ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,491 / 2,518

第2491話 危険な香り

しおりを挟む
 お腹もいっぱいになりランを呼び寄せて、世界樹の木陰で昼寝でもしようと、場所を移動した。

 用意されたエアーベットやクッションに横になったランは、はよ来いと言わんばかりにお腹をポンポンと叩いている。魅力的なお誘いだったので、すぐにお腹にもたれかかる。ネコとは思えないゆっくりとした呼吸は、ゆりかごのようだ。

 俺の眠気を誘う、悪魔の誘惑……は言い過ぎだな。そう言いたくなるくらい気持ちいってことだ。

『ねえ、あんた。最近何もしてないけど、何かしないの?』

 無粋なチビ神だ。俺が寝ようとしているのに、話しかけてくるなんて……今週は、貢ぎ物無しな。

『ちょっと! それは酷いんじゃない! あんたの奥さんたちに言いつけるわよ!』

 ん~、それをされると、今回は拙いな。俺の眠りを妨げただけだし、絶対に妻たちに怒られる……貢ぎ物無しは取り消す。ってか、何の用だよ。こっちに来た時は干渉してこないって言ってたのに、干渉しすぎだろ。ってこれ何回目だ?

『ここまでできるって期待してなかったから、干渉はほとんどしないって言っただけだから、ノーカンです。あんたが面白い事をすれば、注目するとも言ってたから、間違いは無いわよ』

 ……ん? そんな事言ってたか? 興味を引くことがあって、その時に声をかければ答える……みたいなニュアンスだった気がするが?

『はぁ? そんな事言うわけないじゃん。話しかけてきても、私が答える訳ないでしょ!』

 はいはいそうですか。それで今日は何の御用で?

『何もしてないから、何かしないのか聞きにきた』

 前にさ、強制しないように言って、お前も了解したよな?

『そうね、了解したわ。だから強制してないじゃない。何かしないの? って聞いてるだけよ』

 クソッ、聞くことも禁止にしとけば、今回邪魔されることもなかったのに、こいつ余計な知恵つけてかしこくなってやがる……つかさ、ここ2ヶ月くらいの俺の様子見てなかったのか? こちとら大変だったんだからな!

『あ~、子どもたちから病気うつされて、死にかけてたやつでしょ? ぶり返したみたいで大変だったわね。でも、治ってよかったじゃない』

 あのまま俺が死ぬ可能性だってあったのに、それだけかよ。

『あんたは死なないわよ。もし本当に死にそうになっても、絶対にシルキーたちが全力で生かしたもの。私も死なれたら困るから様子は見てたけど、体は衰弱してたけど、ゲームで言うHPはまだ3割以上は残ってたから、すぐに死ぬことはないって分かってたしね。危なかったら、神託でもおろしてたわよ』

 確かに死にそうではあったけど、死ぬとは思ってなかったしな。体力も回復してねえし、無理は出来ない体なんで、しばらくは何もしないから、さっさと帰れ。

『いやよ、久しぶりに連絡できたんだから、色々話すに決まってるじゃない!』

 知るかよ……俺の迷惑も考えろや。

『え? だって、あんた暇してるんでしょ? だから声かけたのに、帰るわけないじゃん!』

 こっちは、寝ようと思ってたのに、お前からの声が届いて激しく不機嫌なんだが?

『私は気分がいいから、気にしないわよ。でさ、何かしないなら話題の提供をしてよ』

 だから、強制すんなっての!

『強制してないじゃない、提供してって言ってるだけでしょ』

 うわ……めんどくせえ。そっちが言ってるだけって言うなら、こっちが聞く必要もないわけで、答えるも答えないも自由だよな。ってことで、話題提供何かねえよ!

『それならそれで仕方がないけど、何かするか何か話題をくれないと、ずっと話しかけるわよ。それが嫌なら何か提供してよ』

 強制しないとか言っているくせに、半強制的な言い方だな……このやり取りしてると、こっちに来る前にあった理不尽な事を思い出すわ。

 学校の行事で俺は帰りたくなかったのに、足を挫いたせいで「ここに残っててもすることがない、いられることが迷惑だ」といわれたけど、泊りがけ行事だったから帰りたくないって言っても、「ここに残っててもすることがない、いられることが迷惑だ」の一点張り。

 仕方がなく「帰る」というと、自分の意思で帰るんだから、自分の金で家まで帰えれって言われたんだよな。選択肢なんて無いのに、いつの間にか俺の意思で帰ることになってさ……行事用のお金は両親が出してくれていたのに、自分の意思で帰るからこっちは関与しないみたいなこと言われたんだよな。

 状況は全く違うのに、何でこんなこと考えてるんだ?

 懐かしい事を思い出したけど、だからと言って今の状況に何も関係がないのだが……

 まぁ、提供するつもりはないから、ずっと声かけてきてもいいぞ。

『あれ? これされるの、嫌じゃなかったっけ? 四六時中私の声がするのはキツイみたいなこと言ってたよね?』

 もちろん、キツイ。でもさ、お前の話を聞いて思ったんだ。俺が何も迷惑をかけられていないなら、妻たちも俺の事を怒るだろうけど、さすがに四六時中あんたが俺に声をかけてくるのであれば、シルキーたちに言えば貢ぎ物を止めるんじゃないかと思ってな。

 だから、遠慮なく四六時中声をかけてきてもいいぞ。限界が来たら、シルキーたちに話すから。さすがに迷惑をかけられていないのに、先んじてシルキーたちに話すことはないけど、もし迷惑をかけられたのであれば……分かるよな?

『グヌヌヌヌ……私の切り札が、一つなくなった! というか、あんたが何もしなくて、こっちは暇してるのよ! 何かしてくんないと、暇なの! だから何かしなさい!』

 だから、強制するなっての。俺だって病み上がりで許可も出てないし、許可が出てもするつもりはないけど、迷惑だからさっさとどこか行くか、迷惑かけて貢ぎ物を止められるかしてくれ。

『ムキー!!「バナ」食べないわよ! その返し、いい加減止めてくれないかしら! 私をサル扱いして……本当に私の事バカにしてるわよね!』

 バカにしてるんじゃない、お前は十分バカなんだよ。事実を言っているだけだから、バカにしてるわけじゃないさ。

『もー! あったまきた! 帰る!』

 お~、帰れ帰れ。そして、こっちが呼ぶまで出てくるな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...