ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1920話 猫の日?

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 家に帰ってきて玄関を入ると、奇妙な光景を目にすることになる。

 うちの玄関は、広い。そこに毛の少し長めの絨毯を敷いてから、猫たちと戯れている子どもたちを発見したのだ。クロやギンは、背もたれになるように伏せており、他の従魔たちも邪魔にならないように近くで座ったり伏せたりしている。

 何が起こっているのか分からないため、しばらく硬直してしまった。

「あっ、お父さん! おかえりなさい。今日は猫ちゃんたちの日で、みんなでお手入れする日なんです」

 困っていた俺に声をかけてくれたのは、ウルだ。俺の疑問にも一緒に答えてくれた。でもね、猫ちゃんたちの日ってなんぞ? 初めて聞く日なんだけど、ブラッシングとかする日なのか? いつもしているのに何で?

 ミーシャたちからも手招きされたので、みんなの中心にどっしりと座る。

 そこでみんなが何をしているのかを見させてもらった。魔獣化した飼い猫たちを、伸ばした脚の上で仰向けに横にならせてから、肉球を揉み始めた。これは、ミーシャたちがしたいからしているだけなのでは? と思ったら、マッサージをした後に濡れた手拭いで少し肉球を拭いている。

 どこから取り出したのか、何かのクリームの入った缶を取り出して、親指に少量とって親指同士を擦り合わせた。何をするのかと思えば、クリームをつけた親指で肉球をまたマッサージし始めたのだ。

 さすがに状況が分からなくなってきたので、娘たちに何をしているのか聞いてみたら、

「「「肉球マッサージ!」」」

 それは知ってる。何でそんなことをしているのかを、教えてほしいんだよ……

「みんな、それじゃあ、お父さんは何も分からないでしょ。えっと、月に1回くらいだけど、こうやってみんなの肉球のお手入れをしているんです。爪は自分たちでとげるけど、肉球はザラザラした舌でしかお手入れできないので、代わりにお手入れをする日が今日なんです」

 なるほど、お手入れのための肉球マッサージか。あの缶のクリームは、猫たち専用のハンドクリームならぬ肉球クリームってことか。

 手足の肉球マッサージが終わると、下の子たちの前まで歩いていき伏せをして、ブラッシングをしてもらう体勢になった……俺の事をからかう猫たちが、何故こんなにも従順なのか! いつも悪戯をされる俺は、声を大にして文句を言っても、問題ないのではないだろうか?

 おぉ、背中やサイドのブラッシングが終わったら、今度は仰向けに寝て、お腹のブラッシングをするように仕向けているな。プラムやシオンはともかく、シンラが真剣にブラッシングしている姿は、少し意外だった。

 姉妹が両サイドにくっ付いているが、死んだ目をせずに一生懸命ブラッシングしているのに、少し驚いたのだ。こいつは元々猫は好きなので、ブラッシングしている姿をよく見るが、プラムとシオンがくっ付いているのに元気なのは、珍しい気がしてな。

 様子を見ていると、背中から何やら圧力を感じる……

 振り向くとそこには、テトたち3匹の監視役の猫がいた。ん? お前たちは、娘たちのマッサージじゃなくて、俺のマッサージでいいのか?

 そんな風に確認すると、問題なし! というか、娘たちにマッサージをしてもらうと、従魔たちの序列的に拙いことになるので、俺にお願いします……と、ジェスチャーで答えてくれた。

 それってさ、従魔たちが考える俺のヒエラルキーが、娘たちの下ってことじゃねえか? それは俺の従魔として、どういうことなのかはっきりさせないといけないな。今度、従魔たちを呼びだして、白黒つけてやろうじゃないか!

 求められたので、仕方がなく。そう、仕方がないからマッサージをしてやろう。まずはテトからだ。

 今日のこいつのサイズは、そんなに大きくないな。一般的な猫を一回り大きくした感じかな? 膝の上に乗せて、ウルたちと同じように、肉球をモニモニとマッサージする。帰ってくる前にも触ってたけど、気持ちいな。濡れタオルで軽く拭いてから、クリームをつけて更にマッサージ。

 ん~、このクリームに、マタタビの様な成分でも入っているのかね? 若干トリップ気味のテトのマッサージを終え解放する。

 次に来たのは、ライだ。テトみたいに、両手を同時にマッサージをしようと思ったのだが、さすがに大きいので片方ずつとなった。大きくなれば硬くなるのに、本当に柔らかいままの大きい肉球は凄いな。おや? ちょっと肉球の間が汚れてるな、キレイにしてやるか。

 近くで待機していたブラウニーに、吸水性のいいタオルを準備するようにお願いする。戻ってくるまでは、ぬれタオルで少しキレイにして……うむ、拭くだけだとこんなもんかな。

 すぐにタオルをたくさん持って来てくれた。ライに魔法を使うと言って、マイクロバブルシャワーを発動する。水と風の合体魔法で、マイクロバブルを水の中に発生させるという、攻撃性は皆無の魔法だ。

 水量を調節して、汚れが目立つ所へ噴射して留める。次第に汚れが浮いてきたので、汚れた水をバケツに捨てて、水をきれいに拭き取る。うむ、完璧だな。風と火の合体魔法で、温風を出して肉球の隙間を乾かしていく。

 よし! 次は、クリームをつけてマッサージだ! やりすぎないように、だけど丁寧に肉球マッサージをする。4本すべて終わると、自分の肉球を見たライは、満足そうな表情をしている。お気に召したようで、何よりです。

 最後に、ライより体の大きいランだ。こいつも、肉球の間の毛が少し汚れている。少し毛が長い気もするので、カットするか聞いてみると、よろしく! と手を突き出された。オーケー、キレイにしたら適度な長さにカットしような。

 ライのように洗い乾かした後に、少し櫛を入れる。思ったより長いな。少し丸まって、肉球の隙間に入っていたのかもな。えっと、伸ばした状態で肉球の半分くらいまでは、切ってほしいのか? そんなに切って大丈夫かと思ったが、それでいいらしい。

 うっし、全部終わりっと!

 結構集中してしまったな。娘たちは……フブキの肉球を4人でマッサージしていた。ん? お前って、かなり後発組なのに、4人にマッサージをしてもらっても平気なのか?

 そんなことを考えていたら、ライが俺の肩に肉球を置き、玄関の隅を手で指した。

 そこには、メグちゃんとシリウス君がのんびりとくつろいでいた。お前たちもいたんだな。で、この2匹が何か関係があるのか?

 ジェスチャーで色々説明してくれているのだが、さすがに分からん。そう思っていたら、ダマが近くを通りかかり、自分も肉球マッサージをしてくれるなら、通訳すると言ってきたので、お願いする。

 マッサージをしながら聞いた内容は、どうやら、従魔の中で一番ヒエラルキーの高いのは、ニコとハクでその次にメグちゃんが来るらしい。順番変わってないよな?

 で、そのメグちゃんとフブキは何故か仲がいいようで、引っ張られるように上位に位置するらしい。立場的には、クロやギンたちよりは下になるのだが、文句を言うには戸惑うくらいには高いそうだ。

 なるほどね。でもな、おまえたち。今度、色々と白黒つけさせてもらうからな!
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