ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,087 / 2,518

第2087話 試し打ち……?

しおりを挟む
 シンラたちに俺の事を聞くのは怖いので、驚いてポカーンと口を開けているので、そっと3人の口を閉じるように従魔たちに指示して、休憩をするかな。

 ここ以外の炉は複数人で作っているので、作業効率は良く俺がのんびりとしていると、想像以上に早く戻ってきた。俺の炉に火が入っていることに驚いていたが、中に木枠を使った事を考えれば、外すより燃やす方が効率的だと気付いたのだろう。

 土木組の子たちも戻って炉に火を入れてくると、慌てて戻っていった。カエデとリンドがニヤニヤしているのは、自分たちが教えなくても気付いてほしかったのだろう。少し意地悪な気がするが、教えてもらったことが全てではないと、理解してほしかったのだろう。

 炉自体は完成したが……耐久度と耐熱に関しては、魔核を埋め込み強化しているが、熱を生み出す魔道具は設置していない。設置する場所もしっかりと作っているので、そのにはめ込むだけでいいのだが、それに関しては俺にしかできないので、頑張るしかない。

 熱を生み出す魔道具の本体と魔核を準備して、サクッと3セット作っていく。1つの炉に対して2つずつ設置するようなので、合計で6個作った形だ。

 30分ほどの作業ですべてを終わらせて、鍛冶工房はこれで終わりだろう。後は、使っていって問題があれば、その都度ここを使う人たちで改善してください。

 いつの間にかおやつの時間になっていたが、いつもより多く食べていたため、お腹が空いていなかった。俺は、今日のおやつはいいかな……子どもたちはみんな食べるようだが、妻たちは半数ほど食べないみたいだな。お昼食べ過ぎたな。

 お互いに顔を見合わせて笑ってしまった。

 品質にこだわらなければ、スキルの恩恵をフルに使えば1本くらいは武器が打てるか? カエデたちと相談して、各炉で1本ずつ剣鉈を打つことにした。形状は本人の自由だが、実用性があるようにという注文が付けられた。

 実用性という言葉を聞いて、俺は目をそむけたくなってしまった。

 ゲームにあるような、装飾過多で現実にあっても使い物にならないような形の武器を、綾乃やバザールと一緒に作っているため、かなりの不良在庫が存在している。

 不良在庫の例をあげるなら、蛇腹剣だろう。魔核によって制御されている物は問題ないのだが、ギミックと鍛造による蛇腹剣だと強度が足りなかった。地球なら使える物だったとしても、こちらの世界では力が強すぎるため、接触する部分がすぐに破損してしまう。

 ずっと鞭形状で使っている分には問題ないのだがそうすると……自滅の危険性が高くなるほどには、扱いが難しい武器である。ただの鞭で加速前ならそこまで痛くないが、蛇腹剣の場合は痛いでは済まないからな。防具が切り裂かれるか、自分の体に刺さるような未来しか見えない。

 クリエイトゴーレムで作ったあの武器って、誰か使ってるのかね? 作るだけ作って放置してたから、家の武器庫にそのまま飾られている可能性が高いな。

 他にも、剣のあの部分に文様を掘り込んでみたり、柄と刃の根元に竜を巻き付けてみたり、無駄な装飾をつけたりしている武器を、飾ってある倉庫もあるので、注意された一言だな。

 今回はシンプルな剣鉈を作るように言われたので、この世界の通常の鍛冶で1本打つことにした。

 自分で出して強化した鍛造用の槌を金床に叩きつける。大きな音がするが、どこにも傷の様なモノは見当たらないな。

 炭を投入して火を入れ、送風口か空気を送り込む。そうすると炭は赤白く燃え上がり、幻想的な色合いを見せてくれる。白く光る炭って、キレイだから好きなんだよな……

 っと、炭を眺めているだけでは問題なので、準備した玉鋼を炭の中へ入れて、適切な温度まで持っていく。

 鉉〆で熱した玉鋼を取り出し、叩いて成形していく。鍛冶はただ力いっぱいたたけばいいというものではない。力加減を説明することは難しいが、力が無ければ成立しない作業でもある。

 まずは長方形に成形して、何度か折り返していく。この辺は刀と同じような作り方ではあるが、カエデの話では全然違うらしい。自分で打った刀も俺は良く分からず、微妙な知識とスキルが教えてくれるままに作ったので、違いが良く分かっていない。

 折れにくい武器を作るためには、全体を硬くするのではなく、外側を硬く内側をしなやかに作る必要がある。硬く作れば強いと思われがちだが、硬いだけだとすぐに折れてしまう。刃にかかる衝撃を受け流せないこともあり、刃に負担がかかり壊れやすいのだそうだ。

 何回か折り返した鉄を半分に割り、間に柔軟性の高いしなやかな鉄を挟んで、さらに叩いていく。

 目的の長さと幅まで伸ばせたところで、刃をつけるために片方だけ薄くしていく。この時に叩いた分だけ鉄は伸びるので、目標となる形になるまでしっかりと叩いていく。

 うん、鉄を焼きながら叩いて伸ばしているので、ちょっと目標の長さより長くなってしまったが、刀のようにそっておらず真っすぐだな。悪くない形だ。

 まだ研いでいないので、剣鉈の形をしているが真っ黒い。墨のような物も付けて叩いたので、その影響もあるだろう。あの液体ってなんなんだろうな? 召喚したものを使っているから、良く何かわかってないんだよね。

 次は研ぎの作業だが……ここには水車を動かす川が無いので、動力に困ってしまった。

 ここら辺は、後で考えるしかないな。回転砥石がなかったので自力で、平らな砥石で研ごうとしたが……確かかなり大変だった事を思い出し、剣鉈の研ぎは後回しにすることにした。

 30分ほど遅れて、カエデとリンドも打ち終えたようで、俺のいる鍛冶エリアに戻ってきた。2人とも砥石の事を考え忘れていて、俺の剣鉈を見てみんなで苦笑することとなった。

 堀には一応流れがあるので、水車を回すことは可能か……? くみ上げた水をここまで上水路みたいに流して、上から落として水車を回すか?

 そこらへんも後で考えるか。俺たちが使っている間は、クリエイトゴーレム製でもいいしな。帰るまでに動力の事は考えよう。

 2人とも剣鉈1本を2時間30分ほどで打ってしまったな。俺に関しては2時間だったし、この世界は本当にどうなっているのやら。

 汗をかいたので、食事前にお風呂に入ってしまおう。このまま食堂へ行ったら、確実に追い返されるもんな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...