ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,226 / 2,518

第2226話 天国と地獄

しおりを挟む
 誰にも干渉されないで、ゆっくり寝るのは久しぶりな気がする。

 目が覚めると、時計は9時を指していた。2時にはベッドで寝ていたはずなので、大体7時間ほど寝たかな。十分すぎる睡眠時間だ。

 今日はあらかじめ伝えておいたので、今から食堂へ行っても、何かしら食べることができるだろう。

 朝食の時間は過ぎているのだが、食堂が何やらにぎやかだ。シルキーやブラウニーが怒っている様子が無いので、何の問題も無いってことだな。

 食堂へ入ると妻たちの輪ができており、その中心にはシンラたちがいるのが見えた。何をしているのかと思ったが、ファッションショーみたいなことをシンラたちがしていた。

 服に興味を持ち始めたのか、オシャレをしたい年ごろかと思ったのだが、3人の表情を見ているとそうでは無い事に気付いた。げんなりしているあの表情は、やらされているといった感じなのだ。

 そこから導かれる答えは……着せ替え人形にさせられているということだな。ミーシャたちも良くやっていた気がするが、あの子たちは新しい服が好きなので、ノリノリで着替えていたと思うが、この子たちは違うようだな。

 疲れた表情をしていても、色々準備していた母たちには勝てないのか、渋々付き合っているように見えるな。

 席へ着くと食事が運ばれてくる。朝は大体ビュッフェ形式なのだが、予定の時間より遅く起きてくることが分かっていたので、用意されたものを食べることになる。

 今日は、パン食なんだな。朝食を自分で食べる時は米が多いのだが、パンを出されたからと言って食べないということは無い。ポテサラにスクランブルエッグ、サラダ、ベーコンなどなどがモリっと盛り付けられて出てくる。

 すぐに2枚ずつ2回に分けてトーストをしてもらう。1回目のトーストには、サラダに入っているレタスを少し取り分けて乗せ、ポテサラをその上に置き、更にレタスを乗せてトーストに挟む。トーストポテサラサンドを自分で作りかぶりつく。

 こういうのは、ホッとサンドって言うんだっけ? ポテサラならトーストしなくても美味いのだが、今日はなんとなくトーストしたい気分だったので、満足している。

 2回目のトーストは、スクランブルエッグに少しマヨネーズを混ぜ、トーストしたパンにもマヨネーズを薄く塗る。先ほどと同じくレタスを乗せ、スクランブルエッグを乗せ、カリカリに焼いたベーコンも大量に乗せ、レタスではさみトーストしたパンではさむ。

 本来のBLTサンドは、ベーコン・レタス・トマトなのだが、俺の場合は、ベーコン・レタス・タマゴのBLTサンドを作ってかぶりつく。

 英語で書くとBLTではなく、BLEになりそうだが……そこは気にしない!

 食卓に上がる食パンで6枚とか8枚切りがあるが、うちでは6枚切りが主流であり、シュリを除いた妻たちでも平均で1斤は普通に食べる。俺はそれより食べるのだが具を大量に挟んで食べたので、それなりにお腹に溜まっている。

 だけど、まだ少し食べ足りないので、追加でデザートチックなシュガーバタートーストを1枚注文する。その間に残ったタマゴ、ベーコン、サラダをモリモリ食べる。

 そう言えば、子どもたちの食パンは、8枚切りを使っているな。パンだけでお腹がいっぱいにならないように、具が多めのサンドイッチを子どもたちは食べることが多い。後は、かぶりついてもこぼしにくい様に工夫されていたりするな。

 シュガーバタートーストが来るまで、シンラたちの疲れた顔を見ながらボーっとしていた。

 トーストが届くと……注文したのと少し違う物が出てきた。シュガー……砂糖ではなく、王蜜を使ったバターハニートーストだった。何故に? と思ったが、運んできたブラウニーが外を見るようにコッソリ教えてくれた。

 そうすると、普段はあまり巣から離れないクイーンハニービーが、庭にいてこちらに手を振っていた。護衛のハニービーたちも一緒に……手を振り返すと満足したのか、巣へ帰っていった。

 ブラウニー曰く、久しぶりに帰ってきたから、是非俺に王蜜を食べていただきたいということで、今朝運んできたらしい。

 王蜜は美味いんだけど他の素材が負けるから、合わせるのが難しいんじゃなかったか?

 そこらへんもぬかりなく、俺がパン食の時によくシュガーバタートーストを食べるので、それの代わりになるように、バターの改良も進めていたようだ。美味しい牛乳から美味しいバターが作れるのは当たり前なのだが、ダンジョン農園の品種改良した牛の牛乳で作っても負けてたのに、何が起きたんだ?

 バター専用にさらに品種改良した牛から作ったバターに、少量のパルミジャーノレッジャーノチーズをまぶして王蜜をかけたのが、今目の前にあるトーストだ。

 バターとチーズもあうし、チーズとハチミツもあうし、ハチミツとバターもあう。すべてがマッチしていて美味いのだ。普通に作ったら分からないが、ブラウニーたちが作ったバターとチーズ、それに王蜜が合わさることで、本当に美味い!

 多分だけど、全部が混ざり切っておらず、味がまばらになっていることが、美味しさを引き上げている気がする。カレーなんかで、全部をごちゃ混ぜにするより、少しずつ混ぜて食べる方が美味しく感じるのと同じ原理だ。

 卵かけご飯でもガッツリ混ぜるより、少し混ぜて食べる方が美味しいと思うあれとも同じだな。人間の舌は一辺倒の味より、少しバランスが悪い方が美味しく感じるらしい。限界はあるが、そういう物なんだとか。

 それを利用した作品がこの目の前にあるトーストなのだろう。

 最後の1枚のつもりで注文したのだが、あまりにも衝撃的な美味しさだったので、追加で2枚も頼んでしまった……

 トーストの時間もあったので、俺の朝食はいつもより時間がかかっている。普段なら15~20分もあれば終わっているが、今日は30分程かかった。

 その間もシンラたちは着せ替え人形になっており、出発する前からぐったりしている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...