ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,971 / 2,518

第1971話 やっと……

しおりを挟む
「とりあえず、お前たちは今日中に帰れるぞ。綾乃やロジーを送り帰しているし、お前たち自身にあれをやらせれば問題ないからな。それに人殺しじゃなくて魔物を殺す分、気分的には楽だろうしな」

 俺たちが帰れる手段を持っていることに驚くが、続けて何を言っているのか分からないといった様子で、首を傾げている。神から教えてもらった情報で、一定以上の強さを持つ対象を50以上殺す、という条件を教えてやる。

 こいつらも、あの世界に染まってきており、悪を一方的に裁くことには忌避感を感じていないが、自分たちが帰るためとはいえ、殺しを強制するようなこのゲーム盤の上での殺しは難しいようだな。

 こいつらと俺たちの違いは何なのかね。タイミング的に考えれば、シンジたちより綾乃の方があの世界にいる時間は短い。だけど俺と同じように、自分のためであれば殺しも行う。どこでこの違いは生まれたんだろうな。

 俺から言わせてもらえば、殺しを半強制している世界を作り出した神たちがすべて悪い。そのルールに従って殺し合っているので、俺たちの責任ではないと考えている。責任転換にも聞こえなくないが、こんな世界がどんな娯楽になるというんだかね。

 準備ができるまでは休んでもらう……なんていう甘い考えは俺たちにはなく、送り帰すのでしっかりと情報を持たせて帰らせるべきと判断して、知りえる情報を可能な限り覚えてもらった。持ち物がどうなるか分からないが、一応ノートのような物も作り書き込んでいる。

 明後日には帰れるだろうが、時間の進みが違う可能性を考慮して、そこは伝えてもらうことにした。こいつらでも時間の進みの違いを説明できると思うが、綾乃がこの話を聞けば大半を理解して妻たちに教えてくれると思う。

 あいつの事だから、時間の進み方が違うことに気付いている可能性の方が高いけどな。

 おやつの時間には、必要数を揃えることは出来たが、情報の伝え忘れがないかを確認して、夕食前にBランクのアンデッドを倒させた。カウントはちょうど50だったので、本当に誰も殺していなかったということだ。放置して死んでもカウントされない可能性もあるけどな。

「結局、シュウ殿のフラグは回収されたでござるな。行動する前に、何もなければ……みたいなことを言うのは、無しでござるよ。他にもフラグを立てかねないから、突っ込むにツッコめないでござる」

 あの時には気付かなかったが、フラグの様なセリフを言っていたのを思い出す。今回の件は、フラグを立てようが立てまいが、向こうからやってきたのだからノーカンだと思うぞ。自ら行動してフラグを回収したのなら分かるが、不慮の事故で回収したモノなんだからな!

 これ以上余計なことをしないように入り口には蓋をして、外に出ることを禁止とした。俺たちが殺されたりしなければ、数日の誤差しか生じないのだが、早く帰るためにその誤差を無くす手立てを講じた。

 何事もなく朝を迎え、バザールの報告から、今日のお昼頃には必要数が揃うとのことだ。ただ、俺たちを帰したくない神共の仕業なのか、近隣で戦闘が何件も起きたらしい。

 今まで俺たち以外の衝突を、複数感知することがなかったのに、ここにきて複数の戦闘が俺たちの拠点の近くで行われることを、不自然に感じていた。

 俺たちが元々いた世界よりは干渉しやすいゲーム盤だと思えば、この状況にもしっくりくる。シックリくるだけで、実際は的外れなんてこともあるが、的外れで名誉棄損の様な状態になっても、その相手がクソ神だから気にしないけどな。

 しかもその戦闘が、洞窟のコミュニティーを襲撃した際に若干被るのだ。少数の女性が男共に嬲られる未来しかないシチュエーションだったらしい。あの時はたまたま助けたけど、バザールの話ではまったく見知らずの北欧系の顔だったようで、助けるに値しなかったのだとか。

 これで日本人だったら、まだ介入した可能性はあるが、縁の無い外人では動くことは無いな。地球でこんなこと言えば顰蹙を買うだろうが、安全圏でのほほんとしている奴らに言われたところで、俺は何とも思わないけどな。

 むしろ、名誉棄損なんかで訴えてやるわ。

 帰る手段を持っていて、目の前で蹂躙される女性たちを助ける力があっても、助けなければいけない義務はないのだから、放置するのは当然の判断である。見返りがあれば……みたいな話になっても、同じ世界に帰れるわけではないので、それも意味がないモノだろう。

 自分たちの体で払うと言われても、俺は帰れば妻がいるし、バザールはアンデッドで性欲なんかないし、ライガは家族にいい生活をさせてあげたいと働いている青年だからな。それに帰れば、こいつにも内縁の妻の様な存在がいるって聞いたことがある。

 押しかけ女房みたいな娘らしいが、妹とも母親とも関係が良好で、外堀を完璧に埋められているので、後は許可さえ誰かが出せば結婚すると思うって、誰かが言ってたな。

 なので女体を報酬とされても、俺たちが受け取ることは無い。それに地球からきている奴らだったら、助けてすぐに殺す羽目になるんだけどね。

 元々数が少ないのに、都合よく女性のダンジョンマスターや勇者が、周辺で戦闘するなんていう偶然は起こりにくい。可能性としてあげられるのは、神たちに事情を聴いてここに送り出され、わざと周辺で戦闘をした……というところだろう。

 もう帰れるのだから、色々考察するのは止めにして、帰る準備を始めようか。

 予定している数より10体ほど多く作ったが、カウントは間違っていなかったようで、帰る際にバザールが影に回収して持ち帰ることになった。

 体感時間で2週間ちょっとぶりに、ディストピアに帰れることになった。

 チビ神に軽く文句を言って、帰ることを選択すると……意識が遠のき、視界が暗転する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

処理中です...