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第1956話 お引越し
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ウルたちを送り返した次の日。
「シュウ殿、この部屋はどうするでござるか?」
「たぶん、もう使うことは無いけど、入り口だけ閉じて封印措置でいいんじゃないかな? 今日は3人で北側に移動して、そこに簡単な拠点を作ってもらう予定だから、場所の選定をしながら進んでいくぞ。ウルたちがいないから、山の中腹でも問題ないし、良さそうなところがあったら作成してくれ」
「了解でござる。入り口を埋めたら移動するでござるよ」
バザールがエルダーリッチを使って作業をしている間に、
「ライガ、今日の移動の隊列は、俺・バザール・ライガの順で行くつもりだ。後方になるけど、移動速度を考えると、この隊列が一番いいと判断した。匂いによる索敵は、多少後ろにいても問題ないよな。何かあったら知らせてくれればいいから、よろしく頼む」
ライガと打ち合わせを済ませる。
バザールの作業は、2分もしないうちに終わった。入り口を埋めるだけなので、大した時間はかかっていない。一応掘り返されないように、壁を強化しているので2分ほどかかった形だ。
「さて、出発する前に……ギリースーツのあいつは、今どうしているか分かるか?」
「そいつなら、某たちが遭遇したところを中心に、今も生活を続けているでござる。山菜と言っていいのか、食べられる物の調達が達者で、食うに困ることは無いでござるな。某たちとは違い、培ったサバイバル術で生き残っている感じでござるな」
「うへえ、鑑定があってもまともに分からないのに、あいつはどうやって判断しているんだかね……火だってまともに使えないはずなのに、よく生きていられるもんだ」
「それなのでござるが、火を使っている形跡があったでござる。匂いは周りの木の所為か、ほとんど感じないようでござる。夜に周りに気付かれないように対策をしてから、使っているようでござるな」
「普通はそうなるか……遠くから見ても分かるような形で、火を使っていた奴らがおかしいんだよな。それを基準に考えていたから、火の光が見えないように工夫してから使っている可能性を失念していたな」
普通に考えれば当たり前の事に、今思い至った。3人で苦笑をするしかなかった。
俺とライガは、軽く体をほぐしてから出発する。
移動速度は、バザールに合わせている。バザールは分類すると後衛職になるので、俺たちの中では一番移動が遅い。それでもSランクの魔物のスペックで、付いてくることには問題なさそうだ。マルチタスクでサイレントアサシンを操り、先行させていることを考えると、むしろこの速度で移動できる方がおかしいかもな。
先行させているとはいっても、敵を探しているわけではなく、拠点として使いやすそうな場所を探してもらっている形だ。俺とライガが敵を見つける役割なので、バザールには拠点関係を中心にしてもらう予定だ。
後10分ほどで森を抜ける場所へ差し掛かったところ、ライガから声がかかる。人の匂いが複数するらしい。近くにいてまじりあっているのか、遠くから来たのがまじりあっているのか分からないが、4人ほどの匂いが確認できるらしい。
「……そいつらの方に向かってみよう。方向を指示してくれ」
ライガに咆哮を教えてもらい、移動を再開する。
ジャングルとの境界線付近で、戦闘音が聞こえてきた。
「戦っている感じだな。結構響いてくるもんなんだな。バザール、一時的に拠点探しの作業は中断。戦闘している奴らに奇襲を仕掛けて、数を稼ぐぞ」
戦闘している奴らを視認できる位置へ移動するが、ライガの言う4人の姿は確認できなかった。視認できるのは、3人だけ。しかもこいつらは、互いに敵として認識しているのか、膠着状態に近いようだ。一方を倒そうとすると、余った1人がそのすきを狙うので、全力で攻め切れていない感じだ。
「ライガ、4人目の姿が見えないが、今も匂いはしているか?」
「しています。死んでいるということは無いと思います。この近くに隠れているのではないかと思います」
「俺たちと同じで、戦闘している隙をついて奇襲する予定か? ライガは、隠れているやつを探してくれ。俺とバザールは、向こうで戦っている3人の内2人を奇襲して殺して、残り1人は協力して倒そう」
例のごとく俺たちは、枝の上を移動しているので、上からの奇襲だ。これで何回目になるのだろうか? そんなことを考えながら、バザールとタイミングを合わせる。
戦闘をしているので、周りへの警戒が若干薄くなっているのは好都合だ。バザールと狙う相手を検討していると、バザールから、
「某が3人の内離れている1人を殺すでござるから、こちらに注意がそれた所をシュウ殿が奇襲するでござる。骨の姿で現れれば、さすがに動揺すると思うでござるから、そこを狙ってほしいでござる」
そう言うことか、バザールが危険だと思ったら、すぐに動くことを伝えて、初手を任せることにする。
木の上にいるとはいえ、不意に見つからないように視認しにくい位置取りをしながら、バザールが行動を起こすのを待っている。
バザールが骨の姿に戻り、戦闘している3人の内離れている1人に向かって、落下を開始した。
異変に気付いたのか上を見上げた狙われた奴は、バザールの姿に気付いて硬直する。そいつのステータスは見れないので、地球からの人間なのだと思う。地球には動く骸骨の話はあっても、実際に動いている骸骨を見ることは無い。
初めて見る動く骸骨に驚いてしまったのだろう。何もできないままバザールに電魔法をくらい、体を麻痺させた。倒れた所へとどめの一撃とばかりに、心臓の位置に手を突き刺す。
戦っていた2人も意表を突かれたのか、鍔座り合いをしながら硬直する器用なことをしている。
戦っている2人の内1人は、ステータスが見れるので俺と同じ立場の人間だろう。だからといって何も思わない。俺たちに見つかったことを後悔するんだな。
刀を使った一太刀で、2人の首を刈り取る。
様子をうかがっていたであろうもう1人は、現状に慌てたのか今まで感じ取れていなかった気配が少し露わになっていた。
逃げようと移動を開始したところで、ライガの攻撃を頬にくらい、首の骨が折れて死んでしまった。
ライガ曰く、強さはさほどでもなかったが、隠れる能力が異常に高かったようだ。ギリースーツの奴みたいに身に着けた能力というよりは、与えられた能力を十全に発揮したような印象だとさ。隠密系の神授のスキル持ちだったのかね?
ここに留まる必要もないので、バザールの案内で拠点の候補地に移動をする。
「シュウ殿、この部屋はどうするでござるか?」
「たぶん、もう使うことは無いけど、入り口だけ閉じて封印措置でいいんじゃないかな? 今日は3人で北側に移動して、そこに簡単な拠点を作ってもらう予定だから、場所の選定をしながら進んでいくぞ。ウルたちがいないから、山の中腹でも問題ないし、良さそうなところがあったら作成してくれ」
「了解でござる。入り口を埋めたら移動するでござるよ」
バザールがエルダーリッチを使って作業をしている間に、
「ライガ、今日の移動の隊列は、俺・バザール・ライガの順で行くつもりだ。後方になるけど、移動速度を考えると、この隊列が一番いいと判断した。匂いによる索敵は、多少後ろにいても問題ないよな。何かあったら知らせてくれればいいから、よろしく頼む」
ライガと打ち合わせを済ませる。
バザールの作業は、2分もしないうちに終わった。入り口を埋めるだけなので、大した時間はかかっていない。一応掘り返されないように、壁を強化しているので2分ほどかかった形だ。
「さて、出発する前に……ギリースーツのあいつは、今どうしているか分かるか?」
「そいつなら、某たちが遭遇したところを中心に、今も生活を続けているでござる。山菜と言っていいのか、食べられる物の調達が達者で、食うに困ることは無いでござるな。某たちとは違い、培ったサバイバル術で生き残っている感じでござるな」
「うへえ、鑑定があってもまともに分からないのに、あいつはどうやって判断しているんだかね……火だってまともに使えないはずなのに、よく生きていられるもんだ」
「それなのでござるが、火を使っている形跡があったでござる。匂いは周りの木の所為か、ほとんど感じないようでござる。夜に周りに気付かれないように対策をしてから、使っているようでござるな」
「普通はそうなるか……遠くから見ても分かるような形で、火を使っていた奴らがおかしいんだよな。それを基準に考えていたから、火の光が見えないように工夫してから使っている可能性を失念していたな」
普通に考えれば当たり前の事に、今思い至った。3人で苦笑をするしかなかった。
俺とライガは、軽く体をほぐしてから出発する。
移動速度は、バザールに合わせている。バザールは分類すると後衛職になるので、俺たちの中では一番移動が遅い。それでもSランクの魔物のスペックで、付いてくることには問題なさそうだ。マルチタスクでサイレントアサシンを操り、先行させていることを考えると、むしろこの速度で移動できる方がおかしいかもな。
先行させているとはいっても、敵を探しているわけではなく、拠点として使いやすそうな場所を探してもらっている形だ。俺とライガが敵を見つける役割なので、バザールには拠点関係を中心にしてもらう予定だ。
後10分ほどで森を抜ける場所へ差し掛かったところ、ライガから声がかかる。人の匂いが複数するらしい。近くにいてまじりあっているのか、遠くから来たのがまじりあっているのか分からないが、4人ほどの匂いが確認できるらしい。
「……そいつらの方に向かってみよう。方向を指示してくれ」
ライガに咆哮を教えてもらい、移動を再開する。
ジャングルとの境界線付近で、戦闘音が聞こえてきた。
「戦っている感じだな。結構響いてくるもんなんだな。バザール、一時的に拠点探しの作業は中断。戦闘している奴らに奇襲を仕掛けて、数を稼ぐぞ」
戦闘している奴らを視認できる位置へ移動するが、ライガの言う4人の姿は確認できなかった。視認できるのは、3人だけ。しかもこいつらは、互いに敵として認識しているのか、膠着状態に近いようだ。一方を倒そうとすると、余った1人がそのすきを狙うので、全力で攻め切れていない感じだ。
「ライガ、4人目の姿が見えないが、今も匂いはしているか?」
「しています。死んでいるということは無いと思います。この近くに隠れているのではないかと思います」
「俺たちと同じで、戦闘している隙をついて奇襲する予定か? ライガは、隠れているやつを探してくれ。俺とバザールは、向こうで戦っている3人の内2人を奇襲して殺して、残り1人は協力して倒そう」
例のごとく俺たちは、枝の上を移動しているので、上からの奇襲だ。これで何回目になるのだろうか? そんなことを考えながら、バザールとタイミングを合わせる。
戦闘をしているので、周りへの警戒が若干薄くなっているのは好都合だ。バザールと狙う相手を検討していると、バザールから、
「某が3人の内離れている1人を殺すでござるから、こちらに注意がそれた所をシュウ殿が奇襲するでござる。骨の姿で現れれば、さすがに動揺すると思うでござるから、そこを狙ってほしいでござる」
そう言うことか、バザールが危険だと思ったら、すぐに動くことを伝えて、初手を任せることにする。
木の上にいるとはいえ、不意に見つからないように視認しにくい位置取りをしながら、バザールが行動を起こすのを待っている。
バザールが骨の姿に戻り、戦闘している3人の内離れている1人に向かって、落下を開始した。
異変に気付いたのか上を見上げた狙われた奴は、バザールの姿に気付いて硬直する。そいつのステータスは見れないので、地球からの人間なのだと思う。地球には動く骸骨の話はあっても、実際に動いている骸骨を見ることは無い。
初めて見る動く骸骨に驚いてしまったのだろう。何もできないままバザールに電魔法をくらい、体を麻痺させた。倒れた所へとどめの一撃とばかりに、心臓の位置に手を突き刺す。
戦っていた2人も意表を突かれたのか、鍔座り合いをしながら硬直する器用なことをしている。
戦っている2人の内1人は、ステータスが見れるので俺と同じ立場の人間だろう。だからといって何も思わない。俺たちに見つかったことを後悔するんだな。
刀を使った一太刀で、2人の首を刈り取る。
様子をうかがっていたであろうもう1人は、現状に慌てたのか今まで感じ取れていなかった気配が少し露わになっていた。
逃げようと移動を開始したところで、ライガの攻撃を頬にくらい、首の骨が折れて死んでしまった。
ライガ曰く、強さはさほどでもなかったが、隠れる能力が異常に高かったようだ。ギリースーツの奴みたいに身に着けた能力というよりは、与えられた能力を十全に発揮したような印象だとさ。隠密系の神授のスキル持ちだったのかね?
ここに留まる必要もないので、バザールの案内で拠点の候補地に移動をする。
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