ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2090話 建設開始

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 橋脚の基礎を支える杭の長さを土木組の子たちが決め、岩盤まで打ち込んでいく。梃子の原理を使って、棒を地面に埋めていく道具がある。4人で4方向に向かって伸びている棒を上下に動かして、地面に埋めている。

 梃子の原理を使っているので、棒を上に持ち上げると中心にある杭が下に埋め込まれていく。こうやって見ていると……面白いな。土木組の子たちが一生懸命棒を動かすと、杭が埋まっていくので何かすっきりする。

 ってか、こんな道具があったんだな、知らなかったぜ。地球にならそれに代わる機械があるだろうけど、人力で大規模に杭を打ち込む道具は無いんじゃないかな? 基礎を作って橋を通す技術があるなら、人力でやる必要もないから、廃れた道具なのでは?

 どうでもいい事を考えながら、みんなの作業を見守った。

 必要本数の杭を打ち込んだところで、次の作業へ移る。硬い岩盤に杭を打ち込んだので、それでも十分なのだが……ここは、更に周囲を魔法を使って固めることで、頑丈にする。魔力は休憩すれば回復するので、安全にできるならその方法を取らない理由はない。

 ここら辺の魔法はみんなも慣れたもので、簡単に説明するだけで問題なく作業することができた。街や地区の増設を頑張っているだけあるな。

 そのまま橋脚の土台を作り、橋脚を作った。後は眼鏡橋風にアーチ状に作っていくのだが、それは型が必要になってくるので、その型を作成していくこととなる。

 アーチの距離は10メートルほどだ。本来ならここまで長い距離で作らないのだが、魔法を使用した眼鏡橋作成なので、問題なく作れることも確認しているので、この距離で作ることになっている。

 アーチに合わせた角度で作られているレンガ……というか硬質な石だが、いくら精巧に作られていたとしても限界はあるので、この距離に決めたと言っていたっけな。

 アーチの型は、鍛冶を嗜んでいなかった土木組には作れなかったので、俺たちが代行して作っている。ここら辺は街の工房では難しいが、老ドワーフたちなら問題なく作れる物だ。弟子たちでも時間をかければ作れるので、ここでわざわざ鍛冶まで教えることはしない。

 まぁ、鍛冶で作れるとは言っても時間がもったいないので、今回は俺のクリエイトゴーレムでサクサクッと作っていく。馬車が1台ずつすれ違える幅と歩行者も通れるように、余裕をもって10メートルの橋の幅で作っていく。

 俺が考えているより、大分広く作ることになったな。馬車なんて1台が通れるくらいで十分だと思ってたし、そもそもこの橋に馬車を走らせるつもりもなかったんだけどな。いつどこで計画が変わったのだろうか?

 馬車に関しては、地下通路を通って街へ向かう道に合流する形にする予定だったからな。カエデとリンドの話では、馬車を通さないのは壁側の他国へ続く側の橋だけだってさ。あそこは跳ね橋にするみたいなので、当初の計画通りだな。

 型が完成したのでそれを元に土木組が石橋のアーチを組み始める……1個が何十キログラムもしそうな石を、軽々と持ち上げて協力してアーチを作っている。慣れてきたと思ってたけど、日本のそこらへんにいるような女の子が、アスリートもビックリな重量を軽々持ち上げてるな。

 やはり、大まかにアーチのサイズを決めていたが、最後に準備した石がはまらなかった。まぁ、これが普通なんだよね。寸分違わぬ同じサイズの石を準備するのは困難だ。おそらくそれができるのは、ダンジョンマスターのスキルか、ノーマン位だな。

 俺だって作れば誤差は必ずある。それでも、積み上げて作って魔法で修正可能だった炉は、難しいものではなかったな。だけど橋のアーチは、長さを正確に計算して、必要個数を正確に打ち出して、それを寸分違わぬ形で作るなんて無理無理。

 だから、角度だけはしっかりと決めて、多少のずれは後で魔法で修正する方法をとった。

 最終的には魔法ですべてをくっつける予定だが……石垣って石同士が嚙み合っていて、多少の地震なら崩れないんだっけ? 石垣にはモルタルのような接着剤は使わないから、水をため込まないとは聞いたことあるな。

 地震の事があれば気にする必要があったかもしれないが、この世界は魔法でも使わない限り大きな地震は無いみたいだから、気にしなくてもいいか。メンテナンスも土魔法使いがいれば、問題はないだろうしな。

 元々の計画通りにしようか。

 アーチの最後の部分に差し掛かったな。一気に作るのは5メートルほどだな。

 あれ? 正確に石を作ったせいか、もう少しで一番下側になるアーチの部分が異様に感じた。隙間なく正しく積まれているから、簡単に崩れそうに見えてしまった。

 石垣は、いろんなサイズの石を組み合わせているから、お互いがお互いを頼りにして強固になるのだが、この橋のアーチは綺麗すぎて、違和感しかない。こいつらが支えているのは、自分たちの一列分だけなので、モルタルを使っても頑丈には作れないだろうな。魔法が無ければ……

 カエデやリンドもこの様子を見て、苦笑しているな。今度からは、奇数偶数で石をずらしておくように指導しよう。それなら違和感が減ると思うしな。地球に住んでた昔の人って、本当に凄かったんだな。改めて、先人の知恵と技術ってすごいと思った。

 釘を使わない木組みといい、本当にすごい技術だったんだな。

 最後の石は、新しく生み出した石で埋めてから、全ての石をくっつけた。ふむ、一枚岩になると、これはこれで違和感がすげえな。長さ10メートル以上のアーチが一枚岩って、本当にすげえな。

 ……今日、すげえって何回思ったんだろうな。語録が行方不明になっちまったな。

 さて、まだ時間は大丈夫なので、チグハグに並べるように指示を出す。その理由は、考えさせずに教えている。これに関しては、ある程度知識のあった俺たちですら、積んでみて初めて気付いたからな。

 先ほどと同じように、違和感のある女の子たちの様子を見ながら、俺たちは次の作業の準備を始めた。
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