ!
悪いが俺の自由の為に……って、この影は何だ? 何かが俺の上に?
「――っ!? どっ!? どうしてグリフォン様がっ!?」
「……そこの悪ガキよ。セシリアに何の用だ?」
「せ、セシリアとは? あ……もしかして、あの人間の女の事でしょうか?」
「その通りだ。あの者は、我の大切な友人だ。万が一、何かしてみろ。鬼人族の村ごと潰すぞ」
「め、滅相もありません! た、ただ、人間族が居るなんて珍しいなと思っただけでして……」
「言っておくが、我は常にセシリアを見守っておる。くれぐれも、おかしな事を考えぬようにな」
ははぁぁぁっ! ……よ、良かった。空を飛んで何処かへ行ってくれた。
というか、グリフォン様って喋れたんだ。
……いや、とりあえず生きていて良かった。とにかく逃げよう。
そう思った所で、
「兄貴ー! ……あ! なんだ、あそこに居るじゃないっすか! 早くあの人間の女をやっちまいましょー!」
弟分が大声で余計な事を言い……違うっ! 違うんですっ! お許しをぉぉぉっ!
グリフォン様が急降下してきて、俺と弟分に体当たりし、思いっきり吹き飛ばされた。
や、やっぱり……悪い事は考えちゃダメだな。
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