上 下
195 / 343
第7章 マックート村の新領主

第195話 男の夢を叶えるマジックアイテム

しおりを挟む
「全員、食堂へ集まれっ!」

 思っていたよりも早く行動に移った父親から女の子たちを守るべく、全員――十人の女の子を集めた。

「主様。二階を捜索いたしましたが、父上様の姿は見つかりませんでした」
「貴方。一階には居ないみたいよ」
「お兄さん。三階も居ないと思うよ」

 各階の捜索にあたってくれた、ジェーン、アタランテ、マーガレットから捜索失敗の報告が入るが、これは仕方が無いだろう。
 父さんは市販されていないマジックアイテムを自ら作り出す。
 しかも、自分の興味がある事に対しては、寝る時間すら惜しんで力を注ぐという厄介極まりないタイプだ。
 まだ何を作ったのかは分からないが、今日一日で、隠れて女の子に何かをするマジックアイテムを作り上げたのだろう。

「これから、俺とユーリヤで父さんを探してくる。他の皆は全員食堂から出ないように。あと、この食堂の警護はジェーンとアタランテ、そしてニーナに任せる。尚、ノーマとメリッサを最優先で守るように」
「ねぇ、ヘンリー。どうして、その二人が最優先で守られるのー? イロナちゃんも守ってよー」
「いや、イロナは大丈夫だ。というか、ジェーンやニーナ、マーガレットも大丈夫だと思う」
「うーん。イロナちゃんを含めた四人とー、最重要で守るっていう二人と、ヘンリーが自ら守るユーリヤちゃんの違いは……あー、そういう事ー?」
「……そういう事だ」

 イロナは意外と察しが良く、俺が言いたい事に気付いたらしい。
 父さんに狙われるのは……貧乳の女の子。だが本人を前にして、そんな事は絶対に言えない。

「何かあれば、マーガレットがメッセージ魔法で俺に連絡してくれ。じゃあ、行ってくる」

 ユーリヤを抱っこして、食堂を出る。
 正直、女の子の安全性を考えれば、ワープ・ドアでどこかの宿へ行くべきなのだが、樹の精霊であるワンダは、森に囲まれたこの屋敷から離れない方が良い気がするんだよな。
 とはいえ、ワンダだけを残してワープ・ドアっていうのも、ワンダに悪いし、他の女の子たちが何か勘ぐる事になっても嫌だ。
 だから、最善は父さんをしっかり教育する事なのだが、どうしたものか。

(アオイ。俺の父親がどこに潜んで居るか、分かるか?)
『いえ。おそらく何らかのマジックアイテムを用いているのでしょう。ターゲットの気配と魔力が、共に感知出来ない状態です』
(くっ……あのバカ親父め! 変な方向にだけ力を発揮しやがって)

 確か、父親が昔作って有名になったマジックアイテムが、迷子探し装置だったな。
 予め対象となる子供の魔力パターンを覚えさせておけば、有る程度離れても居場所が分かるという代物で、かつて無い斬新なマジックアイテムの発想だと評価されたらしい。
 だが、何故か対象に設定出来るのが、十歳未満の女児だけという謎仕様だったらしいが……どうして、それをもっと一般的に出来ないんだっ!
 って、待てよ。魔力パターンと言えば……

「ユーリヤ。俺の父親がどこに居るか、魔力を感知して調べられる?」
「わかるよー。あっちー」

 思った通り、ドラゴン幼女のユーリヤの魔力をもってすれば、父さんがマジックアイテムで細工した魔力も感知出来るようだ。
 相変わらずユーリヤは凄いのだが、俺から言わないとやってくれないんだよね。
 一先ず、ユーリヤが指さす方向へ歩いて行くと、風呂場へ着いた。
 風呂場はアタランテが調べてくれているはずだし、見渡した所で人が隠れているようには見えない。というか、隠れられるような場所が無い。

「……って、ちょっと待った! ユーリヤ、今は服を脱いじゃダメだ」
「どーしてー? にーに。おふろなのに、はだかにならないのー?」
「とりあえず、そのパンツに掛けた手を戻そうな。また後で、一緒に入るから」
「じゃあ、にーに。パンツはかせてー」

 まぁ確かに、俺が抱っこしたままの状態で、脱ぎかけたパンツを戻すのは難しいか。
 だが、どこに父親が潜んでいるか分からないので、ユーリヤを床に降ろさず、俺の腕の中でモゾモゾとパンツを履き直させる。

「ユーリヤ。父さんはどこに居る?」
「えーっとねー。そこー」

 ユーリヤが広い浴室の中の、大きな浴槽の隅を指し示す。
 だが、透明な湯から湯気が立ち上るだけで、そこには誰も居ない。
 しかし、マジックアイテムの効果も分からないし、何よりドラゴンのユーリヤが言っているんだ。
 何かあるはずだ……と思い、目を凝らして見ていると、水面に細い茶柱みたいな、竹みたいな筒だけが見える。
 それが何かは分からないが、一先ず近くにあった手桶を手にすると、お湯を汲み、その筒の中へ注いでみた。

「……ぐぼべっ! こ、殺す気かっ!」
「ほほぅ。お湯の中に居ると姿が見えないのに、お湯から出ると姿が見えると。その顔に着けているマスクみたいなアイテムの効果か?」
「くっ……バレたかっ! だがしかし、ヘンリーよ。このマジックアイテムは凄いと思わんか? 装着している者の屈折率を変化させ、水中では絶対に目視出来んという優れ物だ。これを使えば、女の子たちのお風呂が覗き放題だ! 正に男の夢を叶えるアイテムだっ!」
「へぇー。で、父さん。今の話……母さんに言っても良いかな?」
「お、お、お前、何て事をっ! 私を殺す気かっ! それはダメだっ! 絶対にダメだぞっ!」
「とりあえず、父さんは三階と浴室は立ち入り禁止な。約束を破ったら、母さんに言いつけるから」
「そ、そんなぁぁぁっ!」

 物凄く悲しそうな全裸の父さんを蹴り倒し、今後は具現化魔法でマジックアイテム開発小屋の中に作った簡易風呂で入浴してもらう事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...