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第5章 新たな試練

第114話 猫の集会

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「……二人とも静かに頼む。これから、猫の集会へ行ってくる」
「……猫の集会? 貴方、何を言っているの?」

 アタランテが訝しげな表情で俺を見てくる。
 まぁ猫の集会へ行ってくるなんて突然言われたら、そんなリアクションにもなるだろうな。

「……昨日猫と意思疎通する魔法を修得しただろ? 街の野良猫と話をしていたら、夜にやっている猫の集会へ来ると、情報が得られるかもしれないって教えて貰ったてさ」
「……あぁ、なるほど。そういう事ね」
「……そうだ。アタランテもついて来てくれないか?」
「……え? まぁ構わないよ」

 よし。アタランテを連れて行けば、さっきみたいに獣人の目撃情報が、実はアタランテの事だった……というのが防げるだろう。
 後は、ユーリヤが起きない事だけを祈りながら、出来るだけ早く帰って来る事だ。
 教えてもらった場所は、俺とアタランテなら、十分もあれば行けるだろう。
 ただ、大雑把な場所しか聞いていないので、そこから猫の集まりを探さなければならないが。

「……あの、主様はその魔法をもう修得されたのですか?」
「……あ、そうか。ジェーンには言ってなかったな。もう魔法を修得して、今日実際に猫と話して来たんだよ」
「……ね、猫ちゃんとお話出来る。しかも、猫ちゃんが沢山……あの、主様。私も猫の集会場へ連れて行って貰えませんか?」
「……別に構わないよ。じゃあ、三人で行こう。万が一ユーリヤが起きてしまうと大変だから、出来るだけ急いで行くよ」

 珍しくジェーンが要望を出してきた。
 ジェーンは猫が好きなのかな?
 魔術師ギルドの汎用魔法講師の所に猫が沢山居ると事前に知っていたら、教えてあげたんだけどね。
 俺たちは静かに部屋から出ると、寮の廊下でワープ・ドアを使用して商店街へ。

「よし、急いで行くぞ。ここから西に行ったある公園が目的地だ」

 俺を先頭に、アタランテとジェーンが夜の町を走り抜けて行く。
 何気に夜の町というのは殆ど見た事が無い気がする。
 暗い空の下で、時々明るい店――酒場があってオジサンたちが楽しそうに騒いでいたり、看板などは無く、入口も薄暗い店なのに、そこから若い男性たちが幸せそうな顔で出てきたりしている。
 ……酒場はともかく、あの店は何なのだろうか。随分と綺麗な女性が扉から顔だけ出しているけど。

「貴方は、あぁいうお店に用事はないでしょう?」

 何故だろう。
 あの店が何のお店かと思って走りながら視線を送っていただけなのに、アタランテが視線を遮るように並走してきて、目が笑っていない笑みを浮かべている。
 結構な速度で走っているはずなのに、器用だなと思っていると、

「主様。右手に開けた場所がありますが」
「あ。たぶん、そこだと思う。二人とも、あっちへ曲がるよ」

 ジェーンが俺を助けるように話を振ってくれた。
 ジェーン……本当に出来る娘だ。空気が読めるって素敵。
 未だにアタランテの視線は感じるものの、一気に加速して公園の入口へ。

「この公園にある林の中で集会をしているって話なんだけど……どこだ?」
「手分けして探しますか?」
「本来はそうしたい所だけど、猫と話が出来るのは俺だけだから、一先ず固まって探そう。何か見つけたら、すぐに声を掛けてくれ」

 走って猫たちを驚かせる訳にはいかないので、速さ重視では無く、気配を断ちつつ、出来るだけ急ぐという器用さを求められる小走りで広い公園何を探索していると、

「貴方、こっちよ。小動物の気配がするわ」

 アタランテが早速猫を見つけたらしい。
 静かにアタランテの後を歩いて行くと、居た。
 二十匹程の猫が集まり、一定の範囲内に座っている。
 おそらくこれが猫の集会場だろう。
 一先ず、暗闇の中で一番目立っている、大きな白い猫に意志疎通の魔法を使うと、あっさりと成功した。

(こんばんは。ちょっと聞きたい事があるんだが、良いか?)
『人間が我らに何の用だ? どうやってここを見つけたのかは知らんが、もふもふしたいというのなら帰るんだな。ここに人間と慣れ親しむような猫は居ない』
(いや、そういう用事では無い。取引がしたいんだ)
『取引だと? 人間が? 我らに?』
(あぁ。探して欲しいものがある。もしも既に知っているのであれば、それでも良い。それから、もちろんタダとは言わない。報酬がある)
『報酬? 報酬とは?』
(これだよ)

 ボスらしき白猫と話をしながら、夕方に購入した魚を空間収納魔法から全て出し、猫たちに向けて一斉に投げ与える。

『ふん……人間め。これくらいの魚で、我らがホイホイ言う事を聞くと思っているのか?』
(……いや、アンタ以外みんな魚を食べてるんだが。食べる前に無くなっても知らないぞ?)
『……くっ! よ、用件は何だ! 我らは……我らはぁぁぁ……』
(いや、いいから先に食べなよ。食べながらでも話は出来るだろ?)
『だ、誰が……こ、こら! 全部食べるなぁぁぁっ!』

 白猫が近くに居た猫から魚を奪い、勢い良く食べ始めたので、二人に少し待つように伝えようとしたのだが、

「よしよし。沢山お食べー」

 ジェーンが猫たちの中に入り、片っ端から頭を撫でまわしていた。
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