ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,369 / 2,518

第2369話 寝る前と起きた後の騒動

しおりを挟む
 この世界で焚火は、街の外で野営という危険な状態で行うものであり、楽しむものではないためか、妻たちにはあまり焚火の良さはわかってもらえなかった。だけど子どものウルは、比較的安全な俺たちの近くでしか経験していないので、危険な場所という認識はあまりないようだ。

 それに、周りにいつ従魔たちが、子どもたちに危害が加えられるような状況をよしとするはずもなく、子どもたちが出かけるときは、念入りに周りの魔物たちを処理するので、街の外での危機意識が薄い気がする。

 訓練でダンジョンに入る際は、魔物の間引きは禁止されているので、緊張感をもって訓練をしているようだけどね。

 俺が言うのもあれだけど、従魔たちよ、過保護はほどほどにな。俺は、親だからいいんだ。反論は聞くけど、本当に聞くだけで改善はするつもりはない!

 っと話がそれた。

 町の外の認識が違うからか、妻たちとウルとでは、俺がしている焚火の感想に差が出たみたいだな。

 ウルは、白くてきれいな色と、俺と同じように感じてくれているのが少しうれしい。趣味を共有できているわけじゃないけど、共通点ってうれしいよな。

 特に、異性の子どもだからなおさらな。

 30分ほどのんびりとしたところで、ウルの眠気が強くなったようでウトウトし始めた。

 妻たちにウルを頼もうとしたが、妻たちに自分で運んであげたらいいじゃない、といわれた。俺でもいいなら問題ないんだけど、年頃の女の子は難しいっていうからさ……

 問題ないといわれたので、ウルを抱き上げて移動しようとすると、首に抱き着いてきたためちょっとうれしくなってしまった。妻たちは、俺のほうを見てニヤニヤしている。

 しょーがないだろ! 普段こんなことしてくれなくなったから、俺だって嬉しいんだよ!

 ゲートを通ってベッドへ移動する。ミーシャたちの近くへ寝かせようと思ったのだが、首に手をまわしていたためおろすことができなかった。

 妻たちに相談してみたところ、一緒に寝ても問題ないのだから、一緒に寝ればいいじゃないだってさ。起きた時に俺が近くにいたら、きもいとか思われたりしない?

 そんなことを聞くと、妻たちに馬鹿にされたように笑われてしまった。

 俺の住んでいた日本では、娘を持つ父親の永遠の悩みなんだぞ! 笑わないでくれ!

 高校生までは日本にいたので、それ以上をこの世界で過ごしていたとしても、そう簡単に価値観が変わるわけじゃないんだよな。特に俺は、地球の物を取り寄せることができるからなおさらな。

 これで、この世界の物にしか触れられていない状況であれば、日本のことを忘れているかもしれないけどな。異世界だけど、日本にいるみたいな感覚でいられるから、本当に忘れられないんだよな。

「でさ、本当に大丈夫?」

「も~、問題ないからさっさと寝ちゃいなよ。ついでにミーシャたちの近くに寝てあげたら、あの子たちも喜ぶわよ。この子たちは、あなたのこと大好きだからね」

 ミーシャたちが俺のことを好いてくれるのは、よくわかっているけど、何かの拍子に嫌われたら困るので、結構慎重に行動してはいるんだよな。

 ウルも離してくれなそうだから、このまま寝るしかないか。

 とはいえ、このままだとウルは寝にくいだろうから……おい、暇しているスライムども! ウルの下敷きになりたい奴は前に出てきなさい。

 そういったら、まさか全員が出てくるとは思わなかったわ。こいつら、子どもたち好きすぎだろ……

 手近にいる3匹を捕まえて、ウルの体勢がきつくならないように支えてあげるようにお願いした。

 そうすると、柔らかな体を活かしてウルの体に負担がないように支えてくれた。

 子どもたちは寝ているが、俺はまだ眠気が来ないので、ウルに抱き着かれながら少し小説を読むことにしよう。妻たちは、もう少し話をしてから寝るそうなので、ベッドのテントから出てリビング用のテントへ移動していった。

 娘たちのスヤスヤと聞こえる寝息と、たまに聞こえるシンラのうめき声を聞きながら俺は、小説を読んでいるとすぐに眠気がきてしまった。

 子どもたちの寝息って、ここまで睡眠を促す効果があるのだろうか?

 ゆっくり寝れる分には問題ないからいいか……この世界で使えないけど、キャンピングカーなんかを作って遊ぶのも面白いかもな……馬車のほうは一応改造したけど、キャンピングカーの代わりになるほどの機能はないから、合わせて作るのも面白いかもしれないな。

 よし、明日は綾乃とバザールを呼び出して、この世界に来て初めて車を召喚してみることにするかな。そっちを改造しながら、同じような仕様で馬車を作ってみよう。

 もう眠気が限界なので、寝ます……



 気持ちのいいまどろみの中に漂っていると、

 キャァ!!

 と声が聞こえたので、俺の意識が一気に覚醒した。

 首に巻き付いていたウルの手はなくなっているので、バッと体を起こして周りを確認する。マイワールドの中では危険はないはずだし、スライムたちがこれだけいる中で誰かに危険があったのか……

 と、周りを確認していると、顔を真っ赤にしたウルがうつむいていた。顔が赤いと分かったのは、耳まで赤くなっていたのでそう判断したのだ。

 どうやら、目を覚ましたら俺に抱き着いていたので、恥ずかしくなって声を上げてしまったようだ。

 起きたら俺の顔が近くにあってキモ! とかで声をあげられたわけじゃなくてよかったわ。その話を聞いてうらやましかったのか、ミーシャたちも俺に抱き着いてきた。

 うむうむ、お父さん嫌い! とかじゃないから、俺はうれしいぞ! ウルも恥ずかしがってないで、こっちに来るといい。ミーシャたちもいるから恥ずかしくないだろ。

 そういっていると、何かの遊びかと勘違いしたシンラが、俺の背中に頭をぶつけてグリグリと押し付けてきた。それを真似して、プラムとシオンまで来た。嫌われてたら近付かれもしないから、嫌われていない証拠だろうな。うれしいかぎりだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...