ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,332 / 2,518

第2332話 こだわりの光る職人

しおりを挟む
 俺が夢中になって食べていると、シルキーたちが、料理において食べる際の温度も大切な調味料の一つだと、教えてくれた。冷えた料理が悪いというわけではないが、料理は温かい方が美味しく感じるものが多いのも確かだ。

 すぐ思いつくもので言えば、ラーメンとかな。他にもタコ焼きやお好み焼きは熱々の方が、断然おいしく感じる。

 初め料理の温度を調味料に例えたのは、訳が分からなかったが、説明を受けて納得した。

 俺たちがイメージする調味料とは、塩コショウなどが一般的だろうが、シルキーたちが使った調味料という言葉は「味を調えるための材料」という意味だったのだ。

 同じ味付けでも、温かい時と冷たい時では、味の感じ方が違う。その部分にフォーカスを当てて、調味料という言葉を使ったのだ。

 市販の冷たいコーヒー牛乳をしばらくして飲むと、ものすごく甘く感じたことは無いだろうか? 調理されたおかずを冷たいまま食べたら、塩っ辛く感じたことは無いか?

 そういわれ、俺は昔の事を思い出し、そうだった記憶があった。

 温かいものの方が甘みを感じやすく、冷たいものの方は塩味を感じやすい人間の体から考えれば、温度もれっきとした調味料と言えるのではないだろうか。

 熱々のお肉は、ドンドンと俺の口の中へ運ばれていく。付け合わせは、ポテトサラダだ。口やすめと言っていいのかは分からないが、これはこれでまた美味い。

 肉を堪能している間に、次の注文をしておく。天ぷらも出来るように準備をされていたら、頼むしかないよね!

 天ぷらの順番は、おまかせするから、俺の好みに合わせて出してほしい。

 難しい注文をするが、シルキーたちは迷いなく調理を始めた。

 お肉を食べ終わり一息ついていると、準備ができたのか1品目が紙のお皿の上に乗せられた。

 おや? 白に少し赤みがかった色のついた、少し厚めの千切り状のものがかき揚げになって出てきた。

 俺の知識の中にはこんなものは無いのだが、これが俺の好みに合ったものなのか?

 食に関してシルキーたちに絶大な信頼を寄せているが、見ただけでは良く分からないのだが……少量の塩をかけてくれたので、箸でつかんでから一口で半分程食べた。

 俺の知っている形状とは違うミョウガだった。そういえば前に、ミョウガダケっていう、簡単に言えばもやしのように食べる部分が育つ過程を、暗いところで過ごさせると、伸びた茎も白く柔らかく、美味しく食べられると言っていたあれだな。

 この赤みは、普通のミョウガと同じで、太陽の光に当たると、赤く色が付く原理と同じで見栄えをよくするために、太陽の光に短時間当てるようだ。当てすぎると、ミョウガの緑色をした茎のように硬くなり、食べられたものではないとのことだ。

 味が濃いけどさっぱりするミョウガは、食事の最後ってイメージがあるけど、シルキー曰く「お肉を食べた後なので、これが最適解だと考えています」だってさ。

 脂っぽいものが続いているけど、何でか知らないがさっぱりしていると感じている。

 良く分からんが、これがミョウガの天ぷらの効果なのだろうか?

 何かのテレビで見たことがある話では、こだわりのある天ぷら屋さんでは、ミョウガなど味の濃いものは最後に出すという話を見たことがある。そういう所だと、あっさりとしているえび天などは最初に出てくるものらしい。

 料理人としてシルキーたちも、納得できる話だそうだが、シルキーたちのこだわりは、目も前にいる食事を食べてくれる人が、一番美味しいと思えるようなタイミングで、料理を提供することなのだそうで、食事を食べる人、タイミングによって、全然違う品を提供するようだ。

 今日の俺は、脂っこいものを食べたので、口の中をリセットするために、味が濃く既知の中をさっぱりさせるものを選んだんだとさ。

 食べる順番にこだわる人も、人やタイミングに合わせて出す物を買えるシルキーも、どちらも職人であることには間違いないだろう。

 次々に揚げられた天ぷらが、紙の敷いてある皿へ乗せられていく。俺が好きなアナゴは、甘いタレを使うので、後半の方に持ってくる形になるけど問題ないか、と聞かれたので、全てお任せにしている。

 初めは塩で食べていたが、いつの間にか天つゆが準備され、最後の方に大きなアナゴが一本まるまると出てきた。甘いタレをかけているのではなく、塩・天つゆ・甘いタレを俺が選べるようになっていた。おすすめ通り、塩・天つゆ・甘いタレの順番で食べる。

 同じ食材でも、こうまで味の印象が違うと驚きがあるな。

 どの食べ方も、今までにしたことがあり美味しかったのだが、食べ比べのようなことはあまりしてこなかったから、とても新鮮だ。

 天ぷらを最後まで食べ、次の料理を待っていると、

「ご主人様、まだお腹の具合は大丈夫でしょうか?」

 と質問された。

 理由が分からずに首をかしげていると、

「ご主人様が食べた食事の量は、現状でいつもの倍くらいは食べていらっしゃいますが、苦しかったりしないのでしょうか?」

 だとさ。

 改めて自分の食べたモノを思い出してみると……うん、肉と天ぷらだけだが、明らかに普段の倍近く食べている。肉は切ってからの提供だったが、明らかに2キログラム以上食べているし、天ぷらも何十品と食べている。

 普段ならどちらか一方で限界だったはずなのだが、今日は簡単にペロリと食べてしまった上に、まだ余裕がありそうだ。

 魔力枯渇をしたせいで、体が栄養を求めているのだろうか?

 大体、後一食分くらいは食べられそうだと判断して、シルキーに注文する。

 脂っこいものが続いたので、さっぱりとしているがお腹にたまるモノを準備してくれた。

 心地よい満足感に包まれて、人をダメにするクッションの上に寝転がっている。

 俺の近くでは、自分だって負けていないと対抗心を何故か燃やしているスライムたちがうようよといる。本当にこいつらは何がしたいのやら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...