ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2226話 天国と地獄

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 誰にも干渉されないで、ゆっくり寝るのは久しぶりな気がする。

 目が覚めると、時計は9時を指していた。2時にはベッドで寝ていたはずなので、大体7時間ほど寝たかな。十分すぎる睡眠時間だ。

 今日はあらかじめ伝えておいたので、今から食堂へ行っても、何かしら食べることができるだろう。

 朝食の時間は過ぎているのだが、食堂が何やらにぎやかだ。シルキーやブラウニーが怒っている様子が無いので、何の問題も無いってことだな。

 食堂へ入ると妻たちの輪ができており、その中心にはシンラたちがいるのが見えた。何をしているのかと思ったが、ファッションショーみたいなことをシンラたちがしていた。

 服に興味を持ち始めたのか、オシャレをしたい年ごろかと思ったのだが、3人の表情を見ているとそうでは無い事に気付いた。げんなりしているあの表情は、やらされているといった感じなのだ。

 そこから導かれる答えは……着せ替え人形にさせられているということだな。ミーシャたちも良くやっていた気がするが、あの子たちは新しい服が好きなので、ノリノリで着替えていたと思うが、この子たちは違うようだな。

 疲れた表情をしていても、色々準備していた母たちには勝てないのか、渋々付き合っているように見えるな。

 席へ着くと食事が運ばれてくる。朝は大体ビュッフェ形式なのだが、予定の時間より遅く起きてくることが分かっていたので、用意されたものを食べることになる。

 今日は、パン食なんだな。朝食を自分で食べる時は米が多いのだが、パンを出されたからと言って食べないということは無い。ポテサラにスクランブルエッグ、サラダ、ベーコンなどなどがモリっと盛り付けられて出てくる。

 すぐに2枚ずつ2回に分けてトーストをしてもらう。1回目のトーストには、サラダに入っているレタスを少し取り分けて乗せ、ポテサラをその上に置き、更にレタスを乗せてトーストに挟む。トーストポテサラサンドを自分で作りかぶりつく。

 こういうのは、ホッとサンドって言うんだっけ? ポテサラならトーストしなくても美味いのだが、今日はなんとなくトーストしたい気分だったので、満足している。

 2回目のトーストは、スクランブルエッグに少しマヨネーズを混ぜ、トーストしたパンにもマヨネーズを薄く塗る。先ほどと同じくレタスを乗せ、スクランブルエッグを乗せ、カリカリに焼いたベーコンも大量に乗せ、レタスではさみトーストしたパンではさむ。

 本来のBLTサンドは、ベーコン・レタス・トマトなのだが、俺の場合は、ベーコン・レタス・タマゴのBLTサンドを作ってかぶりつく。

 英語で書くとBLTではなく、BLEになりそうだが……そこは気にしない!

 食卓に上がる食パンで6枚とか8枚切りがあるが、うちでは6枚切りが主流であり、シュリを除いた妻たちでも平均で1斤は普通に食べる。俺はそれより食べるのだが具を大量に挟んで食べたので、それなりにお腹に溜まっている。

 だけど、まだ少し食べ足りないので、追加でデザートチックなシュガーバタートーストを1枚注文する。その間に残ったタマゴ、ベーコン、サラダをモリモリ食べる。

 そう言えば、子どもたちの食パンは、8枚切りを使っているな。パンだけでお腹がいっぱいにならないように、具が多めのサンドイッチを子どもたちは食べることが多い。後は、かぶりついてもこぼしにくい様に工夫されていたりするな。

 シュガーバタートーストが来るまで、シンラたちの疲れた顔を見ながらボーっとしていた。

 トーストが届くと……注文したのと少し違う物が出てきた。シュガー……砂糖ではなく、王蜜を使ったバターハニートーストだった。何故に? と思ったが、運んできたブラウニーが外を見るようにコッソリ教えてくれた。

 そうすると、普段はあまり巣から離れないクイーンハニービーが、庭にいてこちらに手を振っていた。護衛のハニービーたちも一緒に……手を振り返すと満足したのか、巣へ帰っていった。

 ブラウニー曰く、久しぶりに帰ってきたから、是非俺に王蜜を食べていただきたいということで、今朝運んできたらしい。

 王蜜は美味いんだけど他の素材が負けるから、合わせるのが難しいんじゃなかったか?

 そこらへんもぬかりなく、俺がパン食の時によくシュガーバタートーストを食べるので、それの代わりになるように、バターの改良も進めていたようだ。美味しい牛乳から美味しいバターが作れるのは当たり前なのだが、ダンジョン農園の品種改良した牛の牛乳で作っても負けてたのに、何が起きたんだ?

 バター専用にさらに品種改良した牛から作ったバターに、少量のパルミジャーノレッジャーノチーズをまぶして王蜜をかけたのが、今目の前にあるトーストだ。

 バターとチーズもあうし、チーズとハチミツもあうし、ハチミツとバターもあう。すべてがマッチしていて美味いのだ。普通に作ったら分からないが、ブラウニーたちが作ったバターとチーズ、それに王蜜が合わさることで、本当に美味い!

 多分だけど、全部が混ざり切っておらず、味がまばらになっていることが、美味しさを引き上げている気がする。カレーなんかで、全部をごちゃ混ぜにするより、少しずつ混ぜて食べる方が美味しく感じるのと同じ原理だ。

 卵かけご飯でもガッツリ混ぜるより、少し混ぜて食べる方が美味しいと思うあれとも同じだな。人間の舌は一辺倒の味より、少しバランスが悪い方が美味しく感じるらしい。限界はあるが、そういう物なんだとか。

 それを利用した作品がこの目の前にあるトーストなのだろう。

 最後の1枚のつもりで注文したのだが、あまりにも衝撃的な美味しさだったので、追加で2枚も頼んでしまった……

 トーストの時間もあったので、俺の朝食はいつもより時間がかかっている。普段なら15~20分もあれば終わっているが、今日は30分程かかった。

 その間もシンラたちは着せ替え人形になっており、出発する前からぐったりしている。
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