ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,407 / 2,518

第2408話 まさかの事態

しおりを挟む
 一応、この死刑囚たちって何をしたんだろうか?

 気になったので、連れてきた暗部の鬼人に聞いてみた。

 少々お待ちください、と言ってタブレットを操作し始めた。全く無知だったこの世界の住人たちでも、時間をかければ色々吸収するんだな。

 しばらくして、

「わかりました。右から、強盗殺人・強姦殺人・複数殺人みたいですね。全員が王国からお金で買った死刑囚ですね。王国や帝国では殺人を犯した者は、死刑になることが多いそうですね。2人目の死刑囚ですが、シュウ様の管理下では無い街での犯罪でしたので、実験に利用するように買った死刑囚ですね」

 いくらくらいで買ったんだろうな?

「王国も帝国も、毎回公開処刑にするのも大変ですし、それなりにお金がかかるので、死刑囚を引き取ってくれるならありがたいという感じですね。ですが、後で色々言われないように、金でのやり取りをしていると聞いています」

 なるほどね。死刑囚とはいえ、ただ引き取るだけだと、後でいちゃもんをつけてくる可能性があるから、金を払って奴隷を買い取るような感じにしているってことらしい。

 国王とか皇帝がそんな愚かなことをしてくるとは思わないが、俺たちの実力を知らない貴族たちが騒ぐ可能性があるので、面倒ごとを回避するための措置だとのこと。

 これ以上無駄に領地を広げたくないし、グリエルの取っている行動は正しいな。

 よく小説では戦争をして領土を広げている描写があるが、戦争で得た領土って統治するのが大変なはずなんだよな。皆殺しにするとか、全員を奴隷にするとか、過激な方法をとらない限りは、そこに住んでいる人たちを受け入れる形をとる必要がある。

 占領された町は、戦争によってイメージが悪くなっている敵国に取り込まれる形になるので、反感が強かったり家族や親類、知り合いを殺されており、統治するのに苦労するんだよな。

 それ以外にも、統治する人間の準備もしないと面倒なことになる。そこの領主をそのまま使うわけにはいかないし、反乱などの危険性を減らすために、街の上層部の人間は処刑されることが多いって話だ。その代わりも準備する必要があるから、色々と面倒なんだよ。

 統治には、お金もかかることが多い。街に残されている金が少なく、取る税金もほとんどなかったりするため、全部自分たちで出すことになる場合も多いみたいだ。それだけ腐った奴らが多いってことでもあるんだけどな。


 その購入した死刑囚の値段は……一律、金貨10枚だそうだ。犯罪奴隷としてはかなりの高額だ。レベルを考えれば、妥当な線かもしれないな。レベル100くらいだし、使い勝手はいいから安い可能性もあるか? 鉱山なんかで働かせれば、活躍しそうだけどな。

「あまりレベルが高い奴隷は扱いにくいそうで、監督する側に同等以上のレベルの者がいない場合は、管理が面倒なので処刑になることが多いみたいです。それを高値でディストピアで買っているので、助かっている部分も多いそうですね」

 あ~いくら奴隷にしていても、管理が面倒ってことか。

「あと上層部の判断で、こちら側の犯罪者と死刑囚の交換もあるそうですね」

 ん? こっちでの犯罪者が死刑囚のような扱いを受けるってことか?

「向こうから見ると、ちょうどいいレベルの扱いやすい犯罪者が多いので、交換している形です。殺人とかではないのですが、重い犯罪を犯しているので、刑期の長い犯罪者を他国に渡しているので、シュウ様の懸念しているようなことはないです」

 あ~、冒険者による軽度な犯罪、いざこざが多いと聞いているが、そういうやつらを交換に出しているのではなく、もっと重い犯罪を犯しているやつらを交換に出しているそうだ。

 扱いやすい犯罪奴隷は、待遇がいいらしく便利に危険なところでの作業に当たらせているそうだ。レベル50もあれば頭から地面に落ちない限り、10メートルくらいなら平気なので、高所作業とかをやらせやすかったりするようだ。

 ほかにも便利に使えるから、かなり喜ばれているんだとか。

 重い犯罪者が交換の対象になっているのなら、俺は特に言うことはないな。グリエルとガリアの判断だから、俺が口をはさむことでもないな。

 実験結果から、今回使うことに問題はなさそうだと判断できる。

「問題は、敵側の勇者やダンジョンマスターが対策をしていた場合だよな……」

 何かしらの対策がされていた場合は、ドームの中でかなり不利な戦闘を強いられることになるので、悩みどころではある。瞬時に対策をできるほど温い罠ではないが、元々対策をされているとほとんど無意味になってしまう方法なので、しっかりと対応を考える必要があるんだよな。

「シュウ、実力がなくても1人で相手をさせるわけじゃないんでしょ? 時間稼ぎができるメンバーで組ませておくんだから、対策を取られていた場合を考えても仕方がないわよ。暗部の話では、ダンジョンマスターの方は外に出てこないだろうから、勇者に気を付けておけばいいと思うわよ」

 いつの間にか来ていた綾乃が、俺の思考を読んで答えてきた。近くにはバザールもいるので、一緒に暇つぶしにでも来たんだろうな。それより、準備は終わったのか?

「必要数の人造ゴーレムは準備しているわよ。もともとパーツは暇なときに作ってたから、つなげるだけで問題なかったわ」

 やることをやって戻ってきた感じか。

「この世界でこんな方法をとる人間なんていないでござるから、無理に色々する必要はないと思うでござる」

 骨の体の持ち主には、聞かない攻撃方法だからって気にしなさすぎだろ。

「実際に、シュウ殿も気にして戦っていることなんてないでござるよな? 相手も同じでござろうから、隊長たちには無理せずに戦わせるといいと思うでござる」

 基本は無理させなければいいだけか。一度見つければ、マップ先生でマークすることは可能だから、しっかりと発見報告を上げるようにしておくべきだな。

 中隊長以上は、魔道具の壁を壊せるようになってもらわないと……

 そう考えていると、

「シュウ様、どうやら勇者たちが動き出したようです。ここまでは距離がありますが、防衛体勢に入ったほうがよろしいかと思います」

 まさか、こっちの準備が整う前に動いてくるとは……事前に準備ができていたのかもしれないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...