ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,398 / 2,518

第2399話 準備運動がガチすぎた

しおりを挟む
 朝起きると、久しぶりというか懐かしい苦しさで目が覚める。でも、最近もこの起こされ方をしているので、久しぶりでも懐かしくもないのだが、なんでこんなことを思っているのだろう?

 顔にはシンラが張り付いて、こいつも体が大きくなってきたから、こっちも大変なのだ。首に負担がかかるとかではなく、物理的に呼吸をできなくさせる力が上がっているため、若干の息苦しさを感じるから、本当にやめてほしい。

 体も大きくなってきたし、この起こし方はそろそろやめてもらえないものかね。

 両手は例の如く抱きかかえられているような状態なだ。プラムとシオンが協力しているのだろうと思い、お腹のあたりで手をモゾモゾ動かすと……2人の声ではなく、多分スミレとリンドの笑い声が聞こえた。

 混乱しているが、両手を拘束から解いて、顔に張り付いているシンラを引きはがす。視線が合うと、ニヘラと笑った。可愛いけど、その可愛さが余って憎らしく感じでしまうほどだ。

 両手を押さえていたのは、俺が思った通りスミレとブルムだった。プラムとシオンは、ウルとミーシャにつかまっており、両手足をバタバタさせて姉の腕の中で暴れている。つかまえている2人も苦笑いをしているのが印象的だ。

 あの様子から、あの2人を自由にさせると、俺に無用な攻撃を仕掛けそうだから、ウルとミーシャが物理的に抑えてくれていたのだろう。でもなぜスミレとブルムが、シンラに付き合ってこんなことをしたのかはわからない……

 その答えは、一緒に食堂へ向かう間に教えてもらえた。

 俺が考えた通り、プラムとシオンが過剰に攻撃しないように、プラムたちを捕まえていたようだな。スミレとブルムがシンラに付き合った理由は、久しぶりに自分たちもやってみたかったという、可愛い話だった。

 ミーシャ・スミレ・ブルムも、よく俺のことを起こしに来てくれていたっけな。いつの間にかシンラたちが来るようになっていたけど、俺を起こす仕事など取り合うようなものでもないだろう。一番ヒマで元気の有り余っている、下の子たちが任されているだけだろうからな。

 いつものビュッフェ形式の朝食で、洋風の朝食を食べ終えると、俺はさっそく行動を開始した。

 子どもたちに見送られ……7人中5人、プラムとシオンはシンラに夢中でこっちすら見てなかった。2人に無視され寂しいような、5人に見送られ嬉しいような、複雑な気分だった。

 朝食を食べて移動した先は、ダンジョン農園の訓練場だ。

 駐屯地へ行く前に少し体を動かしておきたかったので、ここにきて少しトレーニングをしてから移動するつもりだったのだ。

 妻たちもこの時間にはいないので、俺一人だな。

 訓練用に置いている人造ゴーレムを起動させて、無手による組み手を始める。

 人造ゴーレムは、素手でも鈍器と変わらない強度を持っていて、それに見合った重さもある。何より、鈍器を使うより早く動かせるため、超至近距離での攻防では、無類の打たれ強さを発揮する。

 強度が高いということは言わずもがな、防御力も強度に比例して高くなる。魔核を埋め込んで自動修復もするため、壊すなら一気に壊さないと簡単に治ってしまう。厳密にいえば、へこみや多少の欠けでは、すぐさまに修復されてしまうため、その方法しか倒せないのが人造ゴーレムだ。

 今日は壊すことが目的ではなく、体を動かすのが目的なので、実戦用のプログラムではなく、訓練用のプログラムで起動している。

 相手を壊さずにする訓練用のプログラムでは、勝ったことがない。壊せないのなら、人造ゴーレムに負けはないので、シュリであっても最終的には勝てない。

 訓練用は、勝ち負けではなく、どれだけ的確に体を動かせるかに重点が置かれているので、全力で攻撃を防ぐし仕掛けてくるので、攻撃をかいくぐり守りを固めているところに、いかにして攻撃をあてるか……当いった所に焦点が当てられている。

 言葉にすれば簡単だが実際に行うと、人間より早い判断力と反射神経で、大半の攻撃は後出しじゃんけんのようなもので防がれてしまう。相手を上回るには、相手の処理速度を上回る攻撃をする必要がある。

 壊すことはできないが、肉を切らせて骨を断つような、攻撃を受けても問題ないから、カウンターのような攻撃を仕掛けないようにしているので、処理速度を上回ることは可能だ。

 大体は同じような終わり方になるが、手足と魔法などを使い同時に3ヶ所以上を攻撃して、次の動作が行いにくい状態にしてから、攻撃をあてるという形だな。

 この訓練をして、敵の攻略に役立ったということはほとんどないが、どんな体勢からでも攻撃してくるので、予想だけではなく想像力が鍛えられ、所見の相手でも不意打ちのような攻撃を食らうことはなくなっている。

 対人戦でも技巧を凝らすほど強い相手はほとんどいないし、強い魔物になれば技巧より攻撃力の高さが重要になったりするので、正直役になってはいないけど、訓練としてはほどほどにいい感じになるので、俺は好きだったりする。

 思考するより体が早く動く……こういった感覚が、俺は好きだったりする。

 単純な応酬ではやはり勝ち目がない。向こうはガードをしても、痛みなどが蓄積せずにすぐに修復されるのに比べ、俺は痛みや疲れがたまっていくため、最後には俺の体が動かなくなり負けてしまうという形だな。まぁ、そこまで動けるのなら本当にすごいことなのだが、大体はたどり着くまいにミスをして負けるけどな。

 条件反射のように動いてしまうと、後出しじゃんけんで勝てる人造ゴーレムの攻撃が、防御をすり抜けて当たってしまい、負けてしまう。

 思考するより早く動くというのは、敵によってはいいのだが、人造ゴーレムにとっては最悪だったりする。

 無理やりに意識で体を動かし、危険により反応する条件反射の防御などはそのまま使って、30分ほどの組み手を行った。

 その30分だけでも汗はダラダラになり、呼吸は荒くなり、止まると手足を動かしたくなくなるような疲れが襲ってくる。

 中距離を全力で走った後のような疲労感が襲ってくるような感じだな。体を少しでも動かしてクールダウンをしたいのに動けない感じだ。

 本当に疲れた……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

処理中です...