ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2068話 違うところで作業してきます……

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 妻たちと土木組の子たちが協力して、基礎工事を始めた。子どもたちとその様子を見て、おぉ! とか言って騒いでいたら、シンラに「何もしないの?」と言われた。

 手伝いたいけど、途中で手を出すのは配置の問題とかあるから、邪魔になるんだよ! とか言いたかったのだが、シンラに言っても分かってもらえないので、なんて答えようか迷ってしまった。

 その迷っている間に、プラムとシオンからも「何もしないの?」と言われ、途中から手を出すと邪魔になるからと、通じないだろうが苦し紛れにいい訳をした。生憎分かってもらえず、軽蔑したような目で下の子たちにみられることとなった。

 俺以外のメンバーは働いているのに、何もしないのか? と、責められているような視線だ……物理的にチクチク刺さってくるような視線は、正直辛いのだが邪魔は出来ないからな。一応出来ることがないかリンドに確認に行くが、俺が手を出せる場所は無く子どもたちと見ていていいよだってさ。

 子どもたちの視線が痛いから仕事が欲しかったのに、仕事は無いから子どもたちのとこに戻っていいって……正直、針の筵なんだけど、どうにかなりませんかね!

 うん、どうにもならなかった。

 でも、一緒にみていることは、俺の精神的に耐えられないので、違う作業をすることにした。建物の基礎工事が始まり、どのくらいの大きさになるのか分かったので、周りの環境を整えることにした。

 水の精霊と木の精霊を呼び出して、建物の邪魔にならないように緑化計画を進めることにした。

 一番上の段は、建物が建たないとバランスが分からないから、先ほど坂を作って草を生やした場所へ移動して、どうするのがいいか相談しながら作業を始める。

 一番最初に突っ込まれたのは、柔らかくしたつもりだったが土が固く栄養が少ないから、柔らかくしてもう少し栄養を入れないと、すぐに雑草でも枯れてしまうと忠告を受けた。

 雑草って適当な環境でも強く育つものだと思っていたが、雑草も植物……生きているのだから、環境が悪ければすぐに枯れてしまうとの事だ。

 言われてみればその通りだ。生きているのだから、栄養が無く根付かなければ枯れてしまうのは当たり前だ。雑草がどこにでも育つのであれば、砂漠なんてできるわけないもんな。

 建物の事もあるので、建物の土台とその周辺は頑丈に固めて、それ以外の部分は植物が育ちやすいように土を柔らかくして、栄養を混ぜ込んでいく。栄養となる物は、腐葉土を召喚してそれを魔法を使い地面に混ぜ込んでいく。

 柔らかくするとは言っても、フカフカにしているわけではない。さっきまでは、魔法で形を整えたせいか必要以上に地面が固かったので、少し空気を入れるようにほぐした感じだな。柔らかすぎれば、歩くのが大変になるし、雨が降れば簡単に崩れてしまうので、バランスが大切だってさ。

 でも、足腰を鍛えるトレーニングに、砂浜が適しているって聞いたことがあるんだけど、それって確かなのかね? 足場が悪いから、バランス感覚も良くなるとかならないとか……

 俺の街にある訓練場を思い出してみる。

 全部が整った環境の様な気がするな……樹海の中も訓練場所ではあるが、基本は平坦なので木の根が盛り上がっていて、足場が悪いだけだな。

 気になったので、レイリーに連絡を入れて足場の悪い所での訓練はしていないか聞いてみた。

 軍……兵士たちはそんな環境での戦闘は基本的にないので、樹海での訓練が一番足場が悪いそうだ。だけど、暗部の人間はどんな環境でも戦えるように、マイワールドを改造して砂場だけではなく、ぬかるんだ地面や沼地なども想定して訓練をしているそうだ。

 大規模な魔法を使えば、足場なんて簡単に作り変えることができるんだから、軍でも訓練に取り入れるのは蟻ではないだろうか? ここら辺は、今回の問題が解決してからだな。まぁ、足腰を鍛えるための砂場はあってもいいだろう。

 運動場の一角に砂場を作り、やりたい人間が自主的に取り組めるスペースを作っておこう。

 ふんふんふん、と鼻歌にもならないようなリズムを刻んで作業を始める。訓練場にいきなり土から砂にエリアがかわるのはさすがに問題だろう。では……石壁を地面に埋め込んで境界線にするか?

 思いついたことを想像してみる。

 うん、これは無いな。土から砂より、土⇒石⇒砂の方が違和感が激しかった。いくつか想像した中でも、花壇をイメージしたものは苦笑せざるを得ないものとなった。

 普通にグランドがあり、その近くに花壇がある風をイメージした。その花壇の内側は、真っ白な砂に覆われており、違和感しかなかった。それに、視覚的に分かるとは言っても、石の仕切りは危険なのだは無いだろうか?

 公園の様な砂場であれば、訓練場とは違い激しい運動をしている人間もいないので、カラフルな色で囲んでおけば子どもたちの安全を守れるだろう。だけど今回作ろうとしているのは、使うか分からないが訓練に使うモノなので、ある程度安全性は必要になってくるだろう。

 そこで俺は、ちょっとした段差ではなく膝丈くらいの壁……塀を作ってみてはどうか考えてみた。

 ありっちゃありかもしれないが、塀を膝丈でも高くしても圧迫感が拭えなかった。訓練場の隅っこではあるが、何か威圧感がある気がしたのだ。兵士たちが見れば、そうではないかもしれないが、ここを整備しているのは俺なのだ! だから俺がおかしいと言えば、おかしい!

 自分勝手な理論で自分を納得させ、それからもいくつかイメージをしていく。その中で一番まともと感じたのが、枕木の様なもので土と砂場を分けるというものだった。

 土は濃い茶色、乾燥しても多少白っぽくなるが、砂とは明確に違う。これなら問題はないのではないかと思い、せっせと作業をして砂場を作ってみた。

 うん、変だ。なんか変なのだ。

 困った俺は砂場に座り、訓練場と妻たちが頑張っているピラミッドの上を見る。

 斜面になる部分には緑を敷いたので綺麗だな……なんて見ていた俺は、閃いた! 訓練場は2つある。砂場はこっちにしか作るつもりは無い。だったら、訓練場2つの環境を変えて作れば、訓練する人間からすればいい傾向なのではないだろうか?

 日々訓練している兵士たちが聞けば、大きなお世話だと言われただろうが、それを注意できる人間はここにはいない。お供の聖獣たちは、出来た砂場で子どもたちと遊んでいる……ん? いつの間にかシンラたちが来ており、砂場で遊んでいた。

 ミーシャたちも付いてきており、シンラたちを面倒を看るように遊んでいた。そこに紛れて遊んでいたダマに向かって、空気弾を撃ち込んでおいた。魔法で作った空気を圧縮しただけの弾丸なので、ダマに当たって弾けるだけの大した効果のない攻撃だ。

 パンッと音がして、シンラたちがビックリして、ダマに猛抗議を行っている。ミーシャたちは気付いただろうが、シンラたちには言っても分からないので、ダマがしょんぼりした様子をながめていた。哀愁漂う姿がよく似合うから、こうやってからかわれるんだよな。

 よし、DPでいくらでもやり直しができるのだから、色々試してやろう!
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