ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,965 / 2,518

第1965話 常識がズレていく

しおりを挟む
 ライガがジャングルの中で奇襲した内の1人は、当たり所が悪かったようで、情報源としてバザールが治療する前に死んでしまったのだとか。今回の奇襲で2人は殺しているので、情報源になる敵は2人しか残らなかった。

 しかって……

「シュウ様、苦い顔をしてどうなさったのですか?」

「殺すことに忌避感を覚えなくなったところまでは良いんだけど、俺が情報源になる人間が5人の内2人になっただろ? そのことに対して、2人しか残らなかったって考えた自分に若干嫌悪しているところだ。良くないとは思うけど、そう考えてしまっている自分がな……」

「気にする必要は無いと思うでござる。むしろ、2人も残ったというべきでござろう。これから、こやつらがされることを考えれば、死んでいた方がましだと思えるでござるから、死ねた人はラッキーだったと考える方が建設的でござる」

 死んでしまったことを悔やんでいるわけではなく、情報源が減ったことを悔やんでいるのが嫌だって言っているんだけどな。こいつらのされることを考えれば、確かに死んだほうがましだと思わせる何かはあるな。

 バザールとライガは、1人ずつ引き摺って俺から離れていく。悲鳴は聞こえるが、情報を喋っている時の声は聞こえないように工夫するそうだ。

 俺は、悲鳴を聞いて洞窟から現れるかもしれない敵の迎撃態勢に入る。バザールが入り口を監視しているので、報告を受けてから体制を整えても問題はないのだが、気分の問題もあるので警戒を始める。

 時々、森の中にこだまするような悲鳴が聞こえるが、それ以外はいたって平和だ。2人の搾り取っている情報は、逐一バザールから報告があるので、矛盾がないか考えるのも俺の役割だ。

 10分ほどで、引き摺られていった2人は、真っ白に燃え尽きたような表情をして、口の端から涎を流している。どんなことをされていていたのかも分かっているので、耐性の無い人間であればこうなっても仕方がないと思う。

 得られた情報は、

・洞窟は探索が済んでいないほど広い。
・洞窟の中では、20人ほどのコミュニティーを作って生活している。
・戦闘系は自分たち以外にも、拠点防衛のために3人残しており、その3人はこいつらより強いらしい。
・食料に関しては、現地で調達しているのだが、勇者の1人が非生物の時間を止めることができる能力を持っているらしい。そのおかげで、捕らえた獲物を腐らせることがないのだとか。
・魔法を使える人間もいるので、飲み水や生活用水などには困っていない。お風呂も毎日入れるそうだ。

 大雑把に要約すれば、この5点が重要な情報だろう。

 思ったより人が多かったのと、神授のスキルで時間停止系の能力の持ち主がいたこと、バザールやロジーみたいに人間じゃないやつが、魔法を使えるという事実が俺たちの表情を崩させる。

 話の内容から、食料を保存している勇者と、魔法が使える勇者は別だと分かる。おそらくだが、魔法の使える勇者は、神授のスキルが魔法関係のナニカなのではないかということだ。

 魔法勝負でバザールが負けるとは思わないが、勇者の称号が厄介だから困るんだよな……勇者の魔法って、ダンジョンマスターの魔法を簡単に相殺するんだよな。しかも、格下の魔法で完璧に相殺しきるので、魔法戦は肉弾戦よりリスクが高い。

「そう言うことでしたら、魔法の相手は自分の領分ですね。護衛対象を守りきるためには、遠距離攻撃をどうにかしないといけないという、シチュエーションが沢山あるので、得意分野だと思います」

 ライガが自信たっぷりに宣言する。

 弓矢があればもっと違う作戦を立てられるのだが、今は足りないものが多すぎるので、ここら辺の対応が限界なのだ。

 昼には戻らない予定だったらしい。そこで俺たちが入り込めば、警戒度が上がるか? 夜になってこいつらが戻らなければ、どっちにしろ警戒されるか。それなら、早めに攻めるべきだな。

 バザールの誘導で洞窟の前まで移動する。俺たちが移動している間に、中にいた数名が外に出てきて、ストレッチなどをして洞窟の中へ戻っていったそうだ。

 いくら広いとはいえ、長時間洞窟の中で過ごしているのなら、気が滅入っても仕方がないかもな。俺たちは、食事や模擬試合でしっかりと発散したし、バザールに関しては百年単位でゴーストタウンを守っていたから、精神的には植物並みにしぶといと思う。

 俺たちの立てた作戦は、こうだ。

 突入するときに自ら出口を塞いで、バザールが風魔法を使って洞窟の全貌を把握する。どれだけ広いか分からないので、必要な範囲が分かってくれれば問題ない。合わせて、グランドサーチで洞窟の形と敵の位置を正確に把握してもらう。

 俺たちが狙っているのは、奥に逃げる通路を塞ぐことだ。一気に駆け抜けて、逃げれなくなるように通路を塞ぐ。最後に追い詰めた所で、魔法版フラッシュバンスタングレネードを使ってもらい、一網打尽という手順だ。

 魔法使いが前に出てきたらライガが対応して、近付いてくるやつは俺が対応する形だ。

 今回は、バザールの見せ場が盛りだくさんである。あまり活躍できていなかったので、機会があれば活躍させてほしいと言われていたので、今回の作戦の中心を担ってもらうことにした。

 個人的に言えば、俺以上に活躍しているのに、これ以上俺の仕事を取らないでくれ! と言いたいところではあるが、お互いの認識がズレているので、平行線をたどって終わりである。

 ちなみに、ここに来る前に涎を垂らしていた2人は、苦しまないようにバザールが殺している。拷問で情報を引き出されるときに、十分に苦しんでいるので、一思いにやっている。

 洞窟内には罠を仕掛けていないと言っていたが、あいつらがいない間だけ仕掛けている罠があるかもしれないので、注意して中を見る。

 目に見えるような罠は無い。バザールのグランドサーチでも、罠らしきものは見当たらない。ここで一番注意するのは、罠系の神授のスキル持ちがいた場合だ。拷問した2人はそんな奴はいないと言っていたが、仲間にも能力を隠していることになるので、もしいた場合は注意が必要だ。

 入り口付近には見張りもおらず、侵入してくださいと言わんばかりだな……一番近くで、少し入り組んだ先に動く気配があるとバザールが教えてくれた。索敵にかからないので、直線距離で50メートルは離れていることになるな。

 洞窟の中に入り、バザールが入り口を塞ぐ。魔法でガッチガチに固めた後、外に配置しておいたエルダーリッチたちに、継続して強化をさせているので、勇者でもさすがにすぐに解除することは出来ないだろう。

 さあ、狩りの時間だ!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...