上 下
203 / 343
第7章 マックート村の新領主

第203話 イケメン限定のアレ

しおりを挟む
 ソフィアが下着カタログをどこかへ仕舞に行き、

「……もう、ロティーったらっ!」

 戻ってくるなり口を尖らせる。

「まぁまぁ。可愛い妹のイタズラだし、許してやれよ。シャーロットちゃんの事をロティーって愛称で呼ぶくらい、姉妹で仲が良いんだろ?」
「むー。まぁ仲は悪くはないと思うけどねー。ただ、ロティーはイタズラが過ぎるのよね」
「それだけお姉ちゃんに構って貰いたいって事だろ? 俺は一人っ子だったから、むしろ羨ましいけどな」

 今はユーリヤのおかげで、かなり兄の気分を味わえているけれど、事実として俺は妹が欲しかったしね。
 ただ、最近は兄というより父親気分に近い物があるけど。

「じゃあ、そろそろ行くか」
「そうね。けど、屋敷の外までは普通に行くわよ」
「分かってるよ。言っておくけど、俺が瞬間移動出来る事を知っているのは、ほんの僅かな限られた人だけなんだからな」
「そうなの? ……でも、流石に王家の方々は知っているでしょ?」
「まさか。誰にも教えてないよ」
「え……じゃあ、アンタはウチにフローレンス様にも教えていない秘密を教えてくれたの!?」
「あぁ。だから、他人には言っちゃダメだからな? 俺とソフィアの秘密だぞ」
「うんっ! 絶対、他人に言わないわっ!」

 何故だろう。瞬間移動を言いふらすなよって口止めしたら、ソフィアがパァッと笑顔になった。
 これは……まさか、俺を脅すネタが出来たと喜んでいるって事か!?
 しまった! いつも瞬間移動を無詠唱で行っているから、当然ソフィアも俺が無詠唱で魔法を使える事を知っている。
 まずい。瞬間移動も大概だけど、無詠唱魔法は世間に絶対バレてはいけないというのに。

「どうしたの? ウチの顔をじっと見つめたりして」

 考えろ……考えるんだ。
 ソフィアに無詠唱魔法をバラされない為に、どうするべきか。
 俺もソフィアの秘密を握るか?
 だけどソフィアの秘密なんて、何がある?
 俺が知っているのは、せいぜい白いパンツを履いている事が多いとか、胸が小さいとか、恋人の為に毎週ランジェリーショップに行っているとかしかない。
 無詠唱魔法とランジェリーショップなんて、全然釣り合わないぞっ!

「ちょ、ちょっと。本当にどうしたのよ。そんなに見つめられたら、は……恥ずかしいじゃない」

 恥ずかしい……そうだ! ソフィアに恥ずかしい事をして、それをバラされたくなければって脅すのはどうだ?
 だけど、戦争を引き起こしかねない無詠唱魔法と同等の恥ずかしい事……あるか? そんな事。
 ソフィアの胸を揉みしだいて、「お前の胸が全く揉み甲斐が無い事をバラされたくなければ、無詠唱魔法の事は喋るな……」無理だぁぁぁっ!
 ソフィアの胸に揉み甲斐が無いなんて、そんなの触らなくても見ただけで分かる。
 だったら、物的証拠を抑える作戦……今ここでソフィアのパンツを無理矢理脱がして、「お前のパンツを世間に晒されたくなければ……」って、これじゃあ俺が投獄されるだけだっ!
 しかも、普段のソフィアはやたらとスカートが短いのに、こんな時に限って俺自らズボンに着替えさせてしまった。
 やっぱり恥ずかしい路線は無しだ。
 やはり、最後に残るのは力! 「痛い目に遭いたくなければ、無詠唱魔法の事は喋るな!」よし、これだなっ!

「ソフィア」
「な、何? そんな真剣な顔をして……」

 ソフィアが俺から後ずさるようにして、一歩後ろへ下がったので、逃げられないようにと俺も一歩詰める。
 ソフィアが俺の顔から目をそらさず、ジリジリと移動し、壁にぶつかった。
 すかさず、ソフィアの顔の横へ右腕を伸ばし、ドンっと壁に手をつけ、逃げ場を無くす。

「ソフィア。もう逃がさないぞ」
「……あ、焦らないで」
「焦ってなんかいないよ。もうソフィアに逃げ場は無いんだからな」
「わ、わかったわ。だけど、アンタがこんな強引に……」
「……黙れよ」

 よし、ごちゃごちゃ何か言おうとしていたソフィアが黙った。
 後は、出来るだけ怖そうに威嚇してやれば……って、あれ? どうしてソフィアが怯えずに、何かを期待するかのような目で俺を見つめているんだ?
 これだと怖さが足りないのか?
 神聖魔法で身体強化を行って、壁の一つや二つ壊した方が良いのだろうか。
 いや、待て待て。流石に貴族の家だ。後で弁償する時に、飛んでも無い額になってしまう。
 というか、これから父さんに統治の話をしてもらうっていうのに、俺は何をしているんだ?
 思考が暴走していたと気付き、冷静になった所で、

「ソフィアお姉様。随分と長く部屋に居られますが、ヘンリー様と何をぉぉぉっ!?」
「ロ、ロティー!? ち、違うのっ! これは違うんだからーっ!」

 シャーロットちゃんの声が聞こえてきたかと思うと、俺と壁の間でじっとしていたソフィアが凄い早さで部屋を出て行ってしまった。

「あの、お義兄様。ごめんなさい。あと、ロティーが言うのもなんだけど、ソフィアお姉様を追いかけた方が良いんじゃないかな?」
「そ、そうだな。そうするよ。ユーリヤ、おいで」
「えっと……今度はゲストルームじゃなくて、ソフィアお姉様のお部屋でどうぞ」

 シャーロットちゃんによく分からない事を言われながらも、全力疾走するソフィアをユーリヤを抱っこした状態で追いかけ……門の外でようやく追いつく事が出来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

処理中です...