ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1985話 わらび餅の可能性

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 黒っぽいスライム状のわらび餅は、ヘラで切られたので四角くなっている。なんとなくわらび餅! って感じがする見た目だな。俺の中のわらび餅って、親指の第一関節くらいまでの大きさで、無色透明なプルプルってイメージだったけど、何でこの形を見てわらび餅だと感じたんだろうな。

 大きさを整えられて、きな粉が周りについているからかね?

 っと、シンラよ。さすがにその黒蜜のかけ過ぎは怒られると思うぞ。プラムとシオンも真似をしようとしているじゃないか! 俺が止める前に、ブラウニーが笑顔で私たちがかけますね、と言って2人から黒蜜のポーションピッチャーを取り上げている。

 シンラのわらび餅にはすでにかかってしまっているので、皿ごと取り上げられ新しいのと交換されていた。

 下の子たちも理解しているようで、あの笑顔の時のブラウニーには逆らってはいけないと、本能的に刷り込まれているみたいだな。正直あの威圧感は、止めてほしい。種族的にもLv的にも、大して強くもないのだが、こういう時のブラウニーたちは、危険だ。悪戯好きの猫たちですら騒がないからな。

 わらび餅にもきな粉にも少し砂糖が入っているので、ほのかに甘い……俺的には、黒蜜はいらないかな。黒蜜をかけるなら、きな粉をつける前にかけて、きな粉をまぶしたいところである。

 シンラの唖然とした顔を見ながら、わらび餅を食べていると……あれ? もう全部食べたのか?

 自分の皿にわらび餅が無くなっていた。おかしいな、もう3~4個はあると思ってたのにな……視線を彷徨わせ周りを見ていると、顔を逸らすちびっ子が3人。俺の皿から無くなったわらび餅は、3~4個位……導かれる答えは、顔をそむけたちびっ子たちが、隙をついて俺の皿から強奪したのだろう。

 自分たちのお皿の上には、わらび餅は無くなっており、少し不自然に口をモゴモゴさせているので間違いない。ミーシャたちが俺のわらび餅を食べたのだろう……言えば用意してくれるのに、何で俺のを奪うかね?

 いけないことをしたので、お仕置きが必要である。近くの椅子に座っている娘たちを捕まえて、人の物は取ってはいけないと注意してから、デコピンをした。

 注意するときに言葉だけでは足りないと思っているが、叩いたり殴ったりは違うと思うので、悪さをした時は言葉で注意してからデコピンをしている。良くないことだとは思うが、こうでもしないと聞いてくれないことが多いからな。これのおかげで、半分とまではいかないが3割くらいは予防できているんじゃないかな?

 この子たちだけに通じるお仕置きだと思うけどね。

 それよりさ、俺の前でシンラ、プラム、シオンが3人ともおでこを押さえて、眉間にしわを寄せているんだが……何でそうなった? 見えてないと油断しているかもしれないけど、ウルもおでこを押さえている姿が見えてるぞ。

 ミーシャたち、床を転がって、うをおおお、とか言いそうな感じで椅子の上で暴れないの。そこまで強くしていないから、そんなに痛くないはずだぞ。

 ミーシャたちにそう声をかけると、どれだけデコピンが痛かったのか、3人でまくしたてるように言ってきた。それに同調して、シンラたち3人も何か言ってきているのだが、お前たちにデコピンしたこと無いだろ? 痛さなんてわからんのに、姉と一緒に抗議するなよ。

 そんな視線をシンラに向けると、目を見開いて驚いている様子だ。信じられないと言わんばかりに、近くにいた母親を呼んで、何やら言っている。ライラも苦笑しているから、困らせるのは止めなさい。

 しばらくして落ち着いたミーシャたちは、シルキーたちに怒られていた。お替りが欲しいなら欲しいと言いなさい! と、至極真っ当なことを言われている。

 俺はお替りを持って来てもらい、さっき考えていたように、黒蜜を纏わせてからきな粉の海へわらび餅をダイブさせた。わらび餅にまとわりついた黒蜜が、きな粉を吸い上げて体にまとわりつかせる。少し置いておくと、きな粉の表面がしっとりしてくるので、2度付けしてから口へ運ぶ。

 きな粉の粉っぽさが口の中を支配するが、黒蜜の甘さときな粉の香ばしさが口に広がり、噛むと適度な弾力が歯をかるく押し返す。その抵抗を無視して噛むと、わらび餅のほのかな甘さが、黒蜜を包んでいく。

 黒蜜の方が甘いのに、わらび餅の甘さが感じられるのも不思議な感じだ。わらび餅に含まれた水分が、そうさせているのだろうか?

 口の中が幸せになる。

 黒蜜をかけていなかったわらび餅も美味しかったが、黒蜜をかけたわらび餅も、違う風味がして美味しいな。

 食べ終わり、もう少し食べたいと感じている。でも、2種類の食べ方をしたしこれ以上のアレンジは無いよな……

 と、考えていると、300ミリリットルは入らないであろう、ガラスのコップが出てきた。

 何も入っていない、口が少し広がっているタイプのコップだ。

 何が始まるのか、俺も子どもたちも興味津々である。先ほどまで騒いでいたシンラも、コップをガン見している。

 おや? ウルが何やら持ってきたな。中は見えないけど、飲み物が入っているポットだろう。後ろからブラウニーたちが、わらび餅の入ったタッパーを持って来ている。

 飲み物とわらび餅? それにわらび餅の後ろからは、ホイップクリームやアイスっぽい物も運ばれてきたな。そして、ほのかに抹茶の香りがする……

 なるほど! 抹茶にわらび餅を入れて、トッピングでクリームやアイスか!

 俺の回答は80点だった。抹茶ではなく、抹茶ラテだったのだ。

 わらび餅をブラウニーたちが入れると、ウルがポットから抹茶ラテを注いでくれた。俺のはそのままだが、子どもたちのコップには、ハチミツが入れられていた。色からして、王蜜なんだけどな……気付かなかったことにする。

 そこへ、少し甘くしたホイップクリームを蓋のように乗せ、更にアイスを上に乗せる。

 抹茶ラテとわらび餅だけで食べてみたかったが、今回は無理なようなので、わらび餅をスプーンですくい、抹茶ラテも一緒にすくい、そこへホイップクリームやアイスをすくって口へ運ぶ。

 全く違う食感だな。同じだと思っていたが、抹茶ラテの中に少し入ったせいなのか、少し柔らかく感じる。気のせいなのかもしれないが、そう感じるのだ。和の甘さとは違う洋の甘さも、わらび餅には合うようだ。とにかく美味い。

 これを考えたのは、ウルなんだってさ。たまたまわらび餅だった今日のおやつで、前からチャレンジしていたアレンジをここでだしてくれたみたいだ。

 自分で考えたことに対して、めいいっぱい褒めてあげた。ミーシャたちも褒めてほしそうだったが、君たちがしたのはお父さんのわらび餅を強奪しただけだからな……
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