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第8章 ヴァロン王国遠征
第252話 最速対処
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「ダメだっ! 人質なんて許可出来ないっ!」
人質になるという申し出を即座に否定すると、そのクレアが俺に近づき、耳打ちしてきた。
「……ですが、ヘンリー様。第一に、精霊力を増減させられるのはヘンリー様だけです。第二に、ヴィクトリーヌさんはヴァロン王国の方ですし、ユーリヤちゃんも論外。第三に、ドロシーもプリシラも第三王女直属特別隊の正式な隊員ではありません」
「そうかもしれんが……」
「そして、残るのは私とニーナですが、暑さに弱いニーナをこんな所でジッとさせておくと、どうなるでしょうか」
「む……万が一にも下着姿になられるのはマズいな」
「その点、私は暑さを軽減させる魔法が使えますし、何よりヘンリー様が隠されている本当のお力を知っており、すぐに解決してくださると信じております」
俺が隠している力……つまり、瞬間移動だ。
こんな魔法が存在すると知られたら、物流はおろか、国家間の混乱を招きかねない。
そのため、ヴィクトリーヌはもちろん、ドロシーやプリシラにすら存在を明かしていない魔法だ。
万が一の場合は、瞬間移動でクレアを救出する事も出来る。
そこまで考えた上で、クレアは人質を買って出てくれたのか。
「……分かった。クレア、何かあったらすぐにメッセージ魔法で連絡するんだぞ?」
「はい。畏まりました」
クレアの考えを聞き、全速力で先程の場所へ戻る事を決意した所で、
「ヘンリー隊長。念のため、クレアに防御魔法をかけても良いのです?」
「あー、そうだな。一応、頼めるか?」
「はい、お任せなのです」
人質として、ドワーフ側に残るクレアの元にプリシラが近寄り、
「プロテクト・シールド」
防御力を向上させる魔法をかけてあげていた。
「……クレア。人質なんて、良いのです?」
「……もちろん。ヘンリー様と離れるのは寂しいけど、私が人質で居る間、ヘンリー様はずっと私の事を考えてくれるもの」
「……なっ!? そ、そんな事まで計算していたのです!?」
何やらクレアとプリシラがヒソヒソと話している間、どこをどう歩いてきたかヴィクトリーヌやニーナと確認していると、
「待て。人質を預かるのは最低条件だ。この人質を置いて逃げる可能性もあるからな」
「な……なんだとっ!?」
「だから、こちらから一名同行させてもらう。そうだな……ラウラ、来なさい」
ふざけた事を言うドワーフの一人が誰かを呼び付け……誰も来ない?
「ラウラ! 呼んだらすぐに来るんだっ!」
「ヤダ。めんどくさい」
「人間共よ。……あのラウラが見張りとして行動を共にする。わかったな!?」
いや、わかったな……って、言われても、そのラウラって奴が現れないんだが。
クレアとプリシラも話を終えており、すぐにでも出発出来るというのに、この無駄な時間は一体何なんだ?
「おい。もう行っても良いか? 早く火の精霊力を取り戻したいんだろ?」
「……ラウラッ! ラウラーッ! ……さぁ人間共よ。このラウラを連れて行くんだ」
「連れて行くなら、運んで。歩きたくない」
歩きたくないだなんて、何て奴だと思っていたら、ドワーフのオッサンが、そのラウラとかいう奴を運んで来て、俺に渡す……って、物扱いかよっ!
「……って、ちょっと待った。こんな子供が監視役なのか!?」
「子供では無い! 人間族とは成長速度が違うだけで、ラウラはもう十六歳だ」
「じゅ……って、俺より年上なのかよ!」
無理矢理押し付けられたのは、ドワーフの子供……と思ったのだが、十歳くらいに見えるけど、成人なんだそうだ。
ユーリヤよりは大きいが、ルミよりは小さい。
そんな小柄なドワーフが、荷物みたいな扱いで、俺の腕の中に居る。
要は変な奴を押し付けられた訳だが、言い合いをしている時間が無駄だと悟り、ラウラという奴を小脇に挟んで駆けだす。
一先ず走っているが、何かあれば瞬間移動で……って、ちょっと待てよ。
「よし、ここならドワーフたちからも離れたし、魔物なども居ないな。全員、ここで待って居てくれ」
「師匠!? 一体、どうしたッス!?」
「いや、クレアの事もあるし、ここからは全速力で行こうと思ってさ」
「自分たちは、まだ速度を上げてもらっても大丈夫ッスよ?」
「すまない。平常時ならそれでも良いんだが、本気を出すなら俺一人の方が確実に早いんだ。……そうだよな、ニーナ」
俺の意図を理解したらしく、ニーナも同意してれくれたので、改めてこの場所で待機を指示する。
「じゃあ、行ってくる」
「あ、ヘンリー隊長! その小脇に抱えた……」
「すぐ戻るからっ!」
全力で走り、ドロシーやヴィクトリーヌたちから見えない位置まで来た所で、
「テレポート」
一瞬でサラマンダーが居た場所へと戻る。
それから、アオイに教えてもらった火の精霊力を強める魔法を使用すると、
「お、サラマンダーが赤いトカゲに戻ったな……若干、元の状態よりも色が濃い気もするけど、まぁこれくらいは大丈夫だろ」
サラマンダーがうじゃうじゃと湧いていた、元の状態に戻った……ように思う。
なので、すぐさま元の場所に戻ろうして、
「ねぇ。テレポートって何? どうして無詠唱で魔法が使えるの?」
小脇に子供みたいなドワーフ、ラウラを抱えているのをすっかり忘れていた。
人質になるという申し出を即座に否定すると、そのクレアが俺に近づき、耳打ちしてきた。
「……ですが、ヘンリー様。第一に、精霊力を増減させられるのはヘンリー様だけです。第二に、ヴィクトリーヌさんはヴァロン王国の方ですし、ユーリヤちゃんも論外。第三に、ドロシーもプリシラも第三王女直属特別隊の正式な隊員ではありません」
「そうかもしれんが……」
「そして、残るのは私とニーナですが、暑さに弱いニーナをこんな所でジッとさせておくと、どうなるでしょうか」
「む……万が一にも下着姿になられるのはマズいな」
「その点、私は暑さを軽減させる魔法が使えますし、何よりヘンリー様が隠されている本当のお力を知っており、すぐに解決してくださると信じております」
俺が隠している力……つまり、瞬間移動だ。
こんな魔法が存在すると知られたら、物流はおろか、国家間の混乱を招きかねない。
そのため、ヴィクトリーヌはもちろん、ドロシーやプリシラにすら存在を明かしていない魔法だ。
万が一の場合は、瞬間移動でクレアを救出する事も出来る。
そこまで考えた上で、クレアは人質を買って出てくれたのか。
「……分かった。クレア、何かあったらすぐにメッセージ魔法で連絡するんだぞ?」
「はい。畏まりました」
クレアの考えを聞き、全速力で先程の場所へ戻る事を決意した所で、
「ヘンリー隊長。念のため、クレアに防御魔法をかけても良いのです?」
「あー、そうだな。一応、頼めるか?」
「はい、お任せなのです」
人質として、ドワーフ側に残るクレアの元にプリシラが近寄り、
「プロテクト・シールド」
防御力を向上させる魔法をかけてあげていた。
「……クレア。人質なんて、良いのです?」
「……もちろん。ヘンリー様と離れるのは寂しいけど、私が人質で居る間、ヘンリー様はずっと私の事を考えてくれるもの」
「……なっ!? そ、そんな事まで計算していたのです!?」
何やらクレアとプリシラがヒソヒソと話している間、どこをどう歩いてきたかヴィクトリーヌやニーナと確認していると、
「待て。人質を預かるのは最低条件だ。この人質を置いて逃げる可能性もあるからな」
「な……なんだとっ!?」
「だから、こちらから一名同行させてもらう。そうだな……ラウラ、来なさい」
ふざけた事を言うドワーフの一人が誰かを呼び付け……誰も来ない?
「ラウラ! 呼んだらすぐに来るんだっ!」
「ヤダ。めんどくさい」
「人間共よ。……あのラウラが見張りとして行動を共にする。わかったな!?」
いや、わかったな……って、言われても、そのラウラって奴が現れないんだが。
クレアとプリシラも話を終えており、すぐにでも出発出来るというのに、この無駄な時間は一体何なんだ?
「おい。もう行っても良いか? 早く火の精霊力を取り戻したいんだろ?」
「……ラウラッ! ラウラーッ! ……さぁ人間共よ。このラウラを連れて行くんだ」
「連れて行くなら、運んで。歩きたくない」
歩きたくないだなんて、何て奴だと思っていたら、ドワーフのオッサンが、そのラウラとかいう奴を運んで来て、俺に渡す……って、物扱いかよっ!
「……って、ちょっと待った。こんな子供が監視役なのか!?」
「子供では無い! 人間族とは成長速度が違うだけで、ラウラはもう十六歳だ」
「じゅ……って、俺より年上なのかよ!」
無理矢理押し付けられたのは、ドワーフの子供……と思ったのだが、十歳くらいに見えるけど、成人なんだそうだ。
ユーリヤよりは大きいが、ルミよりは小さい。
そんな小柄なドワーフが、荷物みたいな扱いで、俺の腕の中に居る。
要は変な奴を押し付けられた訳だが、言い合いをしている時間が無駄だと悟り、ラウラという奴を小脇に挟んで駆けだす。
一先ず走っているが、何かあれば瞬間移動で……って、ちょっと待てよ。
「よし、ここならドワーフたちからも離れたし、魔物なども居ないな。全員、ここで待って居てくれ」
「師匠!? 一体、どうしたッス!?」
「いや、クレアの事もあるし、ここからは全速力で行こうと思ってさ」
「自分たちは、まだ速度を上げてもらっても大丈夫ッスよ?」
「すまない。平常時ならそれでも良いんだが、本気を出すなら俺一人の方が確実に早いんだ。……そうだよな、ニーナ」
俺の意図を理解したらしく、ニーナも同意してれくれたので、改めてこの場所で待機を指示する。
「じゃあ、行ってくる」
「あ、ヘンリー隊長! その小脇に抱えた……」
「すぐ戻るからっ!」
全力で走り、ドロシーやヴィクトリーヌたちから見えない位置まで来た所で、
「テレポート」
一瞬でサラマンダーが居た場所へと戻る。
それから、アオイに教えてもらった火の精霊力を強める魔法を使用すると、
「お、サラマンダーが赤いトカゲに戻ったな……若干、元の状態よりも色が濃い気もするけど、まぁこれくらいは大丈夫だろ」
サラマンダーがうじゃうじゃと湧いていた、元の状態に戻った……ように思う。
なので、すぐさま元の場所に戻ろうして、
「ねぇ。テレポートって何? どうして無詠唱で魔法が使えるの?」
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