105 / 343
第5章 新たな試練
第105話 猫耳幼女
しおりを挟む
アタランテにじゃれつく仔猫が緑色に光っている。
これは成功だと考えて良いのだろうか。
『私とヘンリーさんの様に、頭の中で会話が出来ると言っていましたから、試しに何か質問してみてはいかがでしょうか?』
(なるほど。おーい、えーっと、猫ちゃーん)
『ひゃっほー! みーぎ、ひだり、みーぎ、ひだり……うぅぅぅ、とぉっ! あー、こんどもつかまえられなかったー!』
えーっと、この子供みたいなはしゃぎっぷりと、全く人の話を聞かない感じは、間違いなく目の前の仔猫だろう。
(あのさ、君の名前を教えて欲しいんだけど)
『つぎこそ……みぎー、ひだりー、みぎー、ひだりぃぃぃ……いまっ! むー、またダメかぁー』
(あのー、君の名は?)
『わかった! こんどは、ひだりからにしよっと。ひだりー、みぎー、ひだりー、みぎー……てぇーい! なんで、ダメなんだー!』
これは、アオイの魔法が中途半端に成功して、この仔猫の思考だけが一方的に入って来て、こっちの言葉が向うへ行かないのだろうか。
『いえ、ちゃんと発動していますよ。ただ、この仔猫が尻尾に夢中なだけです』
(分かった。要は、アタランテの尻尾が揺れているからダメなんだな)
仔猫を見つめたまま、そっとアタランテに近づくと、スカートの上から揺れる尻尾を抑える。
「ひゃぁっ! あ、貴方……こ、こんな所で。そ、そういう事は部屋に帰ってからでも良いでしょ?」
「悪い。でも、俺もう我慢出来無くてさ」
アオイの魔法が成功しているのなら、もうこんな場所へ居る必要は無いし、失敗しているのなら、何が悪いのかを教えて貰わなくては。
この、成功していそうだけど確認が取れない中途半端な状態って、ちょっとモヤモヤして我慢ならないんだけど……どういう訳か、せっかく尻尾の動きを止めたのに、アタランテが身体を俺に押し付け、くねらせる。
そのせいで、俺は手を動かしていないのにアタランテのお尻を撫で回しているみたいだし、尻尾が揺れて仔猫がピョンピョンと飛び跳ねるし、オッサンが羨ましそうにこっちを見つめているし……何だこの状況は?
しかし、アタランテの尻尾の揺れが小さくなったからか、さっきの仔猫が両前足で尻尾をキャッチした。
今なら聞けるか?
(ねぇ、君の名前は?)
『ん? ぼくのこと? ぼくはタマっていうんだよ』
(そっか。タマ、その尻尾は俺のお友達の尻尾だから、放してやってくれないか?)
『えー。やっとつかまえたのにー? やーだー!』
名前は分かったものの、尻尾を離すというのは叶わなかった。
まぁアタランテが痛がっている様子もないし、好きにさせておこうか。
それに、この猫から聞いた名前が正しければ、魔法の確認としては十分だろうし。
「あの、この魔法ってどうやって解除するんですか?」
「キャンセルと言うだけニャ……って、まさかもう成功したの!?」
「えぇ。この尻尾にじゃれついている仔猫……タマっていう名前ですか?」
「う……そ、その通りだよ」
「よしっ! 猫と意思疎通する魔法を修得したぜっ!」
まぁ修得したのはアオイであって俺ではないのだが。
「え? お兄さん、あの説明で理解出来たの!? しかも一発で成功……って、やっぱりお兄さんは凄いんだね」
「あー、うん。ま、まぁね。か、風の元素を中心に魔法を組み立ててみると、良いと思うよ」
驚くマーガレットに、アオイが説明してくれた内容をそのまま話すと、尊敬の目で見られてしまった。
このまま、「ヘンリーさん素敵!」とか言って、胸を触らせてくれたりしないだろうか。
「……なんだろう。意志疎通の魔法を使った訳でもないのに、お兄さんがエッチな事を考えているのが分かるよ」
「もうっ! 貴方ったら! 今日は私とでしょっ!」
「えーっと、とりあえず魔法を修得出来たし、そろそろ帰ろうか。ユーリヤ、おいでー」
教えて貰った通りに意志疎通魔法を解除し、仔猫と遊んで居たユーリヤが抱きついてきたので抱っこする。
……最近、ユーリヤは抱っこ癖がついて来ていないか?
まぁこれまでがこれまでだったから、仕方がないかもしれないが。
一先ず用事が済んだので、講師にお礼を言って教室を出ようとすると、
「待つニャ!」
呼び止められ、オッサンが教室の奥から何かを取り出した。
その何かを持って俺に近づき、
「驚いたニャ。こんなに早く魔法を修得した人は初めてニャ。そして、これが猫ちゃんとの意思疎通魔法マスターの証ニャ。好きなのを持って行くと良いニャ」
様々な種類の猫耳カチューシャを見せてきた。
こ、このオッサン。どこでこんな物を買ってくるのだろうか。
俺が何も言えずに絶句していると、
「にーに。にゃーにゃ!」
「おぉ、お嬢ちゃん。黒猫の猫耳を選ぶとは流石だね。よし、それはお嬢ちゃんにあげよう。お父さんとお揃いにしておこうね」
いつの間にかユーリヤが黒い猫耳カチューシャを装着し、俺の手にもお揃いのカチューシャを握らされていた。
「ふぉぉぉっ! 猫耳美幼女っ! 可愛いっ! まさかこれほどまでの破壊力とはっ! これは、本物の猫よりも可愛いかもしれない!」
オッサン。熱く叫んでいるが、その発言はただの変態だからな?
素早く教室の扉を開いてギルドの入口へ移動すると、
「猫耳幼女、最……高っ!」
先程居た教室の方から、大きな叫び声が聞こえて来て、ギルドの受付のお姉さんが驚いていた。
……あ、教室の扉閉めてなかった。
これは成功だと考えて良いのだろうか。
『私とヘンリーさんの様に、頭の中で会話が出来ると言っていましたから、試しに何か質問してみてはいかがでしょうか?』
(なるほど。おーい、えーっと、猫ちゃーん)
『ひゃっほー! みーぎ、ひだり、みーぎ、ひだり……うぅぅぅ、とぉっ! あー、こんどもつかまえられなかったー!』
えーっと、この子供みたいなはしゃぎっぷりと、全く人の話を聞かない感じは、間違いなく目の前の仔猫だろう。
(あのさ、君の名前を教えて欲しいんだけど)
『つぎこそ……みぎー、ひだりー、みぎー、ひだりぃぃぃ……いまっ! むー、またダメかぁー』
(あのー、君の名は?)
『わかった! こんどは、ひだりからにしよっと。ひだりー、みぎー、ひだりー、みぎー……てぇーい! なんで、ダメなんだー!』
これは、アオイの魔法が中途半端に成功して、この仔猫の思考だけが一方的に入って来て、こっちの言葉が向うへ行かないのだろうか。
『いえ、ちゃんと発動していますよ。ただ、この仔猫が尻尾に夢中なだけです』
(分かった。要は、アタランテの尻尾が揺れているからダメなんだな)
仔猫を見つめたまま、そっとアタランテに近づくと、スカートの上から揺れる尻尾を抑える。
「ひゃぁっ! あ、貴方……こ、こんな所で。そ、そういう事は部屋に帰ってからでも良いでしょ?」
「悪い。でも、俺もう我慢出来無くてさ」
アオイの魔法が成功しているのなら、もうこんな場所へ居る必要は無いし、失敗しているのなら、何が悪いのかを教えて貰わなくては。
この、成功していそうだけど確認が取れない中途半端な状態って、ちょっとモヤモヤして我慢ならないんだけど……どういう訳か、せっかく尻尾の動きを止めたのに、アタランテが身体を俺に押し付け、くねらせる。
そのせいで、俺は手を動かしていないのにアタランテのお尻を撫で回しているみたいだし、尻尾が揺れて仔猫がピョンピョンと飛び跳ねるし、オッサンが羨ましそうにこっちを見つめているし……何だこの状況は?
しかし、アタランテの尻尾の揺れが小さくなったからか、さっきの仔猫が両前足で尻尾をキャッチした。
今なら聞けるか?
(ねぇ、君の名前は?)
『ん? ぼくのこと? ぼくはタマっていうんだよ』
(そっか。タマ、その尻尾は俺のお友達の尻尾だから、放してやってくれないか?)
『えー。やっとつかまえたのにー? やーだー!』
名前は分かったものの、尻尾を離すというのは叶わなかった。
まぁアタランテが痛がっている様子もないし、好きにさせておこうか。
それに、この猫から聞いた名前が正しければ、魔法の確認としては十分だろうし。
「あの、この魔法ってどうやって解除するんですか?」
「キャンセルと言うだけニャ……って、まさかもう成功したの!?」
「えぇ。この尻尾にじゃれついている仔猫……タマっていう名前ですか?」
「う……そ、その通りだよ」
「よしっ! 猫と意思疎通する魔法を修得したぜっ!」
まぁ修得したのはアオイであって俺ではないのだが。
「え? お兄さん、あの説明で理解出来たの!? しかも一発で成功……って、やっぱりお兄さんは凄いんだね」
「あー、うん。ま、まぁね。か、風の元素を中心に魔法を組み立ててみると、良いと思うよ」
驚くマーガレットに、アオイが説明してくれた内容をそのまま話すと、尊敬の目で見られてしまった。
このまま、「ヘンリーさん素敵!」とか言って、胸を触らせてくれたりしないだろうか。
「……なんだろう。意志疎通の魔法を使った訳でもないのに、お兄さんがエッチな事を考えているのが分かるよ」
「もうっ! 貴方ったら! 今日は私とでしょっ!」
「えーっと、とりあえず魔法を修得出来たし、そろそろ帰ろうか。ユーリヤ、おいでー」
教えて貰った通りに意志疎通魔法を解除し、仔猫と遊んで居たユーリヤが抱きついてきたので抱っこする。
……最近、ユーリヤは抱っこ癖がついて来ていないか?
まぁこれまでがこれまでだったから、仕方がないかもしれないが。
一先ず用事が済んだので、講師にお礼を言って教室を出ようとすると、
「待つニャ!」
呼び止められ、オッサンが教室の奥から何かを取り出した。
その何かを持って俺に近づき、
「驚いたニャ。こんなに早く魔法を修得した人は初めてニャ。そして、これが猫ちゃんとの意思疎通魔法マスターの証ニャ。好きなのを持って行くと良いニャ」
様々な種類の猫耳カチューシャを見せてきた。
こ、このオッサン。どこでこんな物を買ってくるのだろうか。
俺が何も言えずに絶句していると、
「にーに。にゃーにゃ!」
「おぉ、お嬢ちゃん。黒猫の猫耳を選ぶとは流石だね。よし、それはお嬢ちゃんにあげよう。お父さんとお揃いにしておこうね」
いつの間にかユーリヤが黒い猫耳カチューシャを装着し、俺の手にもお揃いのカチューシャを握らされていた。
「ふぉぉぉっ! 猫耳美幼女っ! 可愛いっ! まさかこれほどまでの破壊力とはっ! これは、本物の猫よりも可愛いかもしれない!」
オッサン。熱く叫んでいるが、その発言はただの変態だからな?
素早く教室の扉を開いてギルドの入口へ移動すると、
「猫耳幼女、最……高っ!」
先程居た教室の方から、大きな叫び声が聞こえて来て、ギルドの受付のお姉さんが驚いていた。
……あ、教室の扉閉めてなかった。
0
お気に入りに追加
1,337
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる