ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,939 / 2,518

第1939話 増えんな

しおりを挟む
 加速した意識の中で俺は、今回の神共の遊戯で何がしたいのかが、まったくわからない。何で忍者?

 危機を回避して安心している自分がいるのか、少しずれた思考をしているのが分かった。意識を忍者の格好をしている人間に向ける。不意打ちじゃなければ、何とかなる!

 俺は忍者の格好をした奴に集中する。

 右手には……短刀だろうか? 何かを持っている。俺は体勢を低くして、四足歩行獣のように手を地面へつけた。武器を持っていたらこんな格好は出来ないが、今は回避をすればいいからこの体勢で問題ない。

 短く一気に息を吸い、ユックリと吐く。忍者の動きがない。こいつは何がしたいんだ? 待て待て、余計なことは考えるな。敵をよく見ろ、余計な思考はするな。

 視界が広くなったわけではないのだが、加速した意識の中視界の外から何かが近付いてくるのが見えたのだ。普通ならありえないのだが、その時にそんなことを理解することは無かった。

 位置にすると、俺と忍者姿が対峙している状態で、右後方から何かが飛んできているのが見えた。進行方向だったはずなのに、発見することができていなかったのだ。手で地面を砕く勢いで突き飛ばした。

 両手をついていない状態だったら、結構ギリギリの回避になっていた可能性が高かった。

 後ろに飛ぶと同時に、昨日作った麻痺毒の投げナイフを2人に向かって投擲する。

 気配だけで投げた右後方への投げナイフの先を見ると、そこにも対峙していた奴と同じ姿をした忍者がいたのだ。思わず分身かと疑ったが、魔物のドッペルゲンガーでもない限り、それは無いだろうという思考に辿り着く。

 となると、こいつらはここにきて合流したか、もともと同じ所へ移動してきたかのどちらかだろう。俺とライガたちみたいなものなのだろう。

 2人だけだと判断するには早いので、他にも複数人が潜んでいると仮定して動こう。

 そんなことを考えていると、加速していた思考が徐々に戻ってきている気がする。さっきくらいの攻撃であれば、加速していなくても回避は可能だ。不意打ちに注意が必要だな。

 挟まれた状態で戦闘するのは、良くないので2人が視界に入る位置取りをする。数の有利のある忍者たちは、俺を挟むように動く。二対一ならそう動くよな。注意を散らし、隙をつきやすくなる配置だ。3人目以降がいるとすれば、左右か頭上だよな。

 完全に挟まれないように距離を取りつつ移動する。

 投げナイフを取り出し両手に持って、木を一気に登っていく。勢いをつけた状態で木を走って登り、15メートルほど登ったところで勢いがなくなってしまったので、ナイフを刺し腕の力を使い近くの枝へ乗り移る。

 おそらく殺すだけなら簡単なのだが、地球からきていると思われるこいつらからは、こっちにいつ来たのかを聞いておきたいんだよな。

 バザールに小声で、もし俺が無力化が難しそうだったら、サイレントアサシンに足首を切断するようにお願いし、合図を決めた。

「さて、いきなり襲ってきた忍者姿のあなたたちは、何者かな?」

 答えを期待しての問いではなかった。

「お告げを聞いた巫女のため、この地に住む悪党どもを始末する者だ」

 まさか返ってくるとは思わず、少し呆けてしまう。

 こいつは何て言った? 巫女がお告げを聞いたって言ったよな? 地球でお告げを聞ける人間がいて、そいつの命令でこの地に派遣されたってことか? 地球からの人間は、ある程度自分の意思で来れるのか? 服生体がこの地に来るだけ……というのであれば、志願する人間は多いか?

 また、一気に分からないことが増えやがった!

「お告げね……そんな超常現象を信じる、オカルト集団から派遣された戦闘員ってところか? 何で忍者姿なのかは理解に苦しむが、あれは大名や領主に使える裏の人間だろ? 巫女とか宗教的なものとの繋がりは無かったと思うが?」

「私たちは忍者ではない。忍術使いだ」

「違いが分からんな。自分たちの身分を話すとは思わなかった。忍者ならそんなことはしないよな? いや、人じゃというだけならありなのかね? でも、巫女のためとか言って、自分たちの所属団体を特定されるような情報は、普通言わないか……」

「忍者は、お主が言ったように地位の高い人間の裏の仕事をやっているが、忍術使いは技術を引き継ぎ里のために活動している者の総称だ。忍者は、里から地位の高い者たちへ派遣されているのだ」

 俺の知っている忍者や忍術使いとは違う気がするが、忍者の里があってそこで修行している者が忍術使いで、里から派遣されている者が忍者ってことか?

「お前らの行動は、里のためになると……そう言うことなんだろう。だけど、巫女にお告げか、どっちにしろ超常現象を信じる、オカルト集団には変わりないってことか。忍者でも忍術使いでもどっちでもいいか、そのお告げが俺の知っている神たちからの物ならば、俺たちをどうにか殺そうと画策しているってところか」

 1つの仮説が浮かんだ。ターゲットが俺だけなのかは分からないが、地球から送り込む人材で殺せるかの実験だと思う。明らかに強化をされていて、あいつの話ではこの地にいる者がターゲットになっているのだから、実験的な要素があるんじゃないか?

 実験だったとして、どうやったら帰れるのか不明過ぎて困る。

 ……待てよ、終了条件が個人で何人殺す、みたいな内容だったらウルたちが困ったことになる。

「バザール、ライガに殺すのは止めるように伝えてくれ。遭遇したら瀕死にして、シャドウアサシンで拠点の近くまで運んでくれ。理由は終わってから話す」

 もし特定人数を殺すことが帰ることのトリガーとなるなら、ロジー・ウル・綾乃を先に帰らせたい。実験でウルに殺しをさせるくらいなら、綾乃にお願いしたいところだな。もし違っても、綾乃なら多分問題ないからな。

 っと、3人目発見。上手く隠れていたが、俺の移動が早かったせいか、隠れきれなかったのだろう。木の天辺近くを、見つからないように移動していたのを発見した。

 枝を飛び移りながら、上に移動していく。慌てた3人目が逃げようとジャンプしたところで、ナイフを投げた。回避できないタイミングを狙い投げたナイフは、的確に3人目を捉え肩付近に刺さる。

 着地には成功したが、麻痺毒で上手く動かなくなった体が、枝から落ちた。

 仲間を助けるかと思ったが、無視してこちらを攻撃しようとしたため、こちらが慌ててしまった。1人くらい死んでも問題ないと思うが、出来るだけ確保したいというのが俺の気持ちだ。

 助けるといっても、そのまま落ちると首の骨が折れそうだったので、地上に落ちる前に横から攻撃をくわえ、地面に転がるように吹き飛ばした。受け身も取れず吹き飛ばされた3人目は、重傷を負っていそうだな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...