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第8章 ヴァロン王国遠征

第243話 ヴァロン王国第五騎士隊副隊長

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 オークを倒した後は、特に何事も起こらず順調に進んで行く。
 途中で休憩を取りつつ、目的地となるピュイード火山のすぐ傍、クレアモントの街へと到着した。
 既に日が落ちかけていたので、そのまま宿に泊まり、今朝……正にこれから、いよいよピュイード火山――ドワーフの国へ行く事になる。
 ……聖銀を見つけてから、ここまで本当に長かったな。

『そうですね。聖銀を見つけてから、いろいろありましたからね』

 聖銀を見つけた後、ユーリヤがドラゴンから幼女になって、城下町を救い、エリーのお母さんを探しだして、領主になって……あり過ぎじゃね?
 聖銀を持ち帰ってから、すぐに対魔族の為の武器に加工して欲しいって言ったのに、鍛冶師ギルドが断った結果、俺たちが自分でドワーフを探す事になったんだ。
 鍛冶師ギルドめ。もしも会う事があったら……物凄くお礼を言わせてもらわなければ。
 このドワーフ探しの旅に出なければ、ドロシーのおっぱい触り放題なんて楽しい事にはならなかったしね。
 ありがとう、鍛冶師ギルド!

「ひゃぁっ! 師匠ぉ~。暇つぶしに自分の胸を触るのはやめて欲しいッス」
「いや、暇つぶしとかじゃないから。ドロシーがボーっと気を抜いていたから、触っただけだ」
「もぉっ、街中はダメって言ったッスよぉ~」

 そうは言いながらも、ドロシーが逃げようとしないので、ユーリヤに見えないようにしながら、そのままムニュムニュと大きな胸の感触を楽しむ。
 というのも、俺たちは泊まった宿の一階にあるカフェでお茶を飲みながら、かれこれ一時間近くここに居る。
 何もする事が無いので、走馬灯かよってくらいに、聖銀を見つけてからの事を思い出してみたり、隣に座るドロシーのおっぱいを揉んでみたり、その行為から目を逸らす為にユーリヤと一緒にお絵描きをしてみたり……だぁっ! もう無理だっ!

「もう、ジャンは置いて行っても良いかな? 良いよね?」
「ヘンリー隊長。気持ちは分かるのです。だけど、流石に監視役を放置するのはマズイのです」
「だけど約束の時間から、かなり過ぎてるぜ? 今回は同じ宿に泊まっていないから、どこに宿泊しているのかも分からないしさ」

 そう、ここまで一緒に来たヴァロン王国の新米兵士、ジャンが待ち合わせ場所に姿を見せない。
 今まで寝坊なんてした事もなく、ちゃんと時間を守る男だったのに。
 左手でドロシーの胸を、右手で上手に絵が描けたユーリヤの頭を撫でていると、

「……我れはヴァロン王国第五騎士隊副隊長、ヴィクトリーヌ=フォンテーヌである。ブライタニア王国より来たヘンリー=フォーサイス殿が居たら、名乗り出よ」

 凛々しい女性がカフェに入ってくると同時に、俺の名前を呼んできた。
 何だろう。物凄く関わりたくないんだけど、国際問題になっても困るので、立ち上がる。

「あー、俺がヘンリーだけど。何の用だ?」
「お主がブライタニア王国のヘンリー殿か。ふむ……胸の大きな女が三人と、普通の胸の女が一人。それからロ……幼女が一人か。奴の報告通りか」

 今、ロ……って、ユーリヤの事をなんて言おうとした!?
 というか、普通の胸って言ったけど、あんたもクレアと同じCランクだからな?
 鎧越しでも、俺には分かるんだぞ!?

「で、だから何の用があるんだよ」
「うむ。情けない話ではあるが、昨日までお主たちと行動を共にしていた、我が国の兵士――ジャンという名前だったか――が、今朝になって突然兵士を辞めると言い出してな。急に監視役として割り当てられる者もおらず、副隊長である我が直々に来たという訳だ」
「え? ジャン……兵士辞めちゃったの!?」
「あぁ。詳しい事は聞いておらぬが、ブライタニア王国に移住するなどと言っていたな」

 えぇー。どうしてまた急に。
 しかも、俺たちの国に住むって、一体どうしたというのだろうか。
 一言声を掛けてくれれば相談に乗ったのに。

「とりあえず、ジャンの代わりにアンタが監視役としてついてくるという事か?」
「その通りだ。資料ではピュイード火山に行くとあるが、ここからだと徒歩だな。表に停めていた馬を、預けてくる。暫し待っているが良い」

 一方的にそう言うと、ヴィクトリーヌがカフェを出て行き、ものの数分で戻ってきた。

「よし、行くぞ!」

 そして、一言だけ告げて再び店を出て行く。
 随分と慌ただしい女性だな。
 とはいえ、待って居るだけというのも疲れるし、早くドワーフの国へ行きたかったのは事実だ。
 ユーリヤを抱っこし、ヴィクトリーヌについて街の中を歩いて行く。

「では、ここからは山登りとなる。遅れぬようについて来い」

 そう言って、ヴィクトリーヌがスタスタと山道を登ろうとする。

「ちょっと待った。どうして、上に登るんだ?」
「どうして……って、お主らはピュイード火山を見に来たのであろう。観光ならば火口ではないのか?」
「観光!? いや、俺たちはブライタニア王国の騎士として、任務で来ているんだが」
「ふむ。騎士が火山に来る任務とは何だね」
「何だね……って、俺たちはドワーフの国へ行きたいのだが」
「な、なんだとっ!? それは本気で行っているのかっ!?」

 嘘偽りなく目的を伝えると、何故かヴィクトリーヌが怪訝な顔で俺を見てきた。
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