ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,267 / 2,518

第2267話 子どもたちの成長

しおりを挟む
 向かい合っているウルたちは妻たちの助言を受け、シュリに対するような手加減無しの攻撃を仕掛けてくるようだ。

 あれ? さっきまでウルはいなかったはずなのに、いつの間にここに来たんだ?

「お父さんが色々悩んでいる間に呼ばれたんですよ。ちょうど体を動かす準備をしていたので、急いでこちらに来ました」

 3対1ではなく4対1のようだ。ウルを含めた模擬戦って、余りしたことがないんだけど、ミーシャたちの連携が良くなる感じなんだよな。ウルの指揮で4人が動く感じで、かなり苦戦した覚えがある。

 相談も終わり、戦い始めるようだ。

 戦闘が始まるまでは俺に主導権は無く、子どもたちのペースで話が進んでいく。戦う前の相談も、負け判定が出た後の相談も、全部子どもたちに都合のいいタイミングだ。戦い始める前に一言あるが、それだけである。これを利用して、油断しているところを攻撃してくることもあるので、一言にも注意が必要だ。

 妻たちの教えを受けているが、俺の思考に近い形で戦うので、正直な所妻たちより戦いにくいのがこの子たちなんだよね。強さは、妻たちの方が上でも戦い難さが違うんだよな。

 そんなことを考えていると、声がかかる。

「行きます!」

 ウルの宣言で、ミーシャたち3人が前衛として突っ込んできた。

 一番力の強いミーシャが真ん中で、スミレとブルムが距離を置いて左右を走ってくる。

 この子たちの定石パターンだな。ここから始まる攻撃の起点は、妻たちでも油断をすれば負け判定を貰ってしまうほどには、洗練された攻撃パターンである。

 この攻撃の嫌な所と言えば、4人同時攻撃が可能だということだ。ミーシャたちの突撃に合わせて、死角からの魔法が飛んできたり、4人全員が違う魔法で攻撃してきたり、突っ込んできたと思ったら距離を取って攻撃してきたりと、開始が同じでもいろんな派生があるのが嫌な点だ。

 単純に手数が4倍になるので、行動が後手後手になってしまうのだ。先手を打とうと攻撃しようとすれば、ウルの牽制か距離を取っての対応をされてしまう。

 この始まり方をした場合は、基本的に受けに回り読み勝ちするか、相手を上回る攻撃をするしかない。

 大薙刀を持っていたが、さすがにこれでは対応できないので、片手剣盾のオーソドックスなスタイルになる。実際の所、大薙刀でも対応できなくなるわけではないが、手数をさばく時に武器の関係上どうしても一撃が重くなりがちなので、武器を変えたのだ。

 遠心力を使って武器を弾いていくと、どうしても俺の力に加算された攻撃力になってしまうので、手加減しても子どもたちに怪我をさせてしまう可能性があるからだ。

 じゃぁ初めから使うなって思うだろうけど、近付かれた上に手数が多くなると反撃ができないから、同時突撃でなければ、大薙刀で牽制しながら距離を取って戦うんだけどね。

 やっぱり安全を期す為に一番初めに来た攻撃は、ウルからの魔法攻撃だ。しかも一点集中突破タイプではなく、体を広く狙った拡散タイプの土と氷の魔法が、3人の間から放たれている。

 ミーシャたちの突撃が絶妙な時間差攻撃になるタイミングでの魔法だ。

 距離を取っても魔法が当たることは回避できないので、防ぐ選択肢を取る。それと同時に攻撃を回避するための策として、

『アースウォール』

 全身に纏っていた魔力を足に集中させ、強く踏み込み魔法を発動する。踏み込まなくても魔法は発動できるが、地面を媒体とする場合は、起点があった方が発動しやすいので、足に魔力を集中させ踏み込むと同時に魔法を使っている。

 俺の前面をカバーするように出現した四半球の壁は、ウルからの魔法攻撃を防ぎ、ミーシャたちの視界から俺を消すことに成功する。

 距離を取りミーシャたちを視界におさめようと考えたのだが、それより早くアースウォールが不穏な音を発した。

 硬い何かで叩いたような音がすると同時に、アースウォールが砕ける。

 ただ壊されただけではなく、アースウォールの魔力を上書きして、自分たちの攻撃用に転換したのだ。

 人の魔法には基本的に干渉できないのだが、ミーシャたちは足に集めた魔力で部分的に俺の魔力を大幅に上回り、攻撃に転用したのだ。

 俺の魔力がアースウォール全体にあるのに対して、集中して突破した上に書き換えを行ったようだ。

 二手も遅れた状態では防ぐこともできない……書き換えによって攻撃力は落ちている魔法なので、間に合う範囲で最大限の強化を施して、ミーシャたちの攻撃を受ける。

 バックステップを踏もうとしていたので、踏ん張りは聞かなくなっているが、それが功を奏して威力の軽減につながる。

 二手の遅れは、この後のミーシャたちの追撃も受けることを意味している。

 俺の姿をしっかりと確認した3人は、両手に持っている武器で俺の事を狙ってくる。

 ウルの装備は杖と盾、腰に剣があり、ミーシャたち3人は短剣を両手に持っている。

 掛け声をかけて、攻撃する場所を言っているのはマイナス点ではあるが、3ヶ所同時攻撃はかなり有用な攻撃方法である。

 しかも2人が足を狙ってくるあたり、かなり訓練していると思う。1つだけなら大したことは無くても、同時に何ヶ所も狙われた中に足があると、途端に砂漠難易度が上がる。上半身を狙っているのであれば、縦や剣を振って弾き飛ばせばいい。

 だけど、低い位置からの2ヶ所と正面からの1ヶ所の攻撃は非常に捌き難い攻撃だ。

 俺は咄嗟に剣を地面に突き立て、地面から両端を離す。それと同時に正面からのミーシャの攻撃を、盾で強引に弾き飛ばした。ミーシャのガードは間に合うが、体重の差もあり吹き飛ばされることとなる。

 攻撃の続いているスミレとブルムだが、低い位置からの攻めを変えるつもりはないのか、体勢を低くしたまま、一番近くににある部位に攻撃を仕掛けてくる。スミレは右手、ブルムはあげた右足だ。

 さすがに躱しきれないと判断したので、手を狙っているスミレの攻撃は籠手で受け、右足への攻撃は高く上げる形で回避する。

 攻撃は終わっておらず、2人ともそのまま右手を狙ってくるのだが、その前にウルの土魔法攻撃が防具の隙間を狙って飛んでくる。

 本気で殺しに来ているんじゃないか? と思うような攻撃だ。

 土魔法は何とか盾で防ぐが、右手はどうしようもないな……右腕の力だけでジャンプをして、剣を手放すことにした。

 武器はいくらでもあるからな。

 右手の力だけで距離を取り、現状で近距離戦は不利と判断した俺は、武器を更に持ち替えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...