ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,290 / 2,518

第2290話 延長戦Part4

しおりを挟む
 後頭部に衝撃を受けるが、ダメージは全くなかった……

 あっ、これって保護シールが壊れてダメージが無効になった奴だな。

 レミーがラストアタックを狙ってくると思って対応したのに、その裏をかかれてソフィーがラストアタックを狙っていたのか。どっちでもいけるように狙っていた感じもするから、臨機応変に対応する形だったかもしれない。

 負けは負けだけど、模擬戦じゃなかったら1人は死んでるから、作戦としてはダメだね。格上相手に損害無しで倒そうというのは都合のいい話だが、誰もかけることなく戦うことを優先してきたからな。もし手に負えなかったら、最終兵器を使ってみんなで逃げる。

 それが常套手段だと俺は思っている。

 本当にピンチになったのが、フェンリルの時、奴隷兵を相手にした時、聖国のSSSランク冒険者の侵攻してきた時くらいだからな。その他は、厳しい時はあっても、絶体絶命とは言えなかったから、秘密兵器なんて使わずに乗り越えてるんだよな。

 フェンリルの時はフラッシュバンで、奴隷兵の時は気化爆弾、SSSランクの時はリバイアサン、という隠し玉を使ったんだよな。もしもの話をすれば、誰かを犠牲にしていればどの時も兵器を使わずに済んだかもしれないけど、使うことでみんな助からるなら、迷わずそっちを選ぶよね。

 それがどんなに非道な物だったとしても、味方の犠牲を減らすなら相手にどんなことをしてもいいって俺は思っている。それが当たり前の世界だし、もっと言えば俺はこの世界でも上位の人殺しだからな。街1つを皆殺しにしている……

 そうしなければ、もっと多くの血が流れることが分かっていたので、俺の意思であの人たちは殺したんだよな。

 っと、話が逸れた。

 模擬戦は君たちの勝ちだけど、その勝ち方は俺たちのスタイルじゃないから、始めからどちらかが負け判定をもらうような戦い方はダメだ。それが作戦だったとしても、2人で勝つことが大切だ。

 模擬戦で死なないから大丈夫……とかそういう事ではない。軍事訓練で死亡判定が出るのとは話が違う。軍隊は、死者が出ることも前提に戦術を組むけど、俺たちはそうじゃないからその作戦は受け入れられないぞ。

 そうでもしないと勝てないというのなら、もっともっと強くなりなさい。それでもだめなら、違う方法を考えよう。俺は、誰も失いたくないから訓練を続けているわけだしね。

 まだ使った事のない兵器も、俺たちが生き残るための最終手段として準備しているわけだしね。

 ということで、勝ちは勝ちでもその勝ちは良くない勝ちだからな!

 とはいえ、負けるとは思ってなかったから、もう少しギアをあげて戦わないと、本当の意味で負けちゃいそうだな。1戦目もかなり怪しかったし、2戦目は模擬戦では負けてるからな。気合を入れなおすか!

 俺は両手で両頬を強く叩く。

 その音に妻たちは驚いていたけど、俺の目の色と表情が変わった事を理解したのか、妻たちが気を引き締めたのが分かった。

 次はサーシャとネルのコンビが、俺と模擬戦をするようだな。

 2人を見て思う……サーシャはタンクではあるが、回避を中心に避けながらターゲットを引き付ける避けタンク。ネルは、回復担当しているがその本領は、シェリルに次ぐ近接戦のエキスパート。どちらも動きが早く力の強いコンビだ。

 次に待機しているシェリルとイリアより、こっちのコンビの方がずっと厄介な気がする。何でもありの模擬戦であれば、前者の方が圧倒的に強いだろうが、色々ルールを設けて戦っている今回に限って言えば、後者の方が圧倒的に強い気がする。

 それこそ、さっきみたいに腑抜けていたら、真正面から戦われても負けは必至だな。

 そう考えると、この2人なら小細工なしに真正面から来るか?

 サーシャとネルとの模擬戦が始まる。

 2人の速度は……同じくらい? スピードを合わせてきたか!

 あ~、これ一番嫌いなタイプかも。

 寸分の狂い無く同時に攻撃してきた。同時に攻められると、受けることができても投げに繋げる際に、一番の隙を見せることになる。この2人は、レミーと違って肉体活性で俺の防御を貫いてくるから、隙を晒すのは怖いんだよな。

 左右から来る攻撃をさばきながら、俺はどう攻めるか悩まされている。

 投げ技だけで対抗しようと考えていたけど、さすがにそれは無理だな……となれば徒手格闘も追加して、隙をついて投げる必要がありそうだ。

 攻撃をさばきながら、隙をついて蹴りをはなつが、予想していたのかきれいに躱されてしまった。この2人油断もしてないな。武器以外何でも使ってくることを想定している動きだった。

 ここまで考えているなら、更にギアをあげていこう。

 相手の拳に合わせて掌底を打ち込んだり、蹴りを受けるのに踵や膝などで受け、攻撃してき難くさせた。

 この受けされると、痛いんだよね。鍛えていてもそれ以上の部分で受けられると、下手すれば骨折することもある。

 ただ2人同時なので、片方が失敗してもすぐに違う方が次の攻撃を仕掛けてくるので、こちらの反撃があまり上手くいっていない。

 カウンターをするにしても、もう片方に隙を晒すのはかなりきつい。しばらく我慢することにしよう。2人の攻撃が単調になってきた瞬間を狙う……

 5分ほど粘っていると、2人も攻めあぐねてどうしようか悩み始めている。2人だから意思疎通を取れないと連携が難しい。

 こうなれば俺の方が有利だろう。

 少し大振りになったネルの拳を掴み、そのまま引き寄せながら俺の体も近付けて、脇の下に肩が入るようにして跳ね上げて投げ飛ばす。

 肘にダメージ無くても脇を軸にして投げたから、右腕は回復しないと使い物にならないだろう。骨折はしていなくとも、脱臼位にはするつもりで投げているので、手加減などはしていない。

 向かいのサーシャの攻撃を回避するために、サーシャの方へ投げているので、隙を晒さずに済んだ。

 できればこのままネルを落としてしまいたいが、サーシャのカバーで追撃が難しい……が、前に踏み出して多少のダメージを受けても潰しておきたい。

 サーシャを攻撃して、カバーしているネルから離そうという魂胆だ。もし逃げなくても、そのままサーシャを潰せる可能性があるので、多少無理をしてもツッコむ!

 先ほどまでは高く構えていた体を、地面すれすれに移動する。

 どうやら、逃げる気はなさそうだな……じゃぁ、俺のすることはサーシャを倒すことに力を注ぐか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...