上 下
184 / 343
第7章 マックート村の新領主

第184話 メイドさんごっこ

しおりを挟む
「主様?」
「にーに、どうしたのー?」

 ジェーンに続き、破られた扉からユーリヤが入ってきた。
 よくよく話を聞くと、ユーリヤがナタリーの手から美味しそうな匂いがすると言い、世話をしている牛の乳絞りをしている最中だったと。
 で、ユーリヤがやってみたいと言ったので、じゃあ体験してみようという話になったのだが、例によって俺がアオイと話をしていて聞いておらず、乳搾りをナタリーの胸を揉ませてもらえると勘違いしてしまった事が原因だった。

「……普通、そんな勘違いをしますか!?」
「いや、本当に申し訳ない」
「お子さんの前なので、これ以上は言いませんが……奥様。私より遥かに大きな胸なのですから、ご主人が変な事を考えないように、毎晩満足するまで触らせてあげるべきかと」

 怒っているナタリーの矛先が、俺だけでなくジェーンにまで向いてしまった。
 だけど、ジェーンは妻とかじゃないんだよ。
 とはいえ、ナタリーをこれ以上怒らせる訳にはいかないので、余計な事は言わずに黙っておくけどさ。

「畏まりました。主様については、私が責任を持って対応させていただきます」

 空気の読める聖女ジェーンが丁寧に対応し、併せて俺も頭を下げ、逃げるようにして冒険者ギルドから脱出した。
 ナタリーには、時間を置いて改めて謝りに行く事にしよう。
 そんな事を考えていると、

「にーに、うしさんのミルクはー?」
「えーっと、また別の所でも出来ると思うから、ちょっとだけ待っててね」
「はーい」

 乳搾りを楽しみにしていたユーリヤが不思議そうに小首を傾げてきたけれど、俺の言葉を素直に聞いてくれた。
 なので、先程回った村人の家の内、酪農をしていると言っていた家へ瞬間移動し、金貨を一枚渡して、ユーリヤが満足するまで乳搾りを体験させてもらう事に。
 ちなみに、乳搾りが終わるまで、ジェーンが一言も喋ってくれなかったけど、その内いつも通りに戻ってくれると期待しておく。……戻ってくれるよね?
 少しだけ不安になりつつ、一旦村の確認を終える事にした。

「ただいまー」
「ただいま戻りました」

 瞬間移動で屋敷へ戻ってくると、

「おかえりなさいませ。ご主人様」
「お、おかえりなさいませ……ご、ご主人様」
「おかえりなさい。旦那様っ!」

 メイド見習いのノーマと、メイド服姿になったアタランテとマーガレットに出迎えられる。

「……ノーマはともかく、二人は何をしているんだ?」
「え? ダメかしら。メイドさんごっこなのだけど」
「あれー? お兄さんは絶対に喜ぶと思ったんだけどなー」

 まぁメイド服は嫌いじゃないよ?
 けど真昼間から、しかも今日会ったばかりのノーマの前ではやめて欲しかった。
 お前ら、何やってんだ? と言わんばかりに、ノーマが無表情になっているしさ。
 ……いや、メイドたるもの主が何をしていようと、影響されずに仕事をこなす事が求められるから、無表情で無関心が正解なのか? よく分からんが。
 ちなみに、メイド服対決では猫耳メイドになっているアタランテの勝ちだと思う。面倒臭い事なりそうだから言わないけど。

「ふふん。ご主人様が私の事ばかり見ているから、私の勝ちね」
「くっ……確かに。だったら、次は実技勝負よっ!」
「望む所よ。これで勝ったら、私があの部屋を貰うんだから」

 あれ? 俺、アタランテの方が良いって口にしていないよね?
 どうして二人は分かったんだ!?

『ヘンリーさん。目は口ほどに物を言うんですってば』

 アオイに突っ込まれるも、その通り過ぎて何も言い返せずに居ると、

「ご主人様。お食事の準備が出来ておりますが、いかがなさいますか?」

 ノーマが我関せずという感じで話し掛けてきた。

「じゃあ、皆を集めて昼食にしよう。話しておきたい事もあるし」
「ふふん。次の勝負内容が決まったわね」
「えぇ。給仕対決ねっ! 次は絶対に負けないっ!」

 アタランテとマーガレットが猛ダッシュでどこかへ走り去って行ったが、メイドさんって廊下を走って良いのだろうか。
 まぁ細かい事は知らないけれど、全員で食事をする事にした。

……

「あの……お口に合いますでしょうか?」
「合う合う! 物凄く美味しい! この料理が毎日食べられるの!?」
「は、はい。ご主人様が滞在中は、皆様のお食事はご用意させていただきますので」

 料理人見習いのメリッサが作ってくれた昼食に、皆で舌鼓を打ち、とにかく食べる。
 ちなみに、ワンダ、ノーマ、メリッサの三人は、「下働きの者が主人と一緒に食事なんて……」などと言って、後で昼食を取ると言っていたので、俺の権限でそういうのは禁止にしておいた。
 ご飯は皆で食べた方が美味しいし、アタランテやマーガレットも給仕を手伝ってくれるしね。
 という訳で、新メンバー三人を含め、全員が食堂に居る中で、村を回った俺の考えを皆に伝える。

「皆、聞いてくれ。一つ分かった事がある。……やっぱり何をすれば良いか分からないから、とりあえず統治に詳しそうな英霊を召喚する」

 うん。素人が情報収集してみたけれど、結局の所、何にも分からなかったよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

処理中です...