ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,988 / 2,518

第1988話 価値と満足感

しおりを挟む
 黒幕が分かったのはいいが、悪戯好きのスライムたちに一連の行動を止めさせるのは……おそらく無理だ。なら、耐えるか防ぐかしかないか? 子どもたちと寝る回数もそんなに多くないし、一緒に寝たからといっていつも顔の上に来るわけじゃないしな。耐える方向でいくか。

 疲れさせて眠らせるために運動させたけど、その疲れが完全回復するまで眠られると困るので、そろそろ起こさないといけなかったりするんだよな……どうしようかと、妻たちの方を見る。

「後、30分ほどしたら起こしますので、大丈夫だと思います。ゆっくりめの食事の後に、お風呂へ入れて1~2時間ほどアニメでも見せておけば、3人とも眠ると思いますよ。プラムちゃんとシオンちゃんは、シンラにくっつけておけば寝るので、シンラには頑張ってもらいましょう」

 母親のライラは、プラムとシオンを寝かせるために、自分の息子を生贄に捧げるようだ。

「何物騒なこと言ってるのよ、生贄じゃなくて頑張ってもらいましょうってことでしょ。シュウは本当に物騒な発想をするんだから困るわ」

 カエデに突っ込まれてしまう。そして、考えていることを普通に読み取らないでください!

 少し騒いでいると、ミーシャたちが目を覚ましたようだ。ウルは、シンラが俺の顔に乗せられる前に起きており、その様子を見ていたようだが、ミーシャたちは遊び疲れて起きてはいなかったらしい。

 起きた順番としては、ブルム・スミレ・ミーシャの順だな。朝強いのはミーシャだった気がするけど、この時間帯のお昼寝だと他の2人の方が寝起きはいいのかね。

 3人とも周りをキョロキョロしている。自分たちが何でここで寝ているのか、思い出しているのだろう。ミーシャたちもプールで遊んで疲れたのか、シャワーを浴びてすぐに眠ってしまったので、俺たちでエアーベッドまで移動させてるんだよな。

 下の子たちの面倒を看ながら遊んでいたから、いつも以上に疲れたのかもしれないな。

 自分たちで辿り着いた記憶は無いが、弟妹たちが近くで眠っているので、誰かに連れてきてもらったのだろうと判断したみたいだ。

 目を擦り起き上がると、真っ先に水道へ向かって走っていく。喉が渇いていたのかと思ったが、口をゆすぐために水道へ向かったようだ。3人でクチュクチュと口をゆすいでいる。軽く歯磨きまで始めたな。おやつ食べた後に磨いているのになぜかと思ったが、ブラウニーたちの指導のおかげのようだ。

 寝起きは口の中に細菌が沢山いるので、キレイにする方がいいと教えられているようだ。キレイにした後に、寝起きの一杯! といった感じで、持って来てもらった飲み物をグイッと一気飲みしている。ちゃんと腰に手を当てているところを見ると、変な日本文化に汚染されてそうだな……綾乃かね?

 そういえば、俺も喉が渇いていた。娘たちを見習って、口をゆすいだ後に軽く歯みがきをして、同じ飲み物を持って来てもらった。

「ングッングッ……ぷはー。昔ばあちゃんの家で飲んだハチミツレモンに似ていて懐かしいけど、数段こっちの方が美味いな。厳選された素材を使っているのかね?」

 ふと口から出てしまった。

 思い出補正を突破して、昔飲んだハチミツレモンより美味しく感じるのだから、飲み比べたらかなりの差があるんだろうな……

 そんなことを考えていると近くにいたキリエが、あれをゴーストタウンで飲もうとすれば、大銀貨が飛ぶ可能性があると教えてもらい、少し冷や汗をかいた。

 一杯飲むのに1万円って……使われているハチミツが、王蜜なのだろう。希少価値や美味しさを考えると、ティースプーン一杯で数千円の価値があるみたいだからな。

 記憶にあるハチミツレモンは、500ミリリットルで100円ちょっと……俺が飲んだのはコップ一杯、250ミリリットルくらいだろうか? それで1万円はするらしい。200倍の値段もすれば、思い出補正があっても味は敵わないようだな。

 地球にいたら飲むことは無かっただろう。ハチミツレモンのコップ一杯で、200倍の感動や幸せがあるとは思えないから、俺は安いやつでいいやって思うんだろうな。お金があっても、飲もうとは思わない気がする。

 値段と満足感って比例するわけじゃないんだよな。ペペロンチーノって、元価にすれば100円にも満たないのに、美味しいところで食べれば1000円出しても満足できる味なんだよな。不思議だな。

 手間暇の技術料や家賃代、人件費なんかもかかっての値段なんだから、満足してもらうために頑張ってるのがシェフなのかな?

 ハチミツレモンから変な方向に思考が飛躍したけど、クインハニービーが集めた王蜜は、めったに市場に出回らないので、希少価値も付く上に、ハニービーは兵隊蜂が沢山いるから、採取が困難なんだよな。

 ある程度タフな人間なら、5回くらいは刺されても平気かもしれないが、それ以上となると毒で死んじまうからな。耐性ができてアナキラフィシーショックになることもあるみたいだし、ハニービーは色々と大変なのだそうだ。

 俺の下には2匹のクインがいるけど、せっせと献上してくれるので、在庫がかなりあったりするんだよね。デザートとかによく使っているけど、献上される量が量だからね……使いきれないのだ。

 でも、保管庫の効果で腐らないので貯めて置けるのが強みである。

 一杯では足りなかったので、もう一杯貰って飲んでいると、不意にシンラがガバッと起き上がり、こちらを見てきた。水分が欲しいのだろうか? 俺のコップを見て強請っている。

 シンラが急に起きたことによって、プラムとシオンも起こされた形になり、俺の方を見てシンラと一緒に飲みものを強請ってきた。

 こういう時ばっかり仲がいいんだな。

 シンラたちが起きたことに気付いたミーシャたちが、3人を連れて口をキレイにさせてから、持って来てもらったハチミツレモンを飲んでいる。3人とも、オッサンみたいにプハーとか言ってるんだが……

 シンラたちは、俺たちが起こす前に起きたので、体力が回復しすぎたか心配になったが、夜はライラの予想通りの時間帯に眠って朝まで起きなかったようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる

坂森大我
ファンタジー
 幼馴染みである奥田一八と岸野玲奈には因縁があった。  なぜなら二人は共に転生者。前世で一八は災厄と呼ばれたオークキングであり、玲奈は姫君を守護する女騎士だった。当然のこと出会いの場面は戦闘であったのだが、二人は女神マナリスによる神雷の誤爆を受けて戦いの最中に失われている。  女神マナリスは天界にて自らの非を認め、二人が希望する転生と記憶の引き継ぎを約束する。それを受けてオークキングはハンサムな人族への転生を希望し、一方で女騎士は来世でオークキングと出会わぬようにと願う。  転生を果たした二人。オークキングは望み通り人族に転生したものの、女騎士の希望は叶わなかった。あろうことかオークキングであった一八は彼女の隣人となっていたのだ。  一八と玲奈の新しい人生は波乱の幕開けとなっていた……。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】 余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。 いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。 一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。 しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。 俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

処理中です...