ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,402 / 2,518

第2403話 苦戦中

しおりを挟む
 午前中の悪魔の訓練を乗り越えた隊長たちは、昼食をはさみ元気になっていた。地球でこんなことをやればパワハラとかではなく、単純に犯罪で捕まるだろう。俺は腕を壊し、レイリーと副官は打撃による骨折……明確に壊れることを理解していながら実行しているんだよな。

 魔法薬や回復魔法が無ければ、実行できる訓練じゃないよな。地球でこんな訓練が可能だったら、独裁国家とか宗教国家とか、倫理観の無い国しかできないだろうな。こんなことができれば、最強の兵士たちができる気がするわ。

 っと、午後の訓練を始めますかね。

 俺に引けを取らない位食べたはずの隊長たちは、俺より元気なんじゃないだろうか? 改造もされていない人間が、こんなに食事を食べられるのだろうか? というくらいには食べていたのだが、平気なようだな。このくらいなら、普通に食べるのだろう。

「午前中の訓練で、魔力を集める感覚はなんとなく掴めたと思うから、今度は守りに使った魔力を攻撃に使ってみよう。イメージは、殴る瞬間に集めた魔力を体の外へ押し出す感じだな。押し出す時は、一点から一気に押し出すようにすると、この壁を壊すことができると思う」

 一発で成功するようなものではないので、魔核で作った壁の周りに隊長たちを配置して、個人個人でチャレンジをさせてみることにした。

 開始10分経った頃に、成功とまではいかないがある程度壊すことに成功した隊長が出てくる。

 才能なのか、大隊長ではなく死ぬ思いをした中隊長の1人が成功したことで、全員も出来ると踏んだのか、ヤル気に火が付いたようで周囲に壁を叩く音が強く響きだした。

 腕に魔力を集めることは出来ているが、その魔力を外に放出することが出来ないようだ。

 俺はスキルで浸透勁を覚えていたからか、魔力を放出する感覚は知らないうちに覚えていたんだよな。まぁ、イメージができていればできるようなので、少し方法を考える必要があるかもしれないな。

 そうはいっても、まだ30分も経っていないので……おやつの時間、15時頃になっても成功者ができなければ、違う方法も試してみるかな。

 1時間経過した頃に、こぶし大の穴をあけることに成功したものが現れた。

 一番進んでいると思われた中隊長ではなく、違う中隊長が急に覚醒をしたように穴をあけることに成功したようだ。

 だけど、押し出せる魔力量が少なかったためか、小さな穴をあけることしかできなかったみたいだ。

 一点に集中させ過ぎたのかとも思い俺も何回か試してみたが、触れた場所から流し込まれた魔力の量で穴の大きさが決まるようなので、単純に魔力量が足りなかったようだな。

 思ったより難しいのかもしれないな。当たり前に使っていた技術は、一般的には高等技術だったようだな。

「ん~、レイリーや副官たちは、これできたよな? やっぱり、習得するのに苦労したか?」

 3人は少し悩んで、苦笑いをして頷いていた。

 この3人が難しいというのであれば、本当に難しいんだろうな。俺たちやライガのような特殊な人材を抜けば、最高峰の人材だからな。

 魔力を押し出すっていうのが難しいのか、体外に魔力を出すのが難しいんだろうか?

 レイリーたち3人も躓いた部分が違うようで、人それぞれ理由があるようだ。

 魔力を体の外に出せないのであれば、方法は無くもないのだが、それをすると魔力を溜めることが一時的にできなくなってしまうから、選択肢に入れにくい方法なんだよな……

「シュウ様、1日で習得できるようなものではないと考えていましたので、今日は体の外に魔力を放出する感覚を覚える時間にしてもいいかもしれませんね。段階的に目標を設けて訓練をさせるのがいいのではないですか? いきなり壁の破壊は、ハードルが高いと思います」

 やっぱりそうだよな。昨日はこれでもいいのでは? と思っていたけど、ここまで難易度が高いとなると、色々試行錯誤をする必要があるかもな。

「オーケー、今日はこの休憩の後は、魔力を外に出す感覚を覚えさせるようにしてみよう」

 俺はそういった後、頭の中でその方法にかかる手間を思い返し、少し頭痛を覚えるがやることにしたからには、全力を尽くすことにしよう。レイリーと副官たちにも、覚えてもらえれば負担が減るから頑張ってもらいたいものだな。

 休憩が終わり、方針の変更を告げ、2列に並んでもらう。

 右手と左手で1人ずつやることにして、先頭の2人の手を取り、細く細く尖らせた魔力を一瞬だけ、触っている場所、指の先に打ち込む。

 これをすることで、穴の開いた風船のような状態になり、ここから空気が漏れ続けるように、手に魔力を溜めると魔力が漏れ続ける。

 体の外に魔力を出す時は、この穴を自分で意識して作る必要があると考えている。

 押し出そうとしなければ、俺たちも魔力撃のようなことは出来ない。相手に押し込むことができてはじめて成立する攻撃なので、この技術が一番の要ともいえると思う。

 その穴を強制的に作り、魔力が抜ける感覚から穴を作る感覚を覚えて、穴を自在に作れるようになったら、腕に溜める魔力を増やして、最後に一気に押し出すことができれば、おそらくこいつらの魔力量なら壊すことができるはずだ。

 全員にこの穴の処置を施すと、レイリーたちにできそうか聞いてみた。この3人でも難しいと判断したようで、これができるのは、俺や妻たちくらいかもしれないな。

 妻たちとレイリーたちに差があるとすれば、イメージの部分だと思う。戦闘技術はレイリーが上でも、魔法的な技術は妻たちの方が上のようだな。

 さて、どれだけの体調が今日中に魔力放出ができるようになるかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...