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第3話 近距離転移魔法

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「あの、ユリアナさん」
『ユリアナで良いですよ。どうかしましたか?』
「あの、この世界で魔法って、どうやって使うんですか?」
『なるほど。普通は六歳までには魔法の使い方を身に付けているものですが……わかりました。では、これでどうでしょう』

 ユリアナさんがそう言うと、突然目の前に綺麗な緑髪の女性が現れた。
 物凄く驚いたけど、ユリアナさんの分身みたいなものらしい。
 そのユリアナさんが、手取り足取り丁寧に教えてくれて……うん、ダメだった。
 この世界では、上手い下手はあるものの、ほぼ全ての人が魔法を使う事が出来るらしいので、全く使えないのはマズいらしい。
 というか、明日から魔法学園の授業を受けるのに、魔法が使えないってダメだよね。

『うーん……では、こうしましょう。見た所、魔力の使い方が体得出来ていないだけで魔力自体はあるので、ルーシーさんが魔法の名前を言ってくだされば、私が代わりにその魔法を発動させましょう』
「あ、ありがとうございますっ! 凄く……凄く助かります」
『いえいえ、お気になさらず。ただ、あくまで私は発動させるだけです。その魔法の効果が、どれ程の効力になるかは、ルーシーさん次第です』

 なるほど。魔法は使えるけど、ゲームと同じようにステータスを上げたり、スキルを獲得しないと、望んだ効果が得られないって事ね。

『ちなみに、私は木属性の魔法を全て使う事が出来るのですが、火属性の魔法は一切使えません。水属性、風属性、土属性も、それなりにしか使えないので、気を付けてくださいね』
「そうなんですね……って、木属性って、何ですか!? ゲーム……こほん。この世界は、火水風土の四つではないのですか?」
『いえ。それに木属性を加えた五つです。とはいえ、木魔法の事を知っている人が少ないと思いますが』

 うん、知らない。というか、ゲームに木魔法なんて出てこなかったし。
 とりあえず、ゲームと同じ世界ではあるけど、全く同じではないみたいだから、気を付けないとね。
 あとユリアナさんとは、この世界樹の杖を介して話をしているらしいので、近くにこの杖が無いと話したり、魔法が使えなかったりするので、気を付けないと。

「ありがとうございました。暗くなって来たので、そろそろ寮に戻りますね」
『わかりました。では、寮の近くまでお送りしますね』
「えっ!? そんな事が出来るんですか!?」
『えぇ。ただ、行けるのは木がある場所だけですが。あと、今回は私がお送りするので、寮へ一瞬で戻れますが、今のルーシーさんの魔力だと、同じ魔法でここへ戻ってくるのは無理ですね。せいぜい……学園の裏の森あたりかしら』
「いえ、それでも全然凄いですよ! 木魔法、凄いです!」

 魔法学園の裏にある森は、この世界樹があるだけではなく、ダンジョンもあるのよね。
 ゲームでは三年生になってからしか入れないけど、ダンジョンはステータスの成長が凄いし、そこでしか得られないスキルもあるから早く行けるようになるのは非常に助かる。
 だけど問題もあって、ダンジョンの中は魔物が出るので、誰かに守って貰わないといけない。
 ゲームでは、攻略対象のイケメンに守ってもらいながら、イケメンを応援……もとい支援するだけで良いんだけど、果たして悪役令嬢のルーシーと一緒にダンジョンへ入ってくれる人が居るかな?

『では、そろそろいきますよ?』
「はい、お願いします」
『≪ゲート≫』

 ユリアナさんの言葉と共に、黒い洞穴みたいな物が目の前に現れる。
 その中へ入ると、一瞬で景色が変わり……周囲を見る限り、寮のすぐ裏らしい。
 目の前の部屋がルーシーの部屋なので、窓を開けておけば、そのまま部屋に戻れそうだ。

「この木から出て来た感じなのかな?」
『そうですよ』
「ユリアナさん!? あれ? こんな所まで来られるんですか?」
『えぇ。その世界樹の杖の近くか、木がある場所までは行けますから』
「じゃあ、試しにさっきのゲートっていう魔法を使ってみても良いですか?」
『はい、構いませんよ。行きたい場所を思い描いて、ゲートと言ってください。ただ、遠くにはいけませんが』

 一瞬、日本の家の近所にある公園を思い描いたけど、釘を刺されたので、裏の森の中で、ダンジョンからも世界樹からも離れ、人が来なさそうな場所を思い描き、

「≪ゲート≫」

 ユリアナに教えてもらった言葉を口にすると、目の前の木に黒い洞穴が現れた。
 中へ入ってみると、思い描いた通りの場所に出る。
 うん。入学式前に、凄い魔法が使えるようになってしまった。
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