ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2033話 日常?

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 体を動かし朝食を食べた後、二日分の仕事をこなすために玄関へ向かう。

「とぅ!」

 掛け声と一緒に現れたのはシンラだ。何をするのかと思えば、食事の前にしていた組手に感化されたのか、スライムを使って何やらしている。そう判断したのは、掛け声と同時に現れた時の姿が、漫画で見るような跳び蹴りで現れたのだ……スライムに乗って。

 何をしたいのか分からないが、スライムに指示をして俺に突貫してきた。

 俺の言うことは聞かないのに、シンラやプラムたち、ミーシャたちの命令は何故聞くのだか……

「で、何でシンラは俺の所に向かってくるんだ?」

 今日一緒に庁舎へ向かう、シンラの生みの親のライラに聞いてみる。

「ん~、分からないですね。最近は良く分からない行動をしていますが、今回は特に分かりにくいですね」

 ライラも混乱している。

 戦術も戦略も何も知らないシンラは、スライムを巧みに操って突進してきている。このままやられてもいいのだが、何となく癪に障るのでひょいと躱す。

 右手に持っていた何か分からない武器を振り回して、俺の横を通りぬけていく。なのに、スライムが器用にシンラの体勢を制御して、普通ならありえない軌道で再度襲ってきた。シンラに負担をかけずに方向転換してまで、俺に対して何をしたいのだろうか?

 わざと攻撃を受けるべきか、それともすべてを防ぎきるべきか……悩みながらシンラの攻撃を避け続ける。

「何か悩んでいるみたいだけど、シンちゃんが必死になるからそろそろどうにかしてほしいと思うのですが」

 攻撃をかわしながら考えていると、ムキになるシンラの心配をして、ライラがどうにかしてほしいとお願いしてくる。

 良く分からないがシンラがヤル気なので、俺もそれに付き合ってやろう。今のシンラを無力化をするのに一番簡単な方法は……こうだ!

 飛び込んできたシンラの両脇に手を入れ、脚に張り付いているスライムを蹴り落す。そして、シンラのお腹に顔を擦りつける。笑って苦しいだろうが、そんなことは関係ない! 俺に挑むとはこういうことなのだ!

 パシン!

 頭を叩かれた。

「止めてほしいとは言ったけど、止めた先に苦しくなるようなことをするのは、止めてあげてほしいかな」

 またツッコまれてしまった。

「りょーかい。シンラよ、俺に勝つのは100年早いぞ! 俺は逃げも隠れもしない、いつでもお前の挑戦を受けてや『スパーンッ!』……痛いな。せっかくいいセリフを言っているところなのに、頭を叩かなくてもいいんじゃないかな?」

「自分の子どもに変な事いわないの。親子のスキンシップというには、少し過激だと思うわよ」

「それなら、今俺の足にしがみついているこの子たちにも言ってくれないかな。体は痛くないんだけど、心が痛むんだよ」

 ライラは苦笑いするだけで、助けてくれなかった。俺を救ってくれたのは、まさかのシンラだった。

 俺にお腹グリグリの刑を受け解放された後に、俺の両足にしがみついていた2人を引っ張るように、俺の足から引き剥がしてくれた。

 2人を連れて歩いているシンラが、不意に俺の方を振り返り『今日は負けたから、身を引いてやるぜ!』みたいなことを、

「考えているような表情はしていないわよ。変な事考えてないで、仕事が溜まっているんだから、早く仕事へ行きましょう」

 俺はライラに引っ張られ庁舎へ向かう。ムムム。シンラとライラが似ている気がするのは、気のせいではないな。

 執務室へ入ると、猫たちは各々の定位置へ向かってしまう。なんか寂しいが、猫なんてこんなものだろう。自分の席へ着くと、いつもの倍ほどの紙が積まれていた。

 サクッと件名をパラパラとめくって、今日処理するべき書類を見てみる。いつもと変わらない内容っぽいな。もし異常があったのなら、昨日連絡が来たよな。

 ぺったんぺったんつるぺったん……っと。これって、誰が言い始めたんだろうな? 俺が知っているのは、動画投稿サイトの中のメドレーで知ったんだけど、元ネタを知らないんだよね。調べれば分かると思うけど、まぁいっか。

 適当に押しているように見えるけど、しっかり読んでいるよ。誰に言訳しているんだかな。

 おや?

 1つの書類を見て違和感を感じた。

 なんだろな? 普通の書類なのに違和感を感じる。普通の報告書なんだけどな……1人で考えても分からないなら、誰かを呼んでみよう。

「ということで、来てもらったよ」

「「はぁ~~」」

 俺の目の前でため息をついているグリエルとガリアがいる。その隣で、カタカタ顎を鳴らしているバザールと、ニヤニヤしている綾乃もいるな。

 俺と同じ世界に生きていた2人も呼んで、この違和感に気付くか見てもらうためにここに呼んだ。

「で、今回呼んだのは、これ?」

 綾乃が俺が違和感を感じた報告書をペラペラと振り回している。みんなにはコピーを渡しているので、それをじっと見ている。

「某には、特に何も感じないでござる」

「自分も、何も感じませんね」

「同意ですね」

 バザール、ガリア、グリエルの3人が続いて返事をしてくる。

「ムムムムム? なんか変な感じがするわね」

 綾乃も俺と同じように疑問を感じているようだ。だけど何に疑問を感じているか分からないみたいだな。

「俺と同じような感じになってるな。俺も正体が分からなかったから、こんなふうに悩んだのかね?」

 今日の同伴であるライラは、ウンウンと頷いていた。どうやら、今の様な綾乃の状態だったのか……

「綾乃が感じている違和感はどの辺だ?」

「えっと、こことここらへんかな? なんか変なんだよね……」

 綾乃が差したところは、俺が違和感を感じていた場所とはちょっと違うな。なんでだ?

「あっ! なるほど、普通の報告書っぽいけど、文字が少しずれてるな。これが違和感の正体か! なんだ、分かってみると案外簡単なことだったんだな」

「1人で納得してないで、こっちにも説明してよ!」

 綾乃に蹴られた。

「これよく見てみて、二列目三列目は揃ってるのに一列目がズレてるように見えるだろ? 文章を漠然と読んでいたから、俺はこのずれに違和感を感じていたんだ。普通は全体がズレているのに、これは揃っている場所があるから違和感だったんだ」

「確かに言われてみたらおかしいですが、これが何なんですか?」

「「「…………」」」

 俺たちは黙ってしまった。
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