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第6章 漆黒の召喚士
第161話 前抱っこダッシュ
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昼食を終え、ルミと共に再び西の街道へと戻ってきた。
「さてと。午前中は成果が出なかったから、午後は移動に専念しようと思う」
「お兄ちゃん、成果って? 盗賊と戦って少し時間は使っちゃったけど、ちゃんと進んで来たよ?」
「いや、ちょっと思うところがあってな。とりあえず、ここからは走るぞ」
ルミをエサにしてもロリコン魔族が出てこなかったので、盗賊などを無視して、とにかく黒い森へ行こうと思う。
「アジリティ・ブースト」
「神聖魔法? お兄ちゃん、何をする気なの?」
「ルミ。俺がルミをおんぶして走るから、背中に乗ってくれ」
「おんぶ? さっきルミがおんぶしてって言った時は断ったのに? それに、ルミを背負いながら走れるの?」
「意味も無くおんぶするのは変だろ? このおんぶは、ちゃんと意味がある。多少走りにくくても、俺がルミを背負った方が速いんだ」
「……よくわからないけど、お兄ちゃんがルミをおんぶしてくれるなら、それで良いよ」
そう言って、しゃがみこんだ俺の背中に、ルミが身体を預けてくる。
流石にユーリヤより大きいが、走れなくはなさそうだ。
……ルミが俺の背中に、平らな胸を押し付けてきているように思えるが、気のせいだという事にしておこう。
「じゃあ、走るぞ。しっかりつかまってるんだぞ?」
「はーい。ルミはお兄ちゃんにピッタリくっついてまーす!」
ルミが頷いたのを確認し、先ずは六割くらいの速さで走り出すと、
「す、ストップ! ストップー! 無理無理無理無理! 落ちるっ! お兄ちゃん、落ちちゃうよっ!」
すぐにルミの腕が離れそうになり、慌てて足を止める。
「お、お兄ちゃん! 今のはなんなの!? どういう魔法!?」
「ただの身体強化魔法だが?」
「強化されすぎだよっ! あんなの、しがみついていられないよっ!」
ルミの腕力では、おんぶで走るのは無理か。
だったらユーリヤみたく抱っこするしかないな。
「ルミ、仕方が無い。抱っこにしよう」
「え? 抱っこ!? お、お兄ちゃんが……ルミを?」
「あぁ。しっかり捕まっているんだぞ」
「うんっ! ……って、ちょっと、お兄ちゃん!? お姫様抱っことかじゃないの!?」
「お姫様抱っこしながら走れるかよ」
正面から抱っこしようとしたら、ルミが恥ずかしそうに一歩下がる。
「え……さ、流石に正面からお兄ちゃんに抱っこしてもらうのは恥ずかしいよ」
「文句言うなって。じゃあ、もう一度おんぶの状態で走るか? 早く黒い森に行きたいから、普通に歩いたりするのは無しだぞ」
「うぅ……だ、抱っこでお願いします」
顔を真っ赤に染めたルミを正面から抱きしめ、持ち上げる。
「ルミ。足を閉じて居たら走れないから、開いてくれ」
「――ッ! お、お兄ちゃん。こ、これは……き、既成事実?」
「何を言っているんだ? じゃあ、行くぞ」
ユーリヤと同じように、ルミが両腕を俺の首に回してきたので、一気に加速する。
「お、お兄ちゃ……お、お腹……振動で……」
「我慢しろ。俺が身体を支えているから落ちる心配はない」
「お、落ちないけど……ルミが……へ、変に……」
耳元でルミが辛そうに声を上げる。
うーん。ユーリヤはこの状態で笑っていたのだが、ルミが振動に弱いのか、それともユーリヤが強いのか。
しがみ付いて居るから顔は見えないが、俺が支えるルミの太ももが、ほのかに汗ばんでいる気がする。
「お、お兄ちゃーんっ!」
暫く走っていると、突然ルミがギュッと腕に力を込め、大きな声と共にグッタリして、静かになった。
気を失った……訳では無さそうなので、静かなうちに加速してしまおう。
「い、今は……む、無理ぃ」
「何が無理なんだ?」
「刺激が……な、なんでも無いの」
本気で走ったからか、盗賊たちに出くわす事も無く(気付かなかっただけかもしれないが)、国境が見えてきた。
「つ、着いた……の?」
「いや、国境だ。ここからは、空を行くぞ」
「ど、どういう事? 普通に通して貰えば良いじゃないの?」
「ダメだ。まだ入国申請が通ってないからな。いずれ入国許可が出る訳だし、時間が惜しいからこっそり通るんだ」
「あー、だから街で足が着かないようにしていたんだ。無許可で入国する事を前提に」
未だ出て無いだけで、ちゃんと正式に許可を貰えるから良いんだよ……と、国境に居る兵士たちにバレたら、即捕まりそうな事を言いつつ、浮遊魔法を使ってルミを抱っこしたまま、ゆっくりと高度を上げて行く。
「この魔法は速度を出せないから、静かにしてろよ。気付かれたらアウトだからな」
「うん……」
静かに上空から国境を越え、かなり離れた所へ着地し、一旦ルミを地面に降ろす。
「ふぅ。一先ず国境は越えられたな」
「違法だけどね」
「まぁ、かたい事は言うなよ。魔族を倒す為なんだしさ……って、ルミ。どうして、そんなに顔を真っ赤にして、汗だくなんだ?」
「お、お兄ちゃんのせいでしょーっ! 激し過ぎるのっ!」
「何の事だ?」
走っていたのは俺なのだから、俺が汗をかくのなら分かるのだが。
とりあえず、先ずは街を見つけ、黒い森についての情報収集をする事にした。
「さてと。午前中は成果が出なかったから、午後は移動に専念しようと思う」
「お兄ちゃん、成果って? 盗賊と戦って少し時間は使っちゃったけど、ちゃんと進んで来たよ?」
「いや、ちょっと思うところがあってな。とりあえず、ここからは走るぞ」
ルミをエサにしてもロリコン魔族が出てこなかったので、盗賊などを無視して、とにかく黒い森へ行こうと思う。
「アジリティ・ブースト」
「神聖魔法? お兄ちゃん、何をする気なの?」
「ルミ。俺がルミをおんぶして走るから、背中に乗ってくれ」
「おんぶ? さっきルミがおんぶしてって言った時は断ったのに? それに、ルミを背負いながら走れるの?」
「意味も無くおんぶするのは変だろ? このおんぶは、ちゃんと意味がある。多少走りにくくても、俺がルミを背負った方が速いんだ」
「……よくわからないけど、お兄ちゃんがルミをおんぶしてくれるなら、それで良いよ」
そう言って、しゃがみこんだ俺の背中に、ルミが身体を預けてくる。
流石にユーリヤより大きいが、走れなくはなさそうだ。
……ルミが俺の背中に、平らな胸を押し付けてきているように思えるが、気のせいだという事にしておこう。
「じゃあ、走るぞ。しっかりつかまってるんだぞ?」
「はーい。ルミはお兄ちゃんにピッタリくっついてまーす!」
ルミが頷いたのを確認し、先ずは六割くらいの速さで走り出すと、
「す、ストップ! ストップー! 無理無理無理無理! 落ちるっ! お兄ちゃん、落ちちゃうよっ!」
すぐにルミの腕が離れそうになり、慌てて足を止める。
「お、お兄ちゃん! 今のはなんなの!? どういう魔法!?」
「ただの身体強化魔法だが?」
「強化されすぎだよっ! あんなの、しがみついていられないよっ!」
ルミの腕力では、おんぶで走るのは無理か。
だったらユーリヤみたく抱っこするしかないな。
「ルミ、仕方が無い。抱っこにしよう」
「え? 抱っこ!? お、お兄ちゃんが……ルミを?」
「あぁ。しっかり捕まっているんだぞ」
「うんっ! ……って、ちょっと、お兄ちゃん!? お姫様抱っことかじゃないの!?」
「お姫様抱っこしながら走れるかよ」
正面から抱っこしようとしたら、ルミが恥ずかしそうに一歩下がる。
「え……さ、流石に正面からお兄ちゃんに抱っこしてもらうのは恥ずかしいよ」
「文句言うなって。じゃあ、もう一度おんぶの状態で走るか? 早く黒い森に行きたいから、普通に歩いたりするのは無しだぞ」
「うぅ……だ、抱っこでお願いします」
顔を真っ赤に染めたルミを正面から抱きしめ、持ち上げる。
「ルミ。足を閉じて居たら走れないから、開いてくれ」
「――ッ! お、お兄ちゃん。こ、これは……き、既成事実?」
「何を言っているんだ? じゃあ、行くぞ」
ユーリヤと同じように、ルミが両腕を俺の首に回してきたので、一気に加速する。
「お、お兄ちゃ……お、お腹……振動で……」
「我慢しろ。俺が身体を支えているから落ちる心配はない」
「お、落ちないけど……ルミが……へ、変に……」
耳元でルミが辛そうに声を上げる。
うーん。ユーリヤはこの状態で笑っていたのだが、ルミが振動に弱いのか、それともユーリヤが強いのか。
しがみ付いて居るから顔は見えないが、俺が支えるルミの太ももが、ほのかに汗ばんでいる気がする。
「お、お兄ちゃーんっ!」
暫く走っていると、突然ルミがギュッと腕に力を込め、大きな声と共にグッタリして、静かになった。
気を失った……訳では無さそうなので、静かなうちに加速してしまおう。
「い、今は……む、無理ぃ」
「何が無理なんだ?」
「刺激が……な、なんでも無いの」
本気で走ったからか、盗賊たちに出くわす事も無く(気付かなかっただけかもしれないが)、国境が見えてきた。
「つ、着いた……の?」
「いや、国境だ。ここからは、空を行くぞ」
「ど、どういう事? 普通に通して貰えば良いじゃないの?」
「ダメだ。まだ入国申請が通ってないからな。いずれ入国許可が出る訳だし、時間が惜しいからこっそり通るんだ」
「あー、だから街で足が着かないようにしていたんだ。無許可で入国する事を前提に」
未だ出て無いだけで、ちゃんと正式に許可を貰えるから良いんだよ……と、国境に居る兵士たちにバレたら、即捕まりそうな事を言いつつ、浮遊魔法を使ってルミを抱っこしたまま、ゆっくりと高度を上げて行く。
「この魔法は速度を出せないから、静かにしてろよ。気付かれたらアウトだからな」
「うん……」
静かに上空から国境を越え、かなり離れた所へ着地し、一旦ルミを地面に降ろす。
「ふぅ。一先ず国境は越えられたな」
「違法だけどね」
「まぁ、かたい事は言うなよ。魔族を倒す為なんだしさ……って、ルミ。どうして、そんなに顔を真っ赤にして、汗だくなんだ?」
「お、お兄ちゃんのせいでしょーっ! 激し過ぎるのっ!」
「何の事だ?」
走っていたのは俺なのだから、俺が汗をかくのなら分かるのだが。
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