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第1章 追放された土の聖女
第18話 拐われたリリィちゃん
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「り、リリィちゃんが拐われたって、どういう事なんですかっ!?」
「それが、聖女様が帰られた後、時々村に来る商人が来まして、あのブドウという木の実が見つかってしまったんです。その時は、村中が聖女様が素晴らしいと、ずっと話題になってしまっており、聖女様に会わせろと……」
「それでリリィちゃんが拐われたの!?」
「はい。その時、たまたま近くに居ただけなのですが、ブドウの木がある家……僕に聖女様一人だけを連れて来るようにと」
あの小さくてモフモフで、物凄く可愛いリリィちゃんを……絶対に許さないんだからっ!
ちなみにマティスさんは、魔物が居なくなる日の出と共に、ここの川まで走って来て、川沿いに家っぽい物を探して回ったらしい。
「ほんの少しだけ待っていて。すぐ準備するから」
そう言って家に戻ると、ヴォーロスとセマルグルに事情を伝える。
「セシリア。危ないから僕も行くよ」
「そうだな。我も同行しよう」
「待って。二人とも気持ちは嬉しいけど、私一人で行かないとリリィちゃんが何をされるか分からないのよ。だから、少し留守にするけど、待っていて。私なら大丈夫だから」
ヴォーロスもセマルグルさんも納得している感じではなかったけど、人命優先という事で、ついて来なくても大丈夫だと念を押し、申し訳なさそうにしているマティスさんの元へ。
「おまたせ。さぁ行きましょう」
「せっかく村を救っていただいたのに、こんな事に巻き込んでしまってすみません」
「私は別に構わないけど、リリィちゃんを巻き込んだのは許せないわね。今頃泣いてないかな……心配だわ」
リリィちゃんの可愛い様子を思い出しながら、村の近くまで来たんだけど、マティスさんが違う方向へ進みだす。
「聖女様、こちらです。向こうに馬の休憩所があり、そこで待っていると」
「あ、そっか。旅の商人っていうくらいだから、馬車なんだ」
「はい。それと、商人には護衛も居たので、我々は尚更何も出来なくて……」
「大丈夫よ。とりあえずブドウが欲しいだけでしょ? それくらいなら出してあげるし、とにかくリリィちゃんを助けなきゃね」
暫く歩くと、マティスさんが言っていた休憩所みたいな小屋があった。
日本で言うガソリンスタンドなのかな?
そんな事を思いつつ、何をされるか分からないので、私とマティスさんにそれぞれ防御魔法を掛けておく。
「聖女様。これは……?」
「防御魔法よ。殴られたり斬られたりしても、普通の武器だったら完璧に防げるわよ」
「す、凄いです。流石、聖女様ですね」
「私は土魔法が得意なんだけど、土系統は防御系の魔法が沢山あるからね。逆に攻撃魔法は……あるんだけど、使い勝手が難しくて」
土魔法による魔法攻撃はクセが強いのよね。
だから、あんまり使った事がないけど……使うような事にならない事を願いつつ、小屋へ。
マティスさんが先に入り、
「せ、聖女様をお連れしました」
「中へ連れて来い」
中に居るであろう人たちに声を掛けると、小屋に入れと言ってくる。
土魔法的には屋外の方が良いんだけど、仕方ないか。
中に入ると、村に居た獣人さんたちとは全然違う姿の人……頭にツノが生えている男の人が四人立っていた。
いわゆる鬼人族と呼ばれる人たちたちだ。
土の聖女としての知識で知ってはいるけれど、初めて見た。
何を要求してくるのかと待っていると、
「ようこそ、聖女様……申し訳ありませんでしたっ!」
「はい?」
「まず、こちらの獣人族の子供はお返し致します。勿論、怪我一つさせておりませんし、食事もちゃんと与えております」
「……はぁ」
「こんな呼び出し方になって誠に申し訳ないのですが、どうか我らをお助けいただけないでしょうかっ!」
全く予想していない状況になってしまった。
「それが、聖女様が帰られた後、時々村に来る商人が来まして、あのブドウという木の実が見つかってしまったんです。その時は、村中が聖女様が素晴らしいと、ずっと話題になってしまっており、聖女様に会わせろと……」
「それでリリィちゃんが拐われたの!?」
「はい。その時、たまたま近くに居ただけなのですが、ブドウの木がある家……僕に聖女様一人だけを連れて来るようにと」
あの小さくてモフモフで、物凄く可愛いリリィちゃんを……絶対に許さないんだからっ!
ちなみにマティスさんは、魔物が居なくなる日の出と共に、ここの川まで走って来て、川沿いに家っぽい物を探して回ったらしい。
「ほんの少しだけ待っていて。すぐ準備するから」
そう言って家に戻ると、ヴォーロスとセマルグルに事情を伝える。
「セシリア。危ないから僕も行くよ」
「そうだな。我も同行しよう」
「待って。二人とも気持ちは嬉しいけど、私一人で行かないとリリィちゃんが何をされるか分からないのよ。だから、少し留守にするけど、待っていて。私なら大丈夫だから」
ヴォーロスもセマルグルさんも納得している感じではなかったけど、人命優先という事で、ついて来なくても大丈夫だと念を押し、申し訳なさそうにしているマティスさんの元へ。
「おまたせ。さぁ行きましょう」
「せっかく村を救っていただいたのに、こんな事に巻き込んでしまってすみません」
「私は別に構わないけど、リリィちゃんを巻き込んだのは許せないわね。今頃泣いてないかな……心配だわ」
リリィちゃんの可愛い様子を思い出しながら、村の近くまで来たんだけど、マティスさんが違う方向へ進みだす。
「聖女様、こちらです。向こうに馬の休憩所があり、そこで待っていると」
「あ、そっか。旅の商人っていうくらいだから、馬車なんだ」
「はい。それと、商人には護衛も居たので、我々は尚更何も出来なくて……」
「大丈夫よ。とりあえずブドウが欲しいだけでしょ? それくらいなら出してあげるし、とにかくリリィちゃんを助けなきゃね」
暫く歩くと、マティスさんが言っていた休憩所みたいな小屋があった。
日本で言うガソリンスタンドなのかな?
そんな事を思いつつ、何をされるか分からないので、私とマティスさんにそれぞれ防御魔法を掛けておく。
「聖女様。これは……?」
「防御魔法よ。殴られたり斬られたりしても、普通の武器だったら完璧に防げるわよ」
「す、凄いです。流石、聖女様ですね」
「私は土魔法が得意なんだけど、土系統は防御系の魔法が沢山あるからね。逆に攻撃魔法は……あるんだけど、使い勝手が難しくて」
土魔法による魔法攻撃はクセが強いのよね。
だから、あんまり使った事がないけど……使うような事にならない事を願いつつ、小屋へ。
マティスさんが先に入り、
「せ、聖女様をお連れしました」
「中へ連れて来い」
中に居るであろう人たちに声を掛けると、小屋に入れと言ってくる。
土魔法的には屋外の方が良いんだけど、仕方ないか。
中に入ると、村に居た獣人さんたちとは全然違う姿の人……頭にツノが生えている男の人が四人立っていた。
いわゆる鬼人族と呼ばれる人たちたちだ。
土の聖女としての知識で知ってはいるけれど、初めて見た。
何を要求してくるのかと待っていると、
「ようこそ、聖女様……申し訳ありませんでしたっ!」
「はい?」
「まず、こちらの獣人族の子供はお返し致します。勿論、怪我一つさせておりませんし、食事もちゃんと与えております」
「……はぁ」
「こんな呼び出し方になって誠に申し訳ないのですが、どうか我らをお助けいただけないでしょうかっ!」
全く予想していない状況になってしまった。
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