ダンマス（異端者）

第2065話 食事回

　下の子たちは、多分仲は良いんだけど、食事に関しては一方的に搾取……じゃなくて、貰おうとする傾向があるんだよな。上の子のミーシャたちは、美味しいと思ったものを分け合う傾向が強いのだが、下の子……特にプラムとシオンは、シンラから奪おうとする傾向が強い。

　なんなんだろうな？　普段はシンラ大好きな２人なのに、食べ物になると話が変わるんだよな。好きなシンラが食べているから欲しいのは分からんでもない。だったら、自分で頼めばいいのだが……シンラが食べている奴がいいみたいなんだよな。

　うむ、この子たちの事は考えても分からないから、考えるのは止めよう。今日は俺の右隣りに並んでいるミーシャたちを見て、心を落ち着けることにした。この子たちもシンラの食べている姿を見て、シイタケが食べたくなったのか俺と同じく注文している。

　ミーシャたちは、今日はお肉じゃなくて魚介系が中心っぽいな。醤油のこげる匂いにやられて、ホタテバター醤油とかを食べているな。後、焼きトウモロコシも食べているので、醤油尽くしに見えるぞ。

　上の子たちが食べている魚介を見て、俺もなんだか食べたくなってきたな……よし、俺も食べるぞ！　ブラウニーよ、サザエを焼いてくれ。壺焼きで醤油を最後にちょっとだけ垂らしてくれ。

　ふっふっふ、賛否両論あると思うが、サザエって基本的にこういったバーベキューでしか食べないから、めっちゃうまく感じるんだよね。しかも、バーベキューでも海辺の近くでなければ、食材としても出てこないから、レアだと思うんだよね！

　っと、そんな事を考えていると、シイタケが運ばれてきた。おや？　シンラのとは違い、俺のは、巨大なシイタケが出てきたぞ。でも、前に食べた天恵菇てんけいことは違うな……あれは目の前にあるこれと比べると、もう少し平べったく見えたが、これは小さなヘルメットみたいに見えた。

　ブラウニーたちが出す食材なので、外れは無い。説明を聞きながら口へ運んでいく。

　天恵菇てんけいこの味を正確には覚えていないが、あれとは違う味の濃厚さを感じる。甲乙つけがたい味だな。味が濃いと表現するのがベターなのだろうか？　ちょっと分からないが、美味いものは美味いのだ！

　シンラが食べたがったので、小さく切って口へ入れてやると、どこかの芸人みたく「ふぉおおおおおお」とか叫んで、みんなでビックリしたわ。まぁ、俺の隣で食べているミーシャたちも、美味しいと大きな声で言っているので、この美味さが分かるんだな。

　それにしても、子どもたちの趣向が良く分からんくなってくるわ。

　それにしても、美味い。シンラが叫んだのを聞いて、プラムとシオンが欲しがるくらいには美味そうに見えているのだろう。

　姉たちからもらおうにも、３人で分けてたべているので既に残り僅か……最後の１口を食べてしまっていた。そうすると残っているのは、俺のシイタケだけだ。

　めっちゃ不満そうだが、プラムとシオンが欲しいと言っているので、１口ずつ食べさせてやる。不満ですという顔をしているが、美味しかったのか両頬を押さえて美味しいと表現している。飲み込んだ後に、恨めしそうにこっちを見るのは止めなさい。俺、何もしてないだろう。

　それで、このシイタケなに？

　気になったのでブラウニーに聞いてみた。発芽率だけ見れば、天恵菇てんけいこよりは高いらしいのだが、原木栽培を基本としていて最終的に商品価値のあるサイズまで大きくなるものが、かなり少ないらしい。

　菌床栽培の天恵菇てんけいこと原木栽培の鳥取茸王たけおう、どちらもすごいポテンシャルのシイタケだな。

　そんな話を聞いていると、サザエのつぼ焼きが運ばれてきた。

　サザエの……この……入り口の蓋みたいなの、めっちゃ邪魔なんだよな。一生懸命隙間から入れようとしても、スカンと弾かれてしまう。強引にやれば、力が強すぎて殻を壊してしまうので、力加減が絶妙に大変だ。

　４度目のチャレンジで上手く隙間に入り、ニュルッと内臓まで出すことに成功した。

　前にも言ったけど、この身の部分より内臓部分の方が好きなんだよね！　しかも、俺が内臓好きだということを知ってるから、それに合わせて餌を与えているらしく、肝の味も濃厚で美味いんだよね。子どもたちには、苦い！　と不評だけどね。

　シンラたちはサザエには見向きもせず、ホタテの貝柱やヒモの部分をモリモリ食べているな。貝柱って、美味いよな！　分かるぞ、その幸せな顔になる気持ち！　でも、たまに食べるサザエの肝には勝てないぞ！

　俺以外にサザエの肝が好きなのは、飲兵衛組のミリー、カエデ、リンドの３人だな。この３人は、お酒に合うものなら何でも好きだと思う。初めのうちは酒盗……塩辛なんて食べないとか言っていた３人だが、今では純米酒の冷酒を片手に３人でワイワイ飲んでいる姿をたまに見るね。

　ドワーフの血を継いでいるせいか、スミレとブルムも塩辛は好きだな。ミーシャは、普通に食べるが好んで食べると言うほどではない。塩辛より、イカの一夜干しとかの方がいいという……これもお酒のアテになるんだけどね。

　っと、飲兵衛組のピッチが上がってるな。近くにいる妻たちが調整してくれているみたいなので、大丈夫だとは思うが、ここは敵地じゃないけど家じゃないんだから、少しは抑えなさい……

　メグちゃん、シリウス君、大丈夫だと思うけど、水堀を使った監視よろしくね。うちに所属する人間じゃなければ、殺しても構わないからよろしく頼む。

　メグちゃんは、甘い物がいいのね。後でブラウニーたちに頼んでおくから、食べたいものを選んでおいてほしいな。シリウス君は肉がいいのね。どんな肉がいいのか、焼き加減や味付けをしっかりとメモってくれれば、ブラウニーたちにお願いしておくよ。

　２匹のリバイアサンは、テンション爆上がりのようで、水堀の水が噴水のように吹きあがっている場所がある……干渉するだけで、あんな風に水を操れるってすげえな。

　リバイアサンの２匹は何でも食うのだが、メグちゃんは乙女のように甘い物が好きで、シリウス君はスポーツマンの男子学生みたいに、ガッツリとした肉を好んで食べる傾向があるんだよな。

　特にシリウス君の食べ方は、独特というべきだろう。小さな自分の体より大きな肉塊にかぶりついて、掘り進めるように食べるんだよね。食べ終わるころには、全身がギトギトになっており、娘たちにバッチイと言われているのに、止めないんだよね。

　さて、ゆっくりしたいところだけど、グリエルたちと話さないといけないから、連絡を入れないとな……お腹いっぱい……ケップゥ。