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第8章 ヴァロン王国遠征

第236話 今日の晩御飯

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 何故か若干落ち込んでしまったプリシラが自分の馬に戻り、一方で嬉しそうなドロシーが俺の馬に戻ってきた。

「師匠! 早く胸を触って欲しいッス!」
「ドロシーさん。ボクは事情を知っているけど、今の発言は変態みたいだよ?」
「う……ち、違うッス! 自分は師匠に特訓して欲しいだけであって、変態じゃないッス!」
「分かってるけど、街や村の中では気を付けてね。……まぁボクなんて、騎士団の訓練場でその手の特訓をしてたんだけどね」
「え……あの、男性騎士が沢山居る訓練場ッスか!? 流石にそれは恥ずかしいというか、そういう意味では、この人の居ない街道での特訓は大正解な気がしてきたッス」

 ニーナにおっぱいを触る特訓? そんなの……あ、うん。したね。
 実践訓練だって言いながら、模擬剣での試合中に隙を見つける度に、おっぱい触ったわ。
 今度、ドロシーにもやってみよう。
 そんな事を考えていると、

「ヘンリー隊長。ここがヴァロン王国の国境に一番近い街なのです。この先は国境まで街や村が無く、最後の補給となりますので、必要と思われる物を補充するのです」

 落ち込みながらも仕事はきっちり行うプリシラから声が掛かった。
 昼過ぎという中途半端な時刻であり、まだまだ進めるので、ここで宿を取るのは時間的に勿体無い。
 今夜はこの旅で初の野営となるので、夕食を買っておこうか。

「ユーリヤ。晩御飯は何が食べたい?」
「んー、にーにとおんなじのー!」
「お、おぅ。そうだな。じゃあ、クレアは?」

 クレアに聞いてみると、

「私はヘンリー様が望む物なら、何でもご用意いたしますが」

 ちょっと期待していたのとは違う答えが返ってきてしまった。

「……じゃあ、ニーナは?」
「ボク? んー、パスタかなー」
「よし。じゃあ、今晩はパスタパーティにしよう」

 早速、露店でパスタを探そうとして、

「ちょ、ちょっと待つのです! ヘンリー隊長! どうして食料の補充が、家で作る夕食のノリなのです? 火は起こせるとしても、調理器具などが何も無いのです」

 すぐさまプリシラに止められてしまった。
 あー、空間収納の話をしてないもんなー。
 やっぱり話しておこうか。
 ドロシーは、そもそも魔法を使わないし、プリシラは神聖魔法の使い手だから、時空魔法を教えろなんて話にはならない……と思いたい。

「あのな、プリシラ。今まで黙っていたけど、実は俺……空間収納魔法っていうのが使えるんだ。だから、今ここでアツアツのパスタを買ってしまっておけば、夕食にそのまま食べられるんだ」
「ヘンリー隊長。何を仰っているのです? 空間収納魔法――時空魔法というのは、神話の中に出てくる話であって、魔王を倒した勇者様のお仲間、賢者様のみが使えるという伝説級の魔法なのです。いくらヘンリー隊長が魔族を倒せる程強いと言っても、剣士であられますし、そもそもオークキングとの戦いで土の精霊魔法を使っていたのです。魔法剣士というクラスがレアとは言えども……」
「ディメンション・ポケット」

 プリシラが色々言っているので、やってみせた方が早いと思い、目の前の空間に現れた亀裂に手を伸ばす。
 そして、手に触れた適当な物を掴み、プリシラに見せてみる。

「ほら。これが空間収納魔法だ」
「え……えぇぇっ!? ヘ、ヘンリー隊長っ!? あ……ま、またまたー、何かのトリックなのです。こんな小さな布切れですし、こっそり隠し持っていたのです……って、あら? これは……」
「ちょ、ちょっと待ってー! そ、それはボクの下着だよっ!」

 あー、出発前にノーマから預かった皆の着替えの中に手を突っ込んでしまったのかな?
 しかし青と白の縞々パンツとは、ニーナもなかなかやるじゃないか。
 是非、これを履いている所を見せて欲しい。
 だが、電光石火の如く、ニーナがパンツを回収すると、

「あはは、パンツ、パンツー!」

 何故かユーリヤがツボにハマったらしく、ずっと笑っている。
 ……楽しそうだから、まぁ良いか。

「プリシラ。最初に会った時、俺たちの荷物が少なすぎるって言っていただろ? これが、その答えだ」
「ほ、本当なのです? で、でも、実際に昨日は土の精霊魔法を使っていたのです。剣が主体の戦闘系クラスのヘンリー隊長に、異なる種類の魔法が複数使えるとは思えないのです」
「まぁ剣が主体なのは認めるけど、そもそも俺は魔法系クラスだからな? ついでに言っておくと、俺のクラスは召喚士だ」

 俺のクラスを告げると、少しの沈黙があり、

『えぇぇぇーっ!?』

 プリシラとドロシーが大声を上げる。

「しょ、召喚士って、あの召喚士なのです!?」
「おそらく、その召喚士だ。というか、魔法大会の時も、召喚士だって紹介されていたんだが」

 まぁあの時は、魔族が出て来てバタバタしていたし、覚えてないか。

「ちょ、ちょっと待って欲しいッス。師匠は魔法系クラスなのに、剣だけでオークキングを倒したッスか!?」
「あぁ。というか、アレは本当に大した事がないモンスターだぞ?」
「そ、そうッスか。何だか師匠と話をしていると、自分も盾以外の武器が使えそうな気がしてくるッス」
「そういえばドロシーは盾以外の物を持っている所を見た事が無いんだが、武器は何を使っているんだ?」
「え? 自分は武器も盾ッス。盾で全てを吹き飛ばすッス」
「そ、そうか。一通りの武器は使えるから、何か興味のある武器があったら相談に乗るぞ? とはいえ、先に気配を読む訓練を終わらせるのが先だが」
「そうッスね……って、し、師匠っ! 街中で触るのは……ぁぅ」

 ドロシーが油断しまくっていたので胸を触ったら、またもやプリシラからジト目を向けられてしまった。
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