ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,924 / 2,518

第1924話 最悪の事態?

しおりを挟む
 女の方には、男の服で作った猿轡ようなものを嚙ませている。なんとなく、この女の方がヤバいと感じたからだ。

「お前、どこから来た?」

「…………」

「答えたくないと。じゃぁいいわ、喋らないなら生かしておく価値なんてないからな。せいぜい苦しんで死ぬように、ナイフを刺しといてやるよ」

 そう言って、先ほど抜いたナイフを取り出して、体に突き刺そうとすると、

「ま、待て! 捕虜に対する扱い方がおかしい! 人道的に扱うことを希望する」

「捕虜? 誰が? 俺たちは戦争をしているわけじゃないぞ? 野盗2人が殺し合ってたから、漁夫の利を得るために介入しただけだしな。奴隷になればとか、馬車馬のようにとか言ってたんだから、ただの喧嘩ではなく生存をかけた野盗同士の殺し合いだったんだろうな。だから、第三者が介入しても問題ない」

「野盗だと!? 国軍である私の、どこが野盗なんだ!」

「国軍ね~、アジア系の顔で国軍か……日本と中国で無いのは確かだな。そして、女性を奴隷と扱うような軍人は……あの国かね? そもそも、あの国の人間は国軍って言うのか? 分からん。でもさ、嘘は良くないと思うよ。お前、今は軍人じゃないだろ?」

 俺には、こいつが軍人で無い事には確信があった。おそらくだが、女性を性奴隷として扱おうとしたのだろう。こいつのステータスを見れば、一目瞭然だからな。国のせいなのか、こいつのいた世界のせいなのかは知らないけどな。

 俺の鑑定で、こいつのステータスが見れるのだ。レベルは予想通り200ちょい、スキルは色々がLv10だった。あの動きでLv10はおかしい。スキルだけ覚えて、強引にLvをあげた典型的なタイプだと思う。

 そして、こいつには普通に罰賞がついている。強姦魔に殺人鬼、両方とも上位の罰賞である。

 これらを踏まえて、こいつはダンジョンマスターだろうと言うことだ。

 正直、こいつからはこれだけで十分なんだけどな。問題は、女性の方なのだ。こっちはいくら鑑定しても、文字化けして情報が読み取れないのだ。なんとなくだが、俺のいた世界のシステムと別のシステムから来たんじゃないかという考えだ。

 木が文字化けしているということは、俺やこの男がこの世界にとってイレギュラーな可能性も高い。でも、夢で何でこんな風になるのかは、本当に意味が分からない。俺の夢なら、全部調べられるようにしておけよ!

「ふざけるな! 話を逸らして、自分のしていることを誤魔化すな!」

「別にふざけているつもりも、話を逸らしているつもりもないよ。お前、ダンジョンマスターだろ? うん、その反応で良く分かった。お前はもういいや」

 俺と同じ状況だと思われるこいつは、大した情報を持っていないのでリスクを下げる意味でも、サクッと殺しておきましょう。頸椎をへし折った。

『ピロリン 初めての殺人』

 ん? 罰賞が付いたのか? 自分のステータスを鑑定してみるが、罰賞が付いた様子はない。どういうことだ? わからん! 女の方を尋問しよう。

「お前はどこの人間だ?」

 猿轡を外して質問すると、いきなり舌を出して嚙み切ろうとした。慌てて指を指し込み、自殺は何とか防いだ。もしスパイみたいな人だったら、奥歯に毒物を隠したりするんかね?

 女は、俺の指を噛み切ろうとするが、やはりステータスは有効なようで、この女の噛みつきでは、皮膚に痕を少しつけるのがやっとのようだ。

 顔面を左手で地面に押し付ける。噛まれている右手の中指で強引に口を開く。奥歯を見てみるが、普通の歯に見える。更に強引に開いて、親指と人差し指中に突っ込み慎重に揺すってみる。そうすると、下の右奥歯が抜けた。左は頑張っても抜けそうになかった。

 ふむ、これが毒だったとして、舌を噛んで自殺する前に、こっちの毒を使わなかったのだろう? 分からんことは気にしても無駄か。魔法が使えれば聞き出すのは簡単だったのだが、魔法は使えないからな……

「もう一度聞く。お前はどこの人間だ?」

「…………」

 答える気はないようだ。しょうがない。ここで拷問をしたところで、吐かせられるとも限らんし、油断すればすぐに舌を噛み切ろうとするから、時間がもったいない……じゃぁ、こいつが死んでも問題ないよな?

 魔法は使えないけど、スキルは有効なのだ。じゃぁ、威圧に殺気を乗せて、心を殺せたりしないかね? 実験してみよう。

 そうすると、白目をむいて失禁して気絶してしまった。叩いたりして、何とか気を取り戻させたが、ショックが強かったのか話が通じなくなってしまった。困った……20分ほど頑張って、やっと聞き出せたのが、北欧のエージェントで、神に導かれてこの地に来た、という内容だった。

 その予想はしてなかった。現実なのかそうでないのかは分からないが、神が関わっている遊戯盤の上ということだ。そして、その遊戯盤の上に、地球からも参戦している人間がいるってことだな。

 一番の問題が、ダンジョンマスターが2人はこの世界に呼ばれているということは、それ以上呼ばれている可能性もあると言うことだ。スキルとして、しっかり持っている俺やバザールはまだいい、何かしらの理由で手に入れた、ウルとロジーも来ている可能性があると言うことが問題だ。

 バザールは、問題ない。あいつは、ポンコツのようだけど、強いからな。スキルだけでも十分に強い。ロジーは、飛んで逃げて木の上で休んでれば問題ない。でも、ウルだけはそうじゃない。とにかく急いで探さねば……今度ダンジョンマスターを見かけたら、国の名前だけ聞いておくか。

 女に止めを刺してから、全力で移動を開始する。ウルがいなければいないでかまわないのだ。でも、探さないままいることは出来ない。意識を深く沈めて、集中する。周りの音が聞こえなくなる。俺の感覚に3人の気配が引っかかる。一番遠いのが、1キロメートルいかない位か?

 森を駆け抜け、1人目を視界に入れる。こいつは文字化け、なら手加減無しで殺す。すれ違いざまに、女が使っていたナイフで首を一閃。次の気配へ。

 女の装備は便利だったので、回収しておいたのだ。

 2人目は、ダンジョンマスターなのか、ステータスが読み取れる……クソ! こいつ、ダンジョンマスターじゃねえ。勇者の称号を持ってやがる! そうなると、綾乃も来ている可能性があるのか? 

 正面から襲うが、すぐ手前で特殊なステップで後ろに回り込み、ナイフを喉に突き付けて組み伏せる。

「お前が知っている大きな国の名前は?」

 地球の名前を出してきたが、勇者の称号を持っているのは分かっていると言うと、諦めたように俺の知っている三大国の名前を言った。少なくとも、同じ世界からも何人か来ているのは確定。俺たちの世界だけなのか、他の世界も混ざっているのか……

 止めを刺してから、3人目へ移動する。でも、こいつ気配が小さいんだよな……人間なのか? この世界の生物か?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...