上 下
26 / 70

第26話 足りないお小遣い

しおりを挟む
「ごちそうさまでした!」
「……ルーシー様。珍しく、美味しそうに召し上がってくださいましたね」
「え? だって、本当に美味しかったもん。じゃあ、次は後片付けね」

 テレーズさんが作ってくれたポトフを食べ終えると、怪訝な顔を向けられたけど、一緒に後片付けを終わらせる。
 といっても、水魔法は私も……というか、ユリアナも使えるので、食器や調理器具を洗い、使わせてもらったテーブルなどを拭いていくだけだけど。

「後片付けまで手伝っていただいて、すみません」
「それくらい、良いわよ。というか、食事を作ってもらった訳だしね。それより、早く買い物に行きましょう!」
「ヒート・プレートですね? ですが、少しだけ問題がありまして」
「問題? な、何なの?」
「はい。ご主人様から、ルーシー様へのお小遣いを預かってきているのですが、それでは少々足りないかと」

 お小遣い! ……というか、そもそも私、この世界のお金を持ってなかった!
 ときメイの中では、お金を稼ぐ方法は二つ。
 一つは、放課後や休日のアルバイトなんだけど、学校外でのアルバイトは禁止されているので、魔法学校の先生の助手とか、図書室の本の整理とかが対象になる。
 で、もう一つはダンジョンで得たアイテムや、魔物を倒して得た素材を学校で買い取ってもらうというもの。
 しかし、どっちも二年生になってからしか出来ないんだよね。

「わかった。ちょっとだけ待ってて」
「え? ルーシー様!? どちらへ!?」

 テレーズさんを部屋に残して寮の裏へ行くと、こっそり転移魔法を使って森へ。

「あ、お姉ちゃん! 今日は早いんだね」
「おぉ、ルーシー。まだ日が高いのに珍しいんやな」

 早速セシルとダニエルが話し掛けてきたけど、挨拶もそこそこに目的を話す。

「あのね。ダンジョンとか森とかで手に入りそうな、価値のある物ってないかな?」
「ん? いきなり何の話や?」
「えっと、美味しいご飯を作るのに必要な調理器があるんだけど、少しお金が足りなくて、何か売れそうな物が無いかなって思って」
「なるほど。美味しいご飯と言われたら、協力せんわけにはいかへんな。で、街で売れそうな物か……って、あるやないか。確実に高額で売れるもんが」
「ホントっ!? 何々!?」

 早速ダニエルが売れそうな物を教えてくれるらしい。
 流石、関西人? ……か、どうかは分からないけど、商売が得意なのかも。
 ワクワクしながら何が売れるのかを待っていると、すぐ側にある木を前脚で指し示す。

「コレや」
「ん? コレ……って、この木が何かの材料になるの?」
「何かの材料になるかもしれんけど、それよりも、この実は絶対に売れるやろ」
「えーっと、それってもしかして、私が植えたリンゴの事?」
「せやで。食べたら魔力が上がる木の実や。売れへん訳がないやろ」

 いやまぁ、確かにそうかもしれないけど、それは流石に売れないってば。
 こっちの世界に無い新種のリンゴで、甘くて魔力が増えるなんて、絶対にダメ!
 逆に値が付けられないくらいに価値が高くなって、皆がこぞって学園に来ちゃうってば。

「ごめん。それは大事になり過ぎちゃうからダメだと思う」
「なるほど。まぁお嬢ちゃんにも色々あるって事やな?」
「うん。せっかく言ってくれたのに、ごめんね」

 ダニエルの提案に対して謝っていると、セシルが口を開く。

「お姉ちゃん。だったらボクが、お友達にこのリンゴと何かを交換してもらって来ようか?」
「セシル。お友達が出来たの?」
「うん。実は、何度かこのお米を狙ってたんだけど、何度かお話ししているうちに、お友達になれたんだー!」
「そっか。それは良かったわね」

 思わず、お母さんみたいな気持ちでセシルの話を聞いていると、

「じゃあ、ボクちょっと行ってくるねー!」

 すっかり目的の事を忘れてしまっていた。

「ほな、ワイもそーしよか。ちょっと知り合いにあたって来るわ。多分、夜までには戻って来るかな」
「二人共、ありがとう」
「いいよー。お姉ちゃんには、お世話になってるもん。じゃあ、ボクも夜までには戻って来るねー!」

 そう言って、セシルとダニエルが森の奥へと姿を消していった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します

如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい 全くもって分からない 転生した私にはその美的感覚が分からないよ

処理中です...