ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,043 / 2,518

第2043話 企みは事前に阻止される

しおりを挟む
 いつも通りに庁舎へ向かう。グリエルたちを強制的に休みにさせていなければ、午後はお茶の飲み比べをしていただろうが、仕事が沢山ある今、そんなことをしている暇はないだろう。落ち着いたときにやりたいと思っているからな。

 昨日に引き続き、半数ほどの妻たちが仕事を手伝ってくれている。この世界の基準で考えれば、妻たちの知識はそこら辺の街の文官を軽く凌駕する。だからといって、文官の仕事がすぐに務まるかと言えば、普通はそうではないはずだ。

 では、何故問題なく仕事をできているのかと言えば、妻たちは俺の知らない所で、ブラウニーたちやグリエルたちから、俺に何かがあったときのために、仕事を代行できるように教えてもらっていたらしい。

 昨日気付いていても良かったのだが、予想していたより仕事の量が多かったことや、思っていた以上に余裕がなくなっていたため、気付くことができなかった。

 昨日は数でごり押ししていたと思っていた仕事も気付いてみると、しっかりと仕事を教えてもらっていたからだろうか、2~3人で1組を作って仕事をしているのに、仕事の効率が高くなっている事に驚くばかりだ。

 俺たちが今している仕事は、複数で相談して行うより、1人でこなした方がいいタイプの仕事が多いのだ。それなのに仕事の効率がいいのだから、驚かずにはいられない。

 1人でもできる仕事を、あえて複数人で行う。1つの仕事を2~3人バラバラに行って、後で答え合わせのように持ち寄ってから話し合いでもいいのに、あえて初めから相談しながら仕事を進めている。

 効率が悪いように思えたので、一息ついたときに聞いてみた。

「仕事効率も大切かもしれませんが、複数人でやってもしっかりと仕事が終わるのであれば、意見の知り合わせや意思統一のためにも、考えた内容を討論しながら進めた方が、後々のためになると思うので」

 と、今の事だけではなく、これから先の事も考えて仕事をしているようだ。

 しっかりと、討論の内容も含めて記録として残っているので、後で他の妻たちにも意見を貰い更に討論をするそうだ。それなら自分の考えをまとめて、後でみんなで持ち寄るのでもいいのでは? とも思ったが、妻たちからすると違うらしい。

 最初の段階で話し合うことで、グループ内で先入観を無くすことが目的の1つなんだとさ。他にもマニュアル化ではないが、タイプごとに分類して、どの部分に注目する必要があるのかを明確にする目的もあるのだとか。

 俺が確認や決裁する書類は、俺の前に必ず書いた人以外にも2人以上の人間が確認して回ってくるので、読まなくても問題ない書類も多い。それでも人間なので、エラーは起こってしまう。

 地球でも度々問題になっていたが、ニューマンエラーは何をどう頑張っても、100パーセント無くすことは出来ない。企業では、限りなくゼロにするための方法を独自に構築しているものだ。

 その中でも多く取り入れられているのが、ダブルチェック。複数で確認することで、ヒューマンエラー……間違いを減らす方法だ。これは書類関係や、物品関係に多い確認方法だろう。

 それ以外にも、機械化しても必ず人間の手が必要になる場所が存在する。その部分に対しては、マニュアル化をして順序通りに手順を進めることで、ミスを少なくする方法もあるだろう。

 工場関係は疎くて良く分からないが、決められた項目をしっかりとチェックするというのは、機械の整備だったり、複雑な機械の起動に必要な方法だろう。

 そう言ったものを減らすためのマニュアル化みたいなことを行っているらしい。

 完成したら、グリエルたちやその部下、各街の上層部などと協力して、問題がないかを探り出すようだ。

 とはいえ、マニュアル化することで生まれてしまうヒューマンエラーもあるので、グリエルたちや領主代行クラスの立場になる人間には、それ相応の判断力身に着けなければなれないということだな。

 俺は……数字は強いけど、他の事になるとめっぽう弱いから、出来る限り代行の人たちは能力が高い人を置いてほしい。

 いや、無様を晒す前に、後釜を準備すればいいんじゃないか? 周りが優秀なら、トップが確認したという体があれば問題ないはずだ。それなら、理由も分かっていないのに、空気を読むのが上手いシンラに領主の座を譲っても問題な……

「問題だらけです! シュウ様は、そんなに領主の仕事が嫌なのですか? 人って偉くなって、人の上に立ちたいみたいな願望があるものだと思うのですが、シュウ様は違うのですか?」

 俺には、そう言った願望は無い。多分満ち足りた生活をしているので、そう思わないのかもしれない。支配願望があるわけでも、上に立ちたいわけでもしたいわけじゃない。

 可能なら誰かにこの立場を譲りたいと思っているくらいだ。DPがありえない速度で増えていくので、せこせこ働く気にもなれないのだ。ここで働いているのは、仕事をしないでミーシャたちにお父さんはニートなの? とか言われたら、立ち直れなくなりそうだからな。

「だからといって、赤子のシンちゃんに領主を引き継がせようなどと、バカなことを考えるのは止めてください。小説であるように、ナンバー2の人間が国を支配するために、幼い王の子を形だけの王として、裏から操るわけでもないのに、引き継がせようとしないでください」

「裏から操るなら、シンラに引き継がせてもいいのか?」

 ライラは呆れた顔で、ため息を吐いた後、

「裏から操るのであれば、仕事の量が激増するのですが、それでもいいのですか? おそらくですが、グリエルさんたちが行っている仕事を、シュウ様が全部行うことになりますよ?」

「俺は引退、シンラが形だけの王、グリエルとガリアが裏から操るって話じゃないのか?」

「なんでそう言う発想になるんですか? あの御二方は、領主……シュウ様の代わりをする気はないんですよ。シンちゃんに王を引き継がせようとすれば、全力で阻止するでしょうね。小説のような話であれば、歓迎する立場の人たちが、反対に回るのですから断行するのであれば、シュウ様に仕事を押し付けるでしょうね」

 それを聞いて……シンラに仕事を引き継ぐのは諦めることにした。

「手が止まってしまいましたね。そろそろ仕事へ戻りましょうか」
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

処理中です...